夜を駆け抜ける者達です3
バランスを崩した要塞アザラシが急降下しながら海面に落下する。
敵の船が次々に集まるのを落下しながら確認した私はペンネ達に先に行くと合図をすると要塞から外への飛び出し、向かってくる敵船へと急降下を開始したわ。
体を鋼よりも硬く、まるでダイヤのような硬度にまで変化させた私はミサイルよりも危ない存在ね。
落下の速度が加わり、敵船に到達した瞬間、船が二つに割れて船体が空に向けて真っ直ぐに直立し沈んでいったわ。
海水の中でデンキチを呼び出すと、そのまま次の船まで海を進む。
船体の下に巨大な穴を作り、更に水魔法で海水の通り道を作り上げる。
通常よりも早い速度で流れ込んでいく海水を外に出すのは不可能な筈よ。
其所から敵船団の塊を見つけた私はデンキチに他の船を任せて単身、船団へと向かっていく。
敵船によじ登り、様子を窺うと慌ただしく動き回る“毛むくじゃら”の大男達が見えたわ。
立派すぎる顎髭に角の付いたヘルメットのような兜を身に付けるその姿は北欧のバイキングの様に見えるわ。
武装は斧やハンマーと言った感じで明らかに力押しタイプに見えるわね?
状況を把握した私は透かさず船の上に姿を現すと一端、忠告をする。
「アンタ達! 今すぐにレナクルから撤退して帰るなら見逃してあげるわ! そうしないと後悔するわよ」
しかし、大男達は私の姿を見て首を傾げると大きな口を開き笑っていたの。
「ガハハハッ! 我々に後悔させる力があるようには見えんがな?」
「小さい、実に小さい! 我らバイキングの半分もない。ダハハハ」
私を罵り、高笑いする姿に手加減処か、骨も残さないでやろうかと考えてしまったわ。
そんな時よ、またマルルが私に念話をしてきたの。
『やあ、カミル。元気しとるか? 実は蜂蜜が切れてなぁ。新しいのをアララに持ってこさせてくれ』
緊迫した状況で、まさかの蜂蜜の請求に力が抜けたわ。
『マルル、話はそれで終わり? 今、少し取り込んでるんだけど……』
私の慌てる態度にもお構いなしで話を続けるマルル。
『いやいや、今回の相手はバイキングみたいだから、儂からカミルにお願いがあってな。バイキングの王が今回は、ちと遣り過ぎていてな……まあ、捕まえてお灸を確りと据えてやってほしいんじゃ』
はぁ! なんで私が?
『嫌よ! それに捕まえなくても引導を渡して、三途の川の豪華船旅をプレゼントする予定なんだから! 今回は絶対にお断りよ!』
強気でそう言うとマルルは一言。
『なぁに、神の頼みを聞いて損はない、それに、今回は力で解決より話し合いにした方が楽しい筈だからな。レナクルとバイキングの関係修復をたのんだぞ』
念話が終わり、強制的に厄介な仕事を押し付けられた私は怒りの拳を握りながらも仕方ないと溜め息を吐く。
「ハァ、仕方ないわね! どちらにせよ、王を捕まえてやめさせればいいのよね!」
念話が終わり、私が独り言を言い始めたように見えたのだろうか、バイキング達が一斉に襲い掛かって来たの。
四方から攻撃を仕掛けてくる、私はバイキングの一人の腕を掴み、ニヤリと笑みを作る。
勢いをそのままに全力で振り回すとバイキングの一人を武器にして、バイキング達を凪ぎ払う。
「おい! 仲間を盾にきたねぇぞ!」
「よくもそんな卑劣な攻撃を!」
私に向けて一斉に罵倒を浴びせるバイキング達、私は振り回していたバイキングを他のバイキングに叩きつけると両手を組み、睨み付ける。
「私の耳がおかしいのかしら? 卑怯、汚い、は? 私が一人で乗り込んできて、多勢に無勢を決め込んだアンタ達が何を言ってんのよ!」
その言葉に後退りするバイキング達、しかし、一回りから二回り程、他のバイキングよりも巨大なバイキングが1歩前にでる。
「早い話がよぉ。1対1なら負けないと言いたいんだな、ああぁ?」
話が早いわね。バイキングの中でもかなりのお馬鹿さんみたい。
「私に勝てたら教えてあげるわ。勝てたらの話だけど?」
挑発する私に顔を真っ赤にして怒り狂うバイキング。
「言ったな! 言ったなッ! 言ったなぁぁッ! このボノル様をバカにしやがってぇ、赦さないぞ!」
「赦さなくていいわ。私は負けないから安心して、あと、私が勝ったら私の質問に答えて貰うわよ!」
互いに睨み合う私とバイキングのボノル。
【巨漢】対【少女】の戦いが始まるわ、でも……普通の少女じゃないことを教えてあげないとね。