〈No.3〉やっとはじまるよ。
どうしよう。
僕はどうにか教室についたけどそこは混沌が這いよってきた後の様な惨状が広がっていた。
机は全部バラバラに壊されて、黒板は縦に綺麗に真っ二つで、窓は全て割れているという見事なものである。
僕は呆然とするほかなかった。
それは他の生徒も同じで、教室に入ろうとして、友人に止められる者、訳が分からず頭を抱える者、恐怖に後ずさる者もいた。僕のクラスメートであろう生徒達はボーとしている。
すると後方から声が聞こえた。
「おい!凉色!お前はAクラスに変更だ!」
戸惑いながら後ろを見るとそこには見たことのない大きな男性教師がいた。僕の担任だったら首がこる。
でも、たぶんこの学校の先生であることは間違いない。
っていうかこのがたいで生徒とかだったら僕は死を決意する。(体格差的に)
ん?そういえばこの先生はさっきAクラスって言ってたような……。
でも僕のクラスはDクラスなのに。
どうしてだろう。
僕は状況が分からないので尋ねる。
「あのー、すみませんなんでぼくはAクラスになるんですか?」
すると先生は怪訝な顔をした。
「分からないのか?」
「は、はい」
「全くこんなことをしてまだとぼけるのかお前は。では、不本意だが、説明する」
なんだか呆れられた。
でも説明してくれるならいいや。
「お前が教室を壊したからだ、以上」
いきなりそんなことを言われて焦ったけどとりあえず言葉を返す。
「えっ、ぼくじゃないですよ」
僕は否定した。何故なら実際にしてないからだ。でも、何故かその事実は覆された。
教師はおもむろにスマホを取り出すと少しいじって僕にスマホの画面を見せてきた。
そこには〝僕〟が黒板を何かで叩く動画が再生されていた。
「…なんで……」
「まったくだよ。なんで監視カメラは場所を知っていたのに隠しカメラは気付かないんだ。お前が監視カメラを壊した映像もあるが見るか?」
男子教師はなにか残念そうで、どこか不思議な言い方をした。
「い、いえ」
僕にはわかる。僕だけにはわかる。それが僕だけの特技だ。
なんで───。
なんで〝凉花〟が映ってるんだ。この日はもうすでに九州に行ったはずじゃないのか。なんで凉花が教室を壊したんだ。
凉花、お前何がしたいんだ。
「凉色、お前何したか分かってるのか」
とりあえずここは凉花が創り出したこの状況に乗っかるしか選択肢はなさそうだ。
「は、はい。それは分かりましたけどなんでAクラスなんですか?」
教師はバツがわるそうな顔をして答えた。
「Aクラスが『ゴミ箱』だからだ」
教師がそう言うとさっきまで黙っていた周りの生徒達がざわめきだした。
「じゃあアイツ『ゴミ』かよ」「Aクラスとか終わりだな」「1年パターンはレアだね」「つーか教室どうにかしろよ」
『ゴミ』ってなんだ?
「静かにしろ!あとお前らは仮教室Cへ行け!」
教師に言われた生徒達はわざとらしく声を合わせ「「「はーい」」」と言って仮教室Cへ行った。
すると目の前の男性教師は「んっうんっ」と咳払いをして改めて言った。
「というわけでお前はAクラスへ行け」
僕は「はい」と言うしかなかった。
涼色は入学日から大変ですね(笑)
これはまだはじまりですよ?
これからやっと物語が動きます。