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1ヶ月後・・・
王都は興奮に包まれていた。周辺の村々に大きな被害を出していたゴブリンロードが討伐されたのだ。討伐に成功した賞金稼ぎパーティーは剣聖と名高い戦士レオンとその弟子ユアン。ユアンが12歳の少年で、さらに相当な美少年であることがわかると王都の住人達はますます熱狂した。
「剣聖の弟子。ユアンはまだ12歳だって!末恐ろしいね」
「路地でユアン君を見かけたけど凄い美少年だったわ」
「えー。私は剣聖レオン様がいいな。渋いおじさま。たまらんわ」
鍛治ギルド内でも女子達が囁き合う噂話が、ミロンにも聞こえてきたがミロンは今日も剣を作り続ける。ユアンがゴブリンロード討伐に使用した小剣の製作者がミロンであることが噂話で広まり、ミロンの武器は高値で売れるようになり、オーダーメイドの注文も急増している。噂話はユアン本人が積極的に拡散しているらしい。
「ミロンくーん!ミロンくーん!」
知り合ってから、かなりの頻度で鍛治ギルドの工房に遊びにくるようになったアリアが呼びかけるが仕事が忙しいミロンは剣を作り続けた。
「コラー!聖女様を無視するな。今日は無駄話をしに来ただけじゃないのよ。オーダーメイドの注文に来たんだからね。聖女様でお客様なんだから、神様+(プラス)アルファの接客を希望します」
「俺の仕事は高いよ。金はあるのか?」
「聖女なめんなよ。うちの教団は国内最大規模。未来に誕生する勇者様の為に信者から、お布施としてお金やら経験値やら集めまくっているんだからね。お金なんていくらでもあるのよ」
「未来の勇者様のお金を使って良いかは疑問だけど。まあ、良いか・・・お客様、いや、お美しいお嬢様。今日はどのようなご注文でしょうか?何なりとお言いつけ下さいませ!」
「お金の力ってスゴイね!今日は儀式用の鎧を作って欲しいの。性能はどうでも良いから、見た目重視で!背中には天使のような羽を小さく付けて、胸当ては胸を強調するように色のグラデーションを付けて。神聖な感じだけど隠しきれない色気があふれ出してゴメンって感じにしたいの」
「お客様、ご一緒に兜はいかがでしょうか?純白の羽を付けたサークレットタイプがご用意できます」
「そーねー。兜もお願いしちゃおうかな。羽飾りは出来るだけ大きくしてね」
「ご注文、ありがとうございます。代金は通常価格では20万Gですが、鎧、兜のセット割引がありますので10万Gになります」
ミロンは値段を思いっきりふっかけた。鎧の値段は材質でピンからキリまであるが性能重視で最高品質の金属でも5万Gもしないだろう。
「10万Gなら良いよ!そろそろ、行かないと午後の儀式に遅刻しちゃうから帰るね。最高の鎧をまってるぞ」
払うのかよ!と突っ込みを入れそうになったがミロンにとって10万Gの仕事は初めてだ。値段を思いっきりふっかけたつもりだったが、10万Gに見合う仕事をしようと考えなおした。アリアを見送ったミロンは鎧作りに取り掛かった。「見た目重視」指定には、少しひっかかるところはあったが・・・