密室殺人②
一旦、皆、応接間に引き上げ、リビングで一人ずつ事情聴取が行われることになった。トップバッターは当然、故人と一番、近い関係になる俺からだ。
事情聴取が始まる。
「このお屋敷で育ったのですか?」
「はい。この屋敷で育ちました。五年前までは、ここに住んでいました」
「お屋敷を出た理由は?」
「色々あって、ここに住むのが嫌になっただけです」
「色々? 確か・・・」
どうしても言わせたいようだ。
「兄の事故があったりして、ここに住むのが嫌になったのです」
「お兄さん、阿舎利志経氏が亡くなった時、ここにいたのですか?」
「はい。当時、二階に僕の部屋があって、ベッドに横になってテレビを見ていたら、悲鳴が聞こえました。慌てて部屋を出ると、階段下に経兄が倒れていました。あの長い階段、ご覧になったでしょう? 踊り場が無い上に、ただもう長い。あれを転がり落ちたのです。打ちどころが悪かったのでしょうね。首がもう、九十度くらいに捻じれていて、一目見て、これはダメだと思いました」
「事故当時、お屋敷にいたのは、志経氏とあなただけですか?」
「いえ。功兄、志功もいました。この屋敷に三人で住んでいたのですから」
「ほう~三人で」
「変でしょう。僕はまだ大学生でしたけど、経兄も功兄も独身でしたからね。男三人で住んでいた訳です。まあ、平日の日中は家政婦さんが来てくれていましたので、不自由はしていませんでした。それに、功兄はマメなたちでしたからね。料理も上手かった。功兄、一人になってからは、家政婦さんを頼むのを止めていました」
「お兄さんたちとは、どれくらい年の差があったのですか?」
「志経とは十一、志功とは五つ、年が離れていました」
「お父様は?」
「父、阿舎利大志は僕が高校生の時に亡くなりました。インフルエンザから肺炎を併発して、あっという間でした」
「お母様は?」
「母? 元気ですよ。高遠久美という、売れない女優でしたが、離婚の際のゴタゴタで干されて、芸能界から消えてしまいましたけどね。ネットで調べれば、直ぐに出て来ます。父と俺たち三人を捨てて、若い男のもとに走ったのです。子供の養育権は放棄したのに、慰謝料は寄こせと言ったそうで、そのことが公になると、批難轟轟だったみたいです」
「ああ、そんな記事を読んだ記憶があります」と安達。
「まあ、経済力の無い母親について行ったって、苦労させられたでしょうから、父と一緒の方が良かったですけどね。でも、母に捨てられたっていう記憶は、トラウマになってしまいました」
「現在は、お兄さん、お一人でここに住んでいた訳ですか?」
「そうです。この広い屋敷に功兄、一人で住んでいました」




