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女王の呪い唄  作者: 西季幽司
第一部「幽霊坂からの招待状」
10/11

二番唄①

 応接間に降りた。

 俺の顔を見た途端、美晴が駆け寄って来て、「志尊さん。指切りの唄の二番、知っています?」と聞いて来た。

「指切りの唄?」

「ほら、この辺りで流行っている指切りの唄」

「美晴ちゃん。流行っている訳ではなくて、この辺りで特有の指切りの唄だよ。ほら、指切りげんまんする時に唄う、あの唄」と高田涼介が横から訂正した。

「ああ~忘れた・・・かな」

「あの指切りの唄、こういう歌詞なんだって」と美晴が歌ってみせた。


 切っ~た、切っ~た~指切っ~た。嘘ついたら~階段から蹴落とすぞ~

 切っ~た、切っ~た~指切っ~た。嘘ついたら~包丁で刺し殺すぞ~

 切っ~た、切っ~た~指切っ~た。嘘ついたら~牢屋に閉じ込めるぞ~


「美晴ちゃん、歌、上手いね」などと呑気なことを言っていると、「ちゃんと歌詞を聞いてください!」と怒られてしまった。

「歌詞?」

「ほら、一番は“階段から蹴落とすぞ”でしょう。志経さんと同じなの。二番は“包丁で刺し殺すぞ”ですよ。志功さんと同じじゃないですか!」

「ああ~なるほど」そこまで考えていなかった。

「犯人はきっと、指切りの唄のことを知って、唄になぞらえて志功さんを殺害したのよ」

「考えすぎだよ。それだと、経兄は殺されたことになる。僕も当時、屋敷にいたけど、あれは事故だった。悲鳴が聞こえて、部屋を飛び出した時には、階段下に経兄が倒れていた」

「だから、志経さんが唄の通り死んだものだから、志功さんも唄になぞらえて殺したのよ」

「何でそんなことをする必要があるんだ?」

「それは・・・」と美晴は言葉に詰まった。

 それを見て高田涼介が助け舟を出した。「犯人からのメッセージなのかもしれません。事件はまだ、これで終わりではないと言う。次はお前だぞと犯人は誰かに告げているのです」

 どうやらミステリーファンのようだ。

「へえ~なるほど」

「感心している場合じゃないですよ。志経さん、志功さんと続けば、志尊さん、三番目はあなたである可能性が高い。あなたが犯人に狙われているのかもしれません」

「えっ⁉」

「ちょっと待って下さい。犯人が指切りの唄に則って犯行を行ったとしたら、裏を返せば、指切りの唄を知っている人間が犯人だと言うことになりませんか?」橋本弁護士だ。彼もミステリーファンなのかもしれない。

「ああ、良いご指摘だ。この中で指切りの唄を知っていた人はいますか?」と高田涼介が聞く。

「私、知っていた」と手を上げたのが天音医師だったので、皆、驚いた。

「意外ですね~」と橋本弁護士が言うと、「私、この辺りで育ちましたから。でも、犯人なんかじゃありません」と言う。

「他に、知っていた人はいませんか?」

 誰も手を上げない。

「志尊さんは?」と聞かれたので、「俺も、この辺りで育ったけど、どうだかなあ・・・三番まで歌うことって無かった気がする。一番は知っている」と答えると、「そうですよ。指切りの約束なんて、一度で十分でしょう。三回も約束する必要はないでしょう」と香織さんが同調してくれた。

「うむ。まあ、その通りです」と夫の涼介。

「でも、歌詞が三番まであるのだから、仕方ないでしょう」と美晴は不満そうだ。

 それに対して、高田が何か言いかけた時、バンとドアが開いて、隆俊叔父が戻って来た。

「次は誰だ⁉誰でも良いから、早く行け。全く、人を犯人扱いしおって!」と頭から湯気を出してながら言った。

 応接間に置いていたバッグをつかむと、部屋を出て行こうとするので、「叔父さん、何処に行くのですか?」と尋ねると、「帰るに決まっている。こんなところに、何時までもいられるか!」と怒鳴られてしまった。

 こんなところは無いだろう。

「刑事さんに怒られますよ」と言うと、「事情聴取が終わったら、帰っても良いそうだ。暫く、旅行は控えてくれとな」と言い捨てると、隆俊叔父は応接間を出て行った。

 事情聴取が終われば、帰ることができると知って、皆、ほっとした表情になった。明日は日曜日だし、このまま拘束されていてはかなわないと心配していたのだ。

「じゃあ、次は美晴ちゃん、君が行ってくれば良い」という涼介の言葉に、「では、お言葉に甘えて」と美晴が応接間を出て行った。

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