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01_月明かり
弾けた向日葵
片目の人形
真っ赤な雨が叩いた
神様の気まぐれひとつで
森は溶ける
風が全部ないしょのはなし
『やっと私に気付いたね』
やや高めのビルなのか、屋上には夜風が吹き乱れる。泳ぐような真っ黒な髪の隙間からキュッと口角が上がるのが見えた。
『ずっと待ってたんだから。一人で。』
彼女は誰だろう。
私は何故彼女といるんだろう。
『ひとりは怖いよ…何よりも怖いよ…』
彼女が揺れる度、右手の刃物がキラキラと反射して視線を奪う。こんなに残酷な月明かり、知らなくて良かった。
『あの…』
『ずっとずっと見てた。』
今朝の連続通り魔のニュース
確かあれも凶器は刃物だった。
ぐっと奥歯に力が入る。
『…どうしてずっと、黙ってるの』
『…』
『…私に気付いてくれたんじゃないの?』
『…』
信じられない速さだった。
爪が食い込む痛みで首を締められてると把握した。
『忘れたままなんてっ…許さないから…‼︎
自分だけ忘れたままなんて…‼︎』
ゾクリとする位白い肌に大きな瞳。
まるで造り物の様だった。
目を奪われたまま、視界の隅から暗くなっていく。
怖い。
と同時に
酷く綺麗だとも思った。