燃え上がる大地です。
私の言う勝利の鍵とは、カリンの空気や風を操る能力を使ったある法則にあるわ、サトウなら多分気づく筈だけど、冷静さを取り戻してくれないと今の闇雲に攻めるやり方じゃ、まずいわね。
私はゴーレムのコアを全て回収する事に集中しながらスカー、サトウ、カリンの無事を信じる事にした。正直、今すぐに伝えたいけど今はまだ、その時じゃない……お願いだから私に後悔をさせないで、全員で無事にかえるんだから。
サトウはスカーと左右に別れて攻撃を開始する。
スカー自身も風を纏い高速で移動しながらフレイムゴーレムを翻弄し、サトウに一体化したカリンが木刀に風を纏わせると一振り毎に真空の刃が放たれる。
3人のコンビネーション攻撃は間違いなく聞いている、それでも攻撃の手を緩めないフレイムゴーレムは全身の温度を一気にあげるとサトウとスカーが慌てて回避する。
フレイムゴーレムの燃え上がる魂を使い自身の周りの温度を急上昇させる。
まずいのは、燃え上がる魂の後にフレイムゴーレムはある行動に出るってことなの……まずいわ。
フレイムゴーレムは周囲の温泉が上がった事を確認すると巨大な両腕を振り上げて地面を叩きつける。
フレイムゴーレムを囲うように地面が窪んで行くとまるで堀が出来たかのように円が作り上がる。
私の恐れていた最悪の攻撃パターンだわ。
地面が揺れる、次第に強くなる揺れに加えて地面に亀裂が生まれると真っ赤に煮えたぎったマグマが姿を現しフレイムゴーレムの周りに作られた堀の中へと流れ込むと要塞のような鉄壁な守りが完成する。
その光景に額から汗を流すサトウは「これって、無理ゲーって奴か、チート過ぎるだろ?」と苦笑いを浮かべる。
不思議と諦めていないサトウ、そんなサトウと同じように戦意を更に高めるスカー。
私は此処が潮時と判断していた。本当なら撤退させたい……大声で“逃げて!”って言いたい……なのになんでかな、3人は諦めてないんだよね……逃げてなんて言えないじゃない。
「3人共、よく聞きなさい! 炎は空気を大量に使う、逆に空気が無ければ燃えないわ、手出しはしないけど、死んだら1000回蘇生して1000回ブッ飛ばすわよ! 絶対に勝ちなさい!」
私の最後のアドバイス、辛そうな表情をしていたのだろう私にデンキチが歩み寄り、声を掛けてきた。
『大丈夫。サトウ、スカー、カリン、皆強いよ』
デンキチの言葉に少しホッとした気がする。
そして、3人は勝負に出たわ、カリンがサトウから離れて風を操り巨大な旋風を作り出すとスカーがその外側に更に竜巻を作り出す、内と外で作り出された風の渦が熱を天高く舞いあげていく。
フレイムゴーレムが『ヴオォォォォ!』と声をあげると辺りから次々にゴーレム達が集まっていく、フレイムゴーレムは仲間を呼ぶ事でサトウ達を止めようと考えたみたい、でも、そんな事はさせないわ!
「デンキチ、メカ、オリン、オラン、全員でゴーレムを押さえるわよ! 行くわよぉぉぉ!」
まるで大怪獣映画のような乱戦が始まる中、奇跡が起きる。