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50 悪役令嬢のお菓子

ダリルが騎士団に入団して二日が経った。ランドルフ隊長と村へ行った日から会えていない。入団したばかりだから仕方ないけど…

そんなことを考えていると、食堂に沢山の林檎が運ばれているのが目に入った。

「この林檎はどうされたんですか?」

私が食堂に入り、料理長に聞くと

「ダリルさん?の村の方から頂いたんですよ」

と教えてくれた。

私は平民暮らしに備えて、たまに食堂で料理を教わっていた。最初は、貴族のお嬢様がすることではないからと止められたけど、日頃のお礼にみんなにお菓子を贈りたいと言ったら許してくれてそこから何度か来ている。

それにしても、すごい量だなどうやって消費するんだろう。そうだ、せっかくだから騎士団の方達に差し入れを持っていこうかな

「あの、またお菓子作りを手伝ってもらえますか?」

料理長は笑顔で頷いてくれた。

「今回は何を作ります?」

「そうですね…」


本当はアップルパイを作りたいところだが、この世界に冷凍パイシートなんて便利なものはない。妥協の末に林檎のタルトを作ることにした。

タルトを二つ用意し、一つだけ焼いた。もう一つは、エリオット達が来たときに出すことにした。

料理長のおかげでとても美味しそうに出来上がった。冷めてから食べやすいサイズにカットして包む。私は料理長にお礼を言って、訓練場へ向かう。


「あれ?パトリシア様今日は稽古の日ではないですよね」

休憩に入ったのか、フィルとサイラスが訓練場から出てきた。

「今日は差し入れを持ってきたんです。いつもお世話になっているので」

かごを差し出すと、サイラスが受け取ってくれた。フィルは訓練場へ戻っていった。

「ありがとうございます。多分ランドルフ隊長が来ると思うので早めに戻られた方が…」

サイラスがそう言いかけたが、遅かった。

「パトリシア様!!」

ランドルフ隊長がズンズンとこちらへ向かってくる。その後ろをクラウド副隊長とダリルもついてきた。

「お疲れ様です。これ差し入れです丁度休憩に入られたみたいで良かったら召し上がってください」

私がそう言うと、ランドルフ隊長は男泣きをした。

「うおぉ、可愛い娘から差し入れを貰えるとは」

「貴方の娘じゃないでしょう。パトリシア様ありがとうございます」

クラウド副隊長がランドルフ隊長を軽くあしらう。

「ダリルも良かったら、貴方の村の林檎で作ったの」

「ありがとうございます」

本当はもう少し話していきたいところだけど、エリオット達が来るためお暇する。

「そろそろ行きますね」

「ご馳走様でした」

「また稽古の日に」


訓練場を後にした私はもう一度食堂へ戻る。料理長ももう一つを焼く準備をしてくれていた。

焼き終わる頃には、エリオット達が到着したようで、アンナが応接室に通しておいてくれた。

カットは料理長にお願いし、私は応接室へ向かう。


「お待たせしてごめんなさい」

私が応接室の扉を開けると、エリオットとエリーゼ、ミシェルがいた。

「トリシャちゃん久しぶりだね」

ミシェルは相変わらず仔犬のように駆け寄ってきた。

「ミシェルにエリオット、この間はありがとう、あれから忙しくてなかなか会えなかったから、遅くなってしまったけど…」

私が言い終わる前に、エリオットが近くにきて私の頭を撫でる。

「本当に村の人達が元気になって良かったね」

エリオットは幼い子供にいうように優しげに笑う。

「エリオットはお兄ちゃんみたいね」

実際、エリーゼのお兄ちゃんだから間違ってはないけど。

「手の掛かる妹はエリーゼで充分だよ」

「はぁ?私のどこが手の掛かるの?」

「胸に手を当てて考えてみろ」

ブライス兄妹は相変わらず仲が良いな。なんて思っていると、扉が叩かれる。

「お嬢様、カイル様とエレノア様がいらっしゃいました」

アンナではない侍女がやって来た。アンナは私が頼んで庭にお茶の準備をしてくれている。

私は扉を開ける。

「パトリシア、随分と久しぶりだね」

「パトリシア様お元気そうで何よりですわ」

数週間会っていないだけで、大袈裟な気もするが今まで二日、三日に一回のペースで会っていたため確かに久しぶりだ。


「アリシアとセシルはすでにお庭にいるので、みんなで行きましょう」


この人数でお茶をするのはだいぶ久しぶりだ。

「お姉様ー」

アリシアが手を振っている。今回は木陰ではなくテーブルで…こんな大きなテーブルあったんだ。今まで大体4人ぐらいで丁度いいテーブルだったが、その倍の大きさだ。

「お姉様は私の隣座ってください」

アリシアに腕を引かれ、椅子に座らされる。

「じゃあ反対隣は私が」

カイルは何故か私の隣に座った。アリシアの隣に座れば良いのに、恥ずかしいのかな?

みんなが席に着くと、ライラがお茶を淹れてくれた。

少ししてアンナがワゴンに、私と料理長で作った林檎のタルトを持ってきた。

「美味しそうですね。お姉様」

アリシアがニコニコと笑顔を私に向ける。

「そう言ってもらえて嬉しいわ、これ料理長と一緒に私が作ったの」

私が作ったことは言わなくても良かったかなと少し後悔をしたが、みんな美味しそうに食べてくれた。

「すごく美味しいよ。パトリシア」

「パトリシア様は本当にお菓子作りがお上手ですね。前に頂いたクッキーも美味しかったです。ね、兄様」

そういえば、前にエリーゼとエリオットにクッキーをあげたな。

「エリオット、どういうことかな?」

カイルがエリオットに視線を向ける。エリオットは目を逸らしている。本当にこの二人は仲が良いな

「エリーゼ、余計なことを」


私達は二人のやりとりを横目にタルトを食べ終えた。



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