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大切なものです2

 夜が終わり暗闇が明ける、朝日の輝きは全ての成功を予感させる程に煌めいていたわ。


 夜に目を覚ましたペンネが意地を張り、レナクル王国と和解はしないって言うもんだから、本当に疲れたわ。


 夜通し説得して、本当に睡眠不足だわ……話し合いなのに、困ったものね。


 未だに納得いかないと言う表情のペンネが私の元にやって来たわ。


「カミル、その……昨晩はすまなかった。妾は、ただ……迷惑を掛けたくなかったのだ、すまない」


 そう語るペンネはまるで、叱られた幼子が親に謝るように仕草を見せていたわ。


 正直、可愛すぎるわね? 


「気にしないがいいわ。それに私は嬉しかったのも事実よ。やり方がマズかっただけで、私の為に頑張ってくれたんだから」


 私とペンネが笑いながら話す最中、予想外の客人がマドラッドにやってきたの。


 知らせに来た兵士は凄く慌ててたわ。


『大変です! レナクルから船が此方に、ただ様子がおかしいのです!』


 その言葉に私は直ぐに船が近づいている海岸へ向かう。


 船はキャプテンソルティの大型ガレオン船であり、私の書いたメインマストはボロボロになっている、何より船体に刻まれた真新しい傷が只ならぬ状況を物語っている。


「良く分からないけど、ペンネ! 今すぐに助けに行くわよ。船体の損傷が激し過ぎるわ、船全体が前より沈んで見えるわ、船内に入ってる可能性があるわ」


 駆け出した私の後に続くデンキチ。


 その姿に、ペンネが声をあげる。


「あぁぁぁぁッ……わかったわァ! 聞いたであろう! 全員で船内から船員と関係者の救助を最優先、絶対に一人も助け漏らす事は赦さぬぞ!」


 その瞬間、指示を待っていたかのようにセイレーンやマーマンといったマドラッドの水中部隊とガーゴイルやハーピィーといった空中部隊が一斉に船の救助に向かっていく。


「カミル、空を行くぞ」


 私を後ろから抱き抱えると大空に飛び上がる。ペンネは大きな羽を羽ばたかせ、潮風が全身にぶつかる感触を感じながらガレオン船へと向かっていく。


 只ならぬ雰囲気に焦りを感じる私、そんな時、ペンネが海の先を指差したの。


「なんじゃ? カミル! 水平線にまだ船がおるぞ!」


 ガレオン船の後方から数隻の海賊船の姿が見え、更にその後方からは大砲を放つ別の艦影(かんえい)が姿を現したの。


「今日はなんなのよ。次から次に良く分からないわね……デンキチ。一緒にあの艦隊に向かうわよ! ペンネも私と来て、他の皆はガレオン船の救助をお願いね」


 皆が頷くと私達は水平線に向けて移動を開始する。

 その間も撃ち出されるレナクル王国の海賊船と謎の艦隊の砲撃、近づくにつれて激しく鳴り響く音が空気をしんどうさせているのがわかる。


「いいか、野郎共! 俺らが抜かれれば全ては敵の思うつぼだ。俺達が生きていた証は既にマドラッドに託した! 最後の最後まで敵を通すな。いくぞぉぉぉ!」


「「「うおぉぉぉぉッ!」」」


 レナクル王国側の艦隊の中心にはソルティの海賊船と同型の大型ガレオンがあり、船の上には勇ましく指揮をするソルティの姿があったわ。

 凄まじい気迫に感化された船員達の声が更に勢いを与え、数に負けぬ激しい戦いを開始していたの。


 ガレオン船に近づくに私達、そんな私達に砲弾を撃ちはなったのは謎の艦隊だったわ。


 余裕で回避するデンキチ。しかし……砲弾の着水により、私は全身を海水で濡らす事になったわ。


 本来なら絶対に怒らないし、笑って許してあげたかもしれない……でも、私が今日、着ていたのはお気に入りのフードだった。

 しかも、話し合いように朝から整えた髪も含めて海水まみれにされたの……


「デンキチ・・・・私、本気でいくわ」


 冷たく発した私の言葉にデンキチが一瞬、全身を震わせる。


 デンキチの背中から、空中にジャンプした私は風魔法を使い空気を蹴りながら韋駄天の如く艦隊に迫ると正面から飛んできた砲撃を受け止め、敵の艦隊に向けて全力で投げ放ったの。


 正面の艦影に命中すると慌てて海に飛び込む敵艦影の乗組員。


 投げた砲撃は船内で角度を変え、艦船に穴を開けたのだろう、ゆっくりと沈んでいく。


 私の存在に気づいた他の船が私に大砲を向けた瞬間、巨大化するデンキチと、稲妻を両手に作り出すペンネ。


 二人の姿に艦隊から激しい鐘の音が鳴り響くと艦隊は一斉に後退していく。

 辺りには投げられた煙玉が無数あり、煙幕のように私達の視界を(さえぎ)り、仕方なく追撃を諦めた私達は直ぐにガレオン船へと向かったの。


 私達の姿に動揺する海賊達、しかし、ソルティが私の顔を確認し頭を下げると事態は一変する。


 私はソルティに何が起きているのかを尋ねる事にしたわ。

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