うっかり召喚?名前がデンキチなんですが?
私は浮かれていた。当然よね、召喚士それは、私が使い魔を手にできると言う紛れもない証明。
嬉しいに決まってるじゃない!
あ、じい様にも御礼を言わないと。あのじい様、私が本をこんなに早く読むとは思ってないだろうから反応が楽しみだわ。
私は急ぎ、図書館に走り、扉を勢いよく開いたわ。
「じい様ッ!! 本……」
私の手の中に外れたドアノブ、そしてゆっくりと目の前に振り向く、真っ赤な顔で私を睨み付けるじい様の姿があったわ。
「じい様……あの~わざとじゃないよ?」
「このクソチビがッ!! 扉を壊しよって」
それからその場で正座させられる私、ガミガミと一時間……足が厳戒です……
「ちょっとじい様、話を聞いてよ!!」
「なんじゃ!? やっと反省したか」
「違うのよ! 私ね、借りた本を返しに来たのよ」
私をギロリと睨み付けるじい様の目。
少しマズイっ! 此れは早口で一気にいくしかない。
「二冊とも読んで理解して更に私は召喚士になれる事が確定したのッ!! 此れは凄いことだと思わない! ……ですか」
ヤバイ……空気が重いんですけど。外に幼女を正座させて睨み付けるじい様は鬼ですか……
「本当に全て読んだのか?」
「え?」
何よいきなり?
「チビっ子どうなんだ!」
ビクッ! ビックリした。
「そうよ。一冊あたり、二日かけて読んだのよ。凄い早さでしょ」
「お前みたいなのに二日で読めるわけないだろうが! 悪ガキが」
ムっ! 私に向かって悪ガキ? 頑固ジジイ……絶対に謝らせてやるんだから!
「なら、質問すればいいじゃない。私は嘘なんて、ついてないんだから!」
そこからは意地の張り合いになったわ。じい様が本から質問を出し、私がひたすら答える。クイズ対決みたいな流れになっていたけど、丸暗記しているんだもん、勝つのは私なんだからッ!!
「ハァハァ……本当に読んだのか、信じられん!」
「ハァ……ハァ……だから、読んだんだってば!」
「最後の質問だ! 召喚の際に使う言葉を半分言ってみろ」
半分言え? 全部言い尽くしてやるわよ。じい様が私に謝るまで今日はやり抜いてやるんだから!
私は記憶の中にある配列を確りとイメージ! そこから一気に声に出す!
ーーーーーー
汝。我が忠実なる友となり。
心になる。
我は汝に名を与え互いに力を求める。
無限に知識を、無限に力を求める傲慢なる我が命に従いその姿を形にせよ。
我は恐れぬ!
我は拒まぬ!
汝の全てを受け入れる!!
召喚の王エグザートの名に誓い此の約束を違わぬと汝に誓う!
我が名はミルシュ=カミル。
汝と契約を結ぶ傲慢なる者なり!
ーーーーーー
ーーーー
ーー
『……傲慢なる者よ。汝の言葉を受け入れよう……我が望は知識……それを汝が与えるならば我は力を与えよう。契約を結ぶ者よ。我に名を与えるがよい』
え? あれ~なんでよ! 確か召喚できるのって7才からじゃないの? しかも私、無意識だったから、どんなの来るかわからないし。
『傲慢なる者よ! 名を! 偽りの契約ならば我は汝の魂を頂く』
ですよねっ!! 名前……名前……名前……
『デ、デンキチ?』
『……デ、デンキチでよいな?』
『違う……デンキチよ』
『再度問う。我はデンキチでよいのだな?』
『ええ、貴方はデンキチよ!』
『我が主、ミルシュ=カミルよ。契約に誓い我は主の魂が尽きるまで力を与えよう。我が名はデンキチ。主の使い魔なり』
・『全ての職を極めし者『上級召喚師』を取得しました』
・『全ての職を極めし者『魔物を支配する者』を取得しました』
私はうっかりで使い魔と契約を結んでしまった。
我ながらチート凄いなぁ……しかし、咄嗟に浮かんだのがゲーセンの名前なんて……使い魔に悪い事したわ、反省ね。
「お! おい……大丈夫か……チビッ子、生きてるのか?」
私は知らぬ間に意識を失い、その場で倒れていた。心配そうに私を抱えるじい様は必死に私に呼び掛け続けてくれていたの。
じい様……心はイケメンじゃないの。歳上好きな私だけど、少し歳が離れすぎてるわね。残念……
「大丈夫よ。なんで私寝てるの?」
「ふぅ……寿命が縮んだぞ、チビッ子。しかし良かった。召喚にあてられただけのようだな」
私が唱えた召喚の言葉は今は使われていない。禁忌の召喚の言葉であり、今は数人しか読めない古代エグザート文字と呼ばれる言葉で書かれたものだったの。
私の能力『全種の言葉』が私に古代文字すら違和感なしに読ませたのか……私ってこの世界の天才に成れるじゃない!
違った今更、地位とか要らないわね。
「しかし、召喚の言葉を口にして気を失ったから良かったが、本来なら死んでたんだぞ! 二度と口にするなよチビッ子。死んだら意味ないんじゃからな」
「ちょっと、じい様? どういう事よ? 召喚の儀で人が死ぬなんて聞いたことないよ」
「数年生きたチビッ子が何をいってる! お前が口にしたのは本契約しかも! なんで読めたのか解らんが古代召喚なんじゃ!」
じい様の長い話を聞いてわかったのは本契約では、死人がでる事と古代召喚は成功者ゼロの新事実だった。
つまり、私が一番乗りな訳ね。
「じい様……あの? 私、契約を結べたんだけど?」
「ハァーーーーッ!!」
じい様が青ざめてるッ!!
「取り敢えず、呼び出すから見てて!」
…………ん? 呼び出していいのかな?
「悩むより行動!! デンキチ出てきて!」
ボワンッ……
『ヌックックックック』
私とじい様の前に現れた使い魔は目付きの悪い巨大海星でした。
うわ~可愛くない……しかも目付き悪!
「アンタがデンキチね? 改めて……宜しく」
『ヌガガ。ヌガヌガァガ』
あれ? じい様が静かだなぁ?
「じい様ッ!!」
じい様……泡吹いてる……じい様ッ!!
私はデンキチにじい様を抱えさせると慌てて自宅に駆け込んだ。ママはデンキチを見て驚くかと思ったけど……
「まぁ! デカイお星様ね? 何処で仲良くなったの、カミルにこんなお友達が居たなんてビックリだわ」
いやいや、モンスターだからね……ママってある意味……凄いなぁ。
じい様は目を覚まし、デンキチを再度見て気絶を数回繰り返し免疫が出来たのか、気絶しなくなった。
「チビッ子、儂が悪かった。お前さんが正しかった。此れからは好きな時に図書館に来ていいぞ。デンキチもな」
「いいの!? やった~!」
私は村で数日の間に有名になっていた。通り名は『最小の召喚師』私とデンキチの楽しい毎日が始まっていた。