〈 十二分の一 〉
小学校から高校までの学校生活において、先生というのはとても大切な存在である。その十二回のなかで、本当に大好きな先生と出会える確率はどれぐらいなのだろうか。
「何千回、何万回だってフォローはしてやる。だけど、それ以上は何にもやらん」
正直怒られると思っていた自分が恥ずかしく思えてくる。とある放課後の夕日が教室を照らす中、この人はどこに居たって生徒想いなのだ。しかし僕は「なぜ」と問いかけた。
「人はな、必ず失敗もするし、成功だってするんだ。これ以上底に沈まないように何度だってもとにいた場所には戻してやる。だけどそれから先どうやって上に登っていくのかはお前次第だ。生きてさえいれば人生のうちに何度かは必ず成功できる時があるだろう。でもその程度で満足する奴はそれまでってことだ。
自ら成功をつかみに行く奴らとただ偶然の成功を待っている奴らの結果的に夢に近づくスピード、もしかしたら夢を叶えてからの進める距離だって違うかもしれない。そんな風に進むための力だけは、自分で伸ばしていけってこと。わかるか?」
ガハハハ、と笑う先生。
この人が僕の担任で本当に良かったと思う。
気が付けばあたりはもう暗くなり始めていて、時計を見るともうすぐ最終下刻時間。窓の奥には街灯が明るく照らす一本道が続いている。
「お前はきっと不器用なだけさ。」
先生はまっすぐ黒板を見つめながら呟く。
「後悔をする人生にだけは絶対になるな。最後まで諦めるな。やらない方がいいというのは学べるけれど、やっとけばよかったなんて思ってもそこから何かを学ぶことはできないんだ」
先生の雰囲気はなんだかいつもと違くて、真剣なまなざしは僕の心に突き刺さる。
「先生はーーーー後悔したことがあるの?」
いけないと思ったけれど、聞かないわけにはいかない。先生は短く「あるさ」と囁いた。時計の秒針の音が響き渡る。
「俺のようになってほしくない、お前には一瞬一瞬を大切にしてほしいんだ。相談なら乗るぞ?人間いつだって迷うし、なによりも教え子にはいつどんな時だって笑っていてほしからな。」
「ありがとう先生」とだけ僕は呟いた。
「おう、頑張れよ」とだけ先生は答えてくれた。
時が穏やかに流れていく中、下校を告げるチャイムが心に深く染み渡った。
大人になったら、僕がこの言葉を伝えていくから。
青春は学校生活と共に語られていく。