俺の救世主
俺はダリル=ヨルク平民だ。幼い頃から騎士に憧れていた俺は、木の棒で素振りをしたり、身体を鍛えたりしていた。平民が騎士になれないと知ってからも毎日欠かさず。騎士になれなかったとしても、誰かを守れるように。
突然だった、謎の病が村で流行り始めた。最初に症状が出たのは村長さんの娘さんだった、そこから村長さんへ…人から人へと感染していった。俺も感染してしまったが安静にしていたらすぐに治ったので、みんなもすぐに治ると考えていた。けど、完治したのは俺だけで他の人達は軽くなるどころか悪化していった。俺は隣街に薬を買いに向かうも、謎の病が流行っていることは隣街にも知られていたため、街へも入れず石を投げられたり、殴られたりという仕打ちを受けた。命からがら逃げてきたが、村に戻る前に力尽きた。
そんなときだった、天使が現れて俺を介抱してくた。そして、その天使は…パトリシア様は俺に救いの手を差し伸べてくれた。
彼女のおかげで村のみんなも元気になった。彼女は謙遜するが、彼女の人脈があったからこそ助かったのだ。
俺がみんなに、パトリシア様がいかに美しく、お優しい方かを話していたら、村長さんはお礼しないとだから村に招待しようと言った。
経過を見に来ていたガーネットさんに頼んで、パトリシア様に手紙を出してもらうことにした。
数日後、パトリシア様は俺を助けてくれた時に一緒にいた人達と村へやって来た。
村長さんがお礼を言ったあと、パトリシア様はみんなに囲まれてしまった。俺は落ち着いたら村を案内するつもりだったが、突然現れたリックにその役目を奪われてしまった。
数十分経っても戻ってこない二人が心配で探しに行くと、人気のない所で話しているのが見えた。
俺が急いで二人のもとへ行くと、リックに詰め寄るとあろうことかパトリシア様を口説いていたと言った。俺が案内を代わり、村の人達や村を案内した。慣れない場所を歩かせてしまったため、休憩することを提案した。
女の子の、ましてや貴族のご令嬢の扱いなんて分からない俺は、とりあえずパトリシア様が座る所にハンカチを敷いた。
パトリシア様にと林檎を剥いていたが、貴族のご令嬢に食べさせて良いのか不安になった。そんな心配も必要なかったようで、パトリシア様は笑顔で食べてくれた。意外と庶民派なのか?
そういえば、パトリシア様は何で俺を助けてくれたんだろうか、気になって聞いてみると
「そうね、あなたを救ってあげたいって思っただけ」
パトリシア様はそう言って穏やかな笑みを浮かべた。特に理由になっていないように思えるが、嬉しくて顔が熱くなってくる。自惚れてはいけないのは分かっているが…
「あなたが私の護衛騎士なってくれたらいいのに」
なんて言われてしまったら俺は…どうしたら良いのか分からない。
「あなたは騎士になりたい?」
パトリシア様は真剣な表情で俺を見つめる。
平民の俺は騎士には慣れない、パトリシア様が俺のどこを買ってくれたのかは分からない。それでも俺はパトリシア様の側にいたい。
「なりたいです。俺はパトリシア様を守れる騎士になりたいです」
俺は立ち上がりそう言った。
それから数日後、パトリシア様と体格の良い男性が村へ来た。
俺の剣の腕を見に来たそうだ。パトリシア様は本当に俺を護衛騎士にしてくれようとしている。勝てる自信はないが、パトリシア様の期待を裏切らないよう精一杯打ち込んだ。
パトリシア様が俺を応援してくれている。その言葉だけで力が湧いてくる。
「パトリシア様がお前のどこを気に入ったのかは分からないが、お前にパトリシア様はやらん」
ランドルフさんはすごい剣幕だ。パトリシア様は父親ではないと言っていたが、どういう関係なんだろう。
「俺は、パトリシア様に…救ってもらいました」
俺は息が少し上がってきたため、途切れ途切れに話す。
「だから、今度は…俺が、パトリシア様を…パトリシアをお守りしたいんです!!」
「お前にパトリシア様を守るなんて百年早い」
ランドルフさんは、まったく息が上がっていない。
「パトリシア様に、側にいてほしいと言われたんです!!」
俺が力強くそう言うと、ランドルフさんは剣を下ろし
「もう充分だ」
と言った。認めてもらえなかったと思ったが、ランドルフさんは続けてこう言った。
「ダリルお前を認めよう」
俺はまだ信じられなくて固まっていると、パトリシア様が俺に抱きついてきた。
ランドルフさんの顔が一気に険しくなる。
「後日正式に迎えが来る。それまで鍛えておくことだ」
パトリシア様はランドルフさんに抱えられて行ってしまった。
俺は本当にパトリシア様の護衛になれるのか…緊張と喜びで、その日は眠れない夜を過ごした。




