7
「しまった。やることが思いつかない」
ユアンと別れたミロンは、まだ街をうろついていたがやっぱりやることがなかった。しかたなく王城、大神殿、各種ギルドの本部など観光名所をぼーっとしながら巡って行った。ぼーっとしながらユアンのことを思い出していた。ゴブリンロード討伐に向かうと言った少年。
「俺と同じくらいの歳でモンスターと戦っているのか・・・」
ゴブリンロードには何組もの賞金稼ぎ達が返り討ちに合っている。子供がそんな戦いに参加して生きて帰れるだろうか?
「ユアン、生きて帰って来いよ・・・」
ミロンは路地の隙間から見える空を見上げた。空は青く澄み切って、街の外で今もモンスター達との戦いが続いているとは思えない穏やかな天気だ。
「いっけなーい!遅刻遅刻!」
喚き声が聞こえたと思った直後、路地の曲がり角からもの凄い勢いで飛び出してきた少女がドッカーンと体当たりしてきた。
「ぎゃー!!」
ミロンは避けることも出来ず、少女ともつれるように路地に倒れた。(にぎにぎ。)少女は純白の修道服を着ている。(にぎにぎ。)どうやらシスターのようだ。(にぎにぎ。)
「いきなり体当たりするなんて、俺に恨みでもあるのか?(にぎにぎ。)」
「ごめんなさい。恨みは無いんだけど、すごく急いでいたから。って、コラー!!さっきからどこをにぎにぎしているのかな!」
シスターに覆いかぶさるように倒れたミロンの右手は、何故かシスターの胸をにぎにぎしていた。
「体の線を隠すように作られた修道服では分からないが可なりの大きさだ。片手では収まらないくらいだ」
「えっへん!胸の大きさは自慢なんだよね。これ目当てに私が儀式をやるとおじさん達がたくさん集まって、お布施もガッポリだからね。って、何言わせるのよ!それに、本人の前で冷静に大きさを解説しないで。恥ずかしいでしょ!」
少女は一気に話し肩で息をしている。すごく急いでいるのは確かなようだ。
「ぜぇー、ぜぇー。ガキじゃなかったら、殴り倒しているところよ。私は16歳のお姉さんだけどキミは?」
「俺は鍛治ギルドのミロン、12歳だ!」
「私はアリア・・・12歳なら、ガキんちょね!鍛治ギルドの人はみんな自己紹介が好きだよね。ギルドマスターのレナードさんの教えが良いのかな」
「レナードと知り合いなの?」
「そうだよ。いつもお仕事を依頼してるいからね。ああー!!レナードさんを迎えに行かないと!今日もお仕事をお願いする予定だったのに・・・もう、完全に遅刻ね・・・」
「鍛冶関係の仕事なら俺がやってもいいよ。スキルのレベルだけならレナードと同レベルだから、大体の仕事はこなせると思う」
「ふーん。ミロン君が噂の天才鍛治師だったんだね。だったら、大丈夫かも!大神殿まで走るよ」
アリアはミロンの手を握り全速力で走りだした。
「ぎゃー!!」
「男の子は悲鳴なんて上げている暇ないよ!遅刻遅刻!」
アリアの敏捷力はミロンより数段高く、ほとんど引きずられながら大神殿についた。