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女王の呪い唄  作者: 西季幽司
第一部「幽霊坂からの招待状」
13/16

三番唄④

「功兄が死んで得をする人間ですか」

「そうです。あなたではありませんか?」

「僕ですか⁉」と驚いて見せたが、どう考えても俺だろう。

 父の代や経兄の頃に比べると、減ってしまったとはい言え、志功は巨額の財産を持っていた。現金、それにアゼリの筆頭株主として株式を保有している。この侍従屋敷の他にも、投資目的で保有していた不動産があるはずだ。屋敷内にある骨董品や絵画にも、値の張るものがある。そういった財産を、唯一の肉親として、俺が全て受け継ぐことになる。

「ところで橋本弁護士ですが――」ありがたいことに安達の方から話題を変えてくれた。「志功氏の財産の管理を任されていたようですね」

「功兄の? さあ、そうだと思いますが」

「はい。どうやら志功氏は橋本弁護士の管理に不信感を抱いていたようですね」

「不信感?」

「単刀直入に言えば、橋本弁護士が志功氏の財産を横領しているのではと疑っていたということです」

「えっ⁉」これはまた強力な容疑者が現れてくれた。

「ご存じありませんでしたか」

「知りません。それ、本当なのですか?」

「当然、橋本弁護士は否定しています。まあ、調べが進めば事実かどうか分かるでしょう」

 あの真面目そうな橋本弁護士が。ちょっと信じられなかったが、人は見かけによらないものだ。金に目がくらんだとしても不思議ではない。

「菅野医師にしても、最近、志功氏と仲違いしたようで、あなたがおっしゃったように会社の指定病院から外そうという話が、本当にあったようです」

「へえ~功兄と天音さんが仲違いですか。それは初耳だ」

 恋は盲目、志功は天音に首ったけだった。何があったのだろう? 志功が告白してフラれた。恐らく、そんなところだろう。

「高田氏も仕事で志功氏と激しく対立していたようです」

「そうなのですか⁉ 仕事のことは分かりませんけど」

 安達が言うには、コスト削減の為に海外進出を提唱する高田に対して、功兄は「今更、海外に進出してどうするのです? 国内の雇用が失われるし、地政学的な問題もあります。最終的に、技術を流出してしまうだけです」と反対していたらしい。

 功兄らしくあるが、正直、社長らしくもあって、功兄のことを見直す思いだった。

「あなたと窪田美晴さんだけが、志功氏と損得関係がなかった。あなた、そう言っていましたよね。あなたは損得関係がある訳ですから、結局、窪田さんだけが志功氏と損得関係が無かったことになりますね」

 安達がじろりと俺を睨んだ。俺のことを疑っているのだ。

「他に無ければ、この辺で解放してもらえますか」と安達との会談を打ち切ろうとした。

 屋敷内をうろうろされては困るので、玄関まで送って行くと、「あ、そうそう。もうひとつだけ、よろしいでしょうか?」と映画やドラマで見る名探偵みたいなことを言った。

「ええ、まあ」と不承不承、頷いた。

「庭で足跡が見つかっています。当日、あなたが履いていた靴がどれだか教えて頂きたいのですが」

「靴・・・」

 そう言えば、庭で鑑識官が靴跡を採取していた。

 三和土には俺が何時も履いている靴と功兄が履いていた靴が置いてあった。確か、足のサイズは功兄と同じだ。さて、どちらで答えるかで迷った。

 庭に残っていた足跡が俺のものだと面倒だ。

「ああ、これが僕の靴です」と功兄の靴を指さしておいた。

「足跡を照合したいので、お借りして行って構いませんか?」

「靴をですか・・・まあ、仕方ありませんね」

 どうせ功兄の靴だ。構わない。

 安達は靴を証拠袋に入れながら、さりげなく聞いた。「怪我は治りましたか?」

「怪我?」

「ほら、腕に怪我をしていませんでしたか?袖口に血がついていたような気がしたのですが」

 気がついていたのだ。

 こいつ油断がならない。

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