No.3 たった一言ですべてはどうにでもなる。
遅れてしまいました。
【夢の中】
目の前にあるのは血溜り。
目の前にあるのはなにかの塊。
あるのは赤い────。
あれ?
あれれ?
『───。』
『─────ぇ』
…………ん?声が聞こえた?
『────ねぇ。』 『───サキ』
『オーサキ!』
「ちょっと?聞いてるの?」
意識を掴んだ。
「あれ?」
意識を取り戻して最初に目にした光景は赤く染まった窓だった。
「な──んで?」
「なにとぼけたこと言ってるの?」
その声はすこし前に聞いた。
「結城さん?」
あれ?なんで俺は寝ていたんだ?
俺が言うと結城さんは呆れたように言った。
「HR中も先生が注意してたんだよー。なのに起きないから諦めて私に起こす仕事を押し付けられたの」
結城さんはすこしだけ俺に怒っているみたいだった。うぅ。申し訳なさすぎる。
俺は萎縮して謝った。
「ご、ごめん!」
すると結城さんは申し訳なくなってしまったのか、それとも俺の謝り方が予想以上だったのかはわからないけど、すこし引いてしまった。(これは間違いなく俺の謝り方が原因だろう)
「い、いや。もういいけどさぁ」
そしてすこし笑って
「これからは気を付けるんだよ?」
俺は素直に頷いた。
結城さんは言った。
「帰ろう?」
やっぱり頷いた。
結城さんは隣町にすんでいるそうだ。
「だから、電車で通ってるんだよねー」
結城さん俺の隣を並んで、歩きながら言った。
俺は黙ってしまうのも悪いと思い、その話に返事をすることにした。
「へえ。大変だね」
俺がそう言うと結城さんは少しムッとしてしまった。
「ほんとにそう思ってる?」
俺は弁解した。
「思ってるよ」
「だったらもう少し感情を込めてよ!」
そこかよ。
「ねえ。結城さん」
「なに?」
俺は言った。
「あの校則ってなに?」
結城さんの顔が曇る。─────そして。
「『なに?』ってなに?」
笑った。
「だからさ──」
そう言って俺は鞄のなかを探る。校則の紙を見つけた。
「この項目はなに?」
俺は校則の【この校則は原則関係者のみに公開する】の項目を指して言った。
でも。そこには結城さんの姿はなかった。
遠くで結城さんが叫んだ。
「ごめん!もう時間だから!また明日ー!」
結城さんの姿は消えた。