謝りたい気持ちでいっぱいなんですが?
朝から鍋パーティーを楽しみながら皆がスカーの存在に驚く中、私はニコニコしながら箸を進めていた。
スカーは私が主だと認めてからは素直であり、言葉が難しくても尻尾を見れば解ることに気付いた。今も鍋を食べながら尻尾を振っている。
ふっ可愛い奴め。デンキチもバクバクとビッグボアの肉を食べまくりだ。頑張ってくれたのだから当然ね。
私は2匹ではなく、2人と呼ぶことにした。私にとって2人は人間と変わらない。ペットではなく人と変わらぬ友なのだ。
「さて、鍋パーティーはここまでよ。少し気になる事があるの付いてきて」
立ち上がり図書館を目指す私はじい様にお裾分けしたいと考え、鍋をママに頼み3人分、御弁当として包んで貰った。
「じい様。いる?」
図書館の扉を開き中に入るとじい様はいつもの仏頂面を此方にむけ「お前立ちか?」と一言口にした。
「これ、ビッグボアの猪鍋。良かったら食べて」
じい様に鍋を渡して、本題を切り出した。
「実は森に3頭もビッグボアが現れたのしかも、村の直ぐ近くによ! じい様、どう思う?」
じい様いわく、深い森で異変が起きたのではないかと口にした。
深い森って……あれよね? モンスターの宝庫みたいな場所よね、調べに行くにしても今のままだと無理ね。
「ありがとう、じい様。それと魔法学の本を何冊か貸して欲しいの」
「魔法学の本を? 召喚士が魔法を覚えるなんて無理だろ、本当に読むだけになるぞ?」
じい様は優しいなぁ。世界の常識、それは召喚士はその際に大概の才能を召喚に注ぎ込むとされ、魔法と剣は必要なくなると言う物だ。
実際に居なかった訳ではないが使い魔と魔法を手にしてもどちらも曖昧になり、どちらの才も華開かずに挫折した例が在るのは私も知っている。
しかし、私は自分が最初から召喚の才が有ったかはわかってないんだよね?
なんせ、じい様から借りた本を読んで覚えた職業だし、まぁ魔法は私のいた世界には無かったから駄目でも是非とも試したいんだよね。
「ほれ、此れは儂の若い頃に使ってた物だ。今は載ってない魔法も載っとるが、読んでみろ。鍋の礼にくれてやる」
「じい様。良いとこあるね。ありがとう!」
じい様が私を入り口の外まで送ってくれた。その際に外で待つデンキチとスカーを見て、じい様は目を大きく開いて驚いていた。
「じい様。この子はスカーよ。それじゃあ、また来るね。本ありがとう」
挨拶を終えた3人は取り合えず森に向かった。
私はデンキチの肩に乗りながら読書タイム。じい様から貰った本はボロボロだけど役に立ちそうだし、正直うれしい!
『主は本当に本が好きだな?』
『うんうん。カミルは本が大好き。それに読むと強くなる』
私はデンキチの言う通り、どんな本からも職業を取得出来る事に気づき始めていた。
何でかしら? 私が本好きじゃなかったらって考えると他の取得方もある筈よね? 実際に剣士はタウリを見て覚えた訳だし……色々と悩むんだよなぁ。
『はぁい。お久しぶりの女神降臨』
私の頭に声がしたと思うと次の瞬間、女神アラナラムル。通称アララが目の前に降臨した。
「はぁい。お元気でかしら? 悩めるカミルの為に女神アラナラムルが助けにきてあげましたよ」
…………アララの奴、絶対に鍋弁当を食べに来たわね。手に掛けたカゴから卵とそれ用の器が丸見えなんだけど?
「アララ……私の鍋食べる?」
「えっ! そんな……悪いですから……」
口と行動が伴わないアララが可愛いなぁ~癒されるわ。 よく見たらアララも天然ドジっ子キャラなんだよな?
「最後よアララ? 鍋食べる?」
「はい!」
「アララ? おネギ食べれる?」
「はい! 大好物です」
「お肉はいっぱいでいい?」
「はい! ありがとうございます。カミル」
ここだ! 私の悪戯な乙女心がそう叫んだ。
「アララ、使い魔になる?」
「はい! ……えっ! えぇぇぇぇぇッ!」
私の頭に他の二人の時と同じように『名前をつけよ』と言うまさかのアナウンス…………うわぁ~女神も使い魔扱いになるんだ。
私はアララを見て一言。
「アララ、冗談だからね?」
「名前を付けちゃダメェェェ」
私に勢いよく走ってきたアララがそう叫んだ瞬間、頭にアナウンス。
『アララが使い魔になりました』
アララがその場に泣き崩れた。
「酷いです~私は女神なのに神様なのに~何で使い魔になんですか!」
私は女神を使い魔にしちゃいました。
・『全ての職を極めし者『神を従わせし者』を取得しました』