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女王の呪い唄  作者: 西季幽司
第一部「幽霊坂からの招待状」
11/12

二番唄②

 今日は屋敷に泊ると言うと、「くれぐれも現場を荒らしたりしないでください」と安達に釘を刺された。

「防犯カメラがあるので、悪いことは出来ませんよ」と答えると、「警官を見張りに立てておきます。何かあれば、直ぐに伝えてください」と言って、安達も帰って行った。

 結局、最後になった橋本弁護士からの事情聴取を終えたのが夜の八時前だった。高田夫婦も一人ずつ事情聴取を行ったので、時間がかかった。

 長くなりそうだったので、橋本と二人で近所にある中華料理屋で夕食を済ませて来た。屋敷に住んでいた時に、通った店だ。俺は、ここの天津丼が好物だった。橋本は焼き飯と餃子を頼んだ。

「たまには町中華も悪くありませんね~」と橋本が優雅な台詞を言っていた。

 日頃、どんな洒落たレストランで食事をしているのだろうか。

 一人になると、流石に屋敷の静けさが気になった。

 ベッドに寝転がって、だらだらと携帯を弄っていたが、いつの間にか寝てしまったようだ。異様に喉が渇いて目を覚ますと、零時を回っていた。

 水を飲みたかった。だが、飲み物を持って上がっていなかった。台所まで降りると、冷蔵庫がある。志功が何か買って入れてあるはずだ。

 仕方ないと一階に降りようと、廊下に出た。その時、


――パキッ! パキッ!


 と音がした。俺は足を止めた。下からだ。次の瞬間、


――ミシミシッ・・・ミシミシッ!


 とまるで一階の廊下を誰かが歩いているような音が聞こえて来た。

(誰かいる!)と思ってしまった。

 誰もいる訳がない。安達が言っていたラップ現象だ。屋敷は洋風建築だが、一階の床は板張りで出来ている。温度変化により木材が収縮、膨張してこすれ合い、音を立てているだけだ。

 心霊現象なんかではない。

 経兄は階段から落ちて死んだ。その志経が夜な夜な亡霊となって廊下を歩き回っている。そう考える人間が多いだろう。恐らく功兄もそう考えたはずだ。だが、俺はそなんてことは考えたくなかった。

 自分にそう言い聞かせ、屋敷奥の階段を降りて行った。

 一階に降りた。当たり前だが、廊下には誰もいない。

(ほれ、見ろ)思い過ごしだ。

 一階に降りて、一番、手前に台所がある。ドアを開ける。冷蔵庫を開けると、ミネラルウォーターがたくさん、冷やしてあった。功兄らしい。喉を潤す。廊下の音に、耳を澄ませる。何も聞こえない。

(気のせいだ)

 さて、二階に戻ろうと思った、その瞬間、


――ダンダンダンダン!


 と廊下を走る足音が聞こえて来た。経兄か⁉ 経兄なのか?

 俺は体が硬直して動けなくなった。

 足音は段々、大きくなる。やがて、台所の前に来て止まった。

(やっぱり・・・誰か・・・いやがる)

 今にも、ドアを開けて誰かが台所に飛び込んで来そうだった。

(逃げるか・・・戦うか・・・)洗濯を迫られた。

 台所だ。包丁がある。そう思った途端、体の硬直が解けた。俺は流しにあった包丁を握り締めた。

 何も起きない。誰も飛び込んで来ない。

 このまま、台所で夜を明かす訳には行かない。俺は包丁を握り締めたまま、抜き足でドアに近づいた。

 バンと思い切って、ドアを開けた。

 誰もいない。

 そろりそろりと首を伸ばして、廊下の様子を伺った。

 誰もいない。

 考えてみれば、屋敷の周囲には警官が配備され、警戒してくれているはずだ。不審者が屋敷に侵入できる訳ない。

 ほっとすると急にバカバカしくなった。

 俺は包丁を流しに戻すと、二階へ駆け戻った。

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