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女王の呪い唄  作者: 西季幽司
第一部「幽霊坂からの招待状」
5/11

屋敷をさまよう幽霊④

「どういう意味です?」

「変な話なのですが、社長、一階の廊下に防犯カメラを取り付けていましたから」

「一階の廊下に? 部屋の中にですか?」

 普通は門とか玄関とか、外部から侵入者がいないように見張る目的で防犯カメラを設置する。だが、功兄は一階の廊下を見張る為に防犯カメラを取り付けていた。

「それが・・・」と涼介は言い淀んでから、「一階の廊下にお兄さんの幽霊が出る。防犯カメラをつけたいと言われて、手配しました」と言った。

「幽霊・・・ですか。それで防犯カメラを取り付けたのですか?」

「ええ。取り付けました」

「変わった人ですね」

「だから、防犯カメラの映像を確認すれば、誰が何時、書斎に入ったのか分かります」

「被害者のお兄さんと言うのは?」

「阿舎利志経さんです。アゼリの前の社長でした。階段から足を踏み外して転落して、首の骨を折って亡くなりました。五年前のことです」

「ああ、あの玄関にあった長い階段ですね。確か、そんな事故がありましたね」

 経兄は地元の有名人だったし、刑事だ。覚えているだろう。

「あの事故以来、廊下に志経さんの幽霊が出ると社長が言い出したのです。夜中に誰もいないのに、廊下を歩く足音がするって。気のせいでしょうと言ったのですが、段々、ノイローゼみたいになって、防犯カメラをつけてくれと言い出しました」

「それで防犯カメラをつけた訳ですね」

「ええ。防犯カメラをつけてみたのですが、お兄さんの幽霊は映っていなかったみたいです」

「はは。古いお屋敷がミシミシと音を立てるのは、ラップ現象と言って、よくあることです。気圧や温度、湿度の変化によって、建物の材料や配管が音を立てるのです。きっとそのたぐいだったのでしょう。その防犯カメラの映像を確認できますか?」

「はい。こちらです」と涼介が安達刑事を連れて応接間を出て行った。

 防犯カメラの映像を確認するのだ。俺も見て見たかった。後について部屋を出ると、隆俊叔父に橋本弁護士、それに美晴もついて来た。

 防犯カメラの記憶装置は、物置部屋に設置されていた。

 物置部屋と言っても、一般家庭のリビングくらいの広さがある。しかも、置いてあるものはアンティークの家具だったり、屋敷に飾られていた絵画だったりする。屋敷を改装した時、「こういう懐古趣味のものは必要ない」と志経が、この部屋に運び入れてしまった。

 部屋の中央に机と椅子が置いてあり、机の上にはモニターとキーボードが乗っている。

「これが防犯カメラの管理装置です」と言って、涼介がモニターの電源を入れた。

 白黒映像だが、廊下の様子が映っていた。

「本当に廊下だけ、監視しているのですね」

「ええ。どうせなら、屋敷中、監視できるようにした方が良いと言ったのですが、廊下だけで良いと社長が言い張るので」

「あなたが設置したのですか?」

「いえ。社長に頼まれて手配をしただけです」

「結局、幽霊は映っていなかった」

「最近は聞いていませんが、社長は毎日、早送りで夜中の映像を確認していたみたいです。何か映っていれば、そう言ったでしょう」

「さて、今日の――この屋敷に一番、早く着いた方はどなたですか?」

「ああ、俺だと思う」と隆俊叔父が答える。

「何時頃でしたか?」

「二時前からの約束だったので一時半くらいだ」

「じゃあ、一時からの映像を見せてください」

「分かりました」と涼介は椅子に座るとカタカタとキーボードを操作した。

 モニターに午後一時からに映像が映し出される。「早送りにしましょう」と映像が流れるが、何の変化も見られなかった。

 一時二十八分になって、廊下が明るくなった。誰か玄関のドアを開けたのだ。隆俊叔父がやって来たのだろう。カメラが玄関側から奥に廊下を映している為、誰がやって来たのか分からない。そこから、何度か廊下が明るくなったり、暗くなったりした。今日、集まった人間が続々と到着したのだ。

 そして、一時四十一分に応接間を出て来た隆俊叔父の姿が映っていた。隆俊叔父は直線階段を二階へ上がって行った。俺と同じように二階にある志功の部屋を見に行ったのだ。

 四十八分に一階に降りて来ると、先ずはリビングのドアを開けた。ドアは外開きになっており、防犯カメラの映像からは開け放たれたドアが見えるだけだ。隆俊叔父が部屋に入ったのかどうかまでは分からなかった。

 五分でリビングを出てくると、奥に歩いて行く、書斎のドアを開けた。こちらは廊下から中を覗いただけでドアを閉めた。

「ちらっと書斎を見たが、誰もいなかったからな。机の後ろに倒れているなんて、思わなかった」とモニターを見ながら隆俊叔父が弁明した。

 書斎を出た隆俊は応接間に戻って行った。

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