02_ユキ
真っ白な部屋に
機械音が響く。
真っ白な天井に真っ白なカーテン。
真っ白なシーツに真っ白な壁。
空気の動きと物音で目を開ける。
『……』
色素の薄い柔らかな前髪。
涼しげな目元に凛とした瞳。
清潔感のある首元にワイシャツ。
『…あ、起こしちゃった?』
私の。
『んーん。起きてた。』
私の婚約者。
ユキ。
姿勢を起こす私を見てユキが言う。
ユキ『今お茶入れるから』
手早くタオル等を引き出しに詰める後ろ姿。
その薬指に光る指輪を見て目尻が下がる。
『私が入れるよ。』
ベッドから出した足に力を入れた瞬間、私の体に激痛が走った。バランスを崩した私は点滴に寄りかかった。
ユキ『アリサ⁉︎』
ユキが駆け寄ってきて私の身体を支えた。
そのままベッドに腰掛けもたれる体勢まで戻してくれた。
ユキ『無理すると傷口が開くって言われただろっ、頼むから大人しくしててよ!』
アリサ『昨日は歩いてトイレまで行けたんだけど…』
ユキ『今みたいに突発的に動いたら痛いに決まってるだろ…』
苦笑いしながら私の脂汗を指で拭い、張り付いた前髪を均してくれた。
アリサ『ごめん…』
痛みで謝るので精一杯だった。
ユキ『もうすぐ昼休み終わるから俺は行かなきゃだけど、今日はこれから…あの人達と話すだろ…体力残しとけよ…』
ユキが小声になったところで私は病室の出入り口に視線をずらした。
男『…大丈夫ですか?物音がしたので。』
黒い背広の強面な男が引き戸を数㎝開けて顔を覗かせていた。
ユキ『大丈夫です。躓いただけです。』
男『………………。』
アリサ『……です。』
男『………。解りました。何かありましたらすぐにお申し付け下さい。ここに居ますので。』
そう言うとパタンと引き戸は閉められた。
アリサ『毎日毎日よく飽きないよね、あの人達も。』
ユキ『まだ、犯人捕まってないからな…』
アリサ『…私だけなんでしょう?被害者で生きてるの…。なら、仕方ないよ、ね。』
ユキ『セキュリティの面では感謝してるよ。ただ…聴取に同席できないのは悔しいな。』
ユキが目を伏せた。
ユキにそんな顔をさせてしまう事が
私は辛かった。
ユキは1ミリも悪くないのに。
普通に生きていて、普通に生活してて
真面目に過ごしてただけなのに。
私がこんなトラブルを起こしたばかりに
ユキを巻き込んでしまった。
ただ、ただそれだけが悲しかった。




