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ミシェル=ガーネットの転機

僕はミシェル、ガーネット伯爵家の末子にして嫡男。そして、三人の姉がいる。

母さんと姉さん達は、僕に厳しく、優しく笑いかけてもらったことは覚えている限りで一度もない。母さんの指示なのか、侍女や従者達も少し素っ気ない態度を取る。

この家で優しくしてくれるのは父さんだけだった。


そんなとき、エリオットとその友人が家に来ていることを聞いた。

エリオットは、幼い頃から一緒に遊んでいた僕の一番の親友だ。10歳ぐらいの年から遊びに来る頻度はものすごく減っていった。最後に会ったのは一年前だった。

父さんがいると聞いて、応接室に入るとそこにいたのはエリオットと女の子だった。目が合ってしまい、僕は思わず身体を強張らせた。エリオットの友人が女の子だとは思っていなかったため、名前を名乗ったあとすぐに部屋から出ようとしたが、父さんがやって来て結局逃げられなかった。

その後も、薬草園を一緒に見ることになった。父さんが薬草を取りに行くと、エリオットもあとをついて行った。パトリシア様と二人きりになってしまい、動けなくなったいるとパトリシアに声をかけられる。

「少し歩きましょうか」

僕はパトリシア様の後ろを歩く、なるべく迷惑をかけないように。

それなのに、僕はやらかしてしまった。水の入ったバケツに足を引っかけてしまった挙句、パトリシア様のスカートに水がかかってしまった。僕は慌てて謝ると、パトリシア様はハンカチを取り出し何故か僕の服を拭いてくれた。二番目の姉さんにも同じことをしてしまったときがある、そのときは

「あんたのせいで新しいドレスがダメになったじゃない」

と言われ平手打ちをされた。パトリシア様は結局自分のスカートは拭かず、僕にハンカチを貸してくれた。その後も僕が転んでしまったとき、怪我がないか心配をしてくれた。一番目と三番目の姉さんの前で転んだときは

「本当に鈍臭いわね、こんなのが跡を継げるのかしら」

「トロいわね、邪魔なんだけど」

と言われてきた。パトリシア様は、僕と手を繋いでくれた。まだ女の子に対する恐怖で手が震えてしまう。

エリオットが戻って来て、パトリシア様のスカートが濡れていることに気づいた。僕のせいで水がかかったことを伝えようとしたが、パトリシア様は自分がバケツに躓いたと言って僕のことを庇ってくれた。


5歳の頃のエリーゼは僕の胸ぐらをつかんで

「この私が怖いんですか?ねぇ、どこが?どこが怖いんですか?」

と言ってきた。だから、女の子は年齢関係なくみんな怖いと思っていた。

本当に初めてだった、僕にこんなに優しくしてくれた女の子は。

その日はちゃんとお礼を言えなかった。


後日エリオットが僕を屋敷に招待してくれた。パトリシア様も来ると聞いて、そわそわしているとエリオットからパトリシア様の話しを聞いた。

優しくて思いやりがあって、勉強熱心で、しっかりしているようで少し抜けているところがあるとか、剣の稽古をしているとか。

そして、エリオットがあのとき父さんの手伝いに行ったのは僕とパトリシア様を二人きりにするためだったと聞いた。

「ミシェルに知ってほしかったんだ。パトリシアみたいな子もいるって」

と言ってエリオットは笑う

「エリオットには感謝してもしきれないや」

僕がそう言うと大袈裟だとエリオットはまた笑う。


僕はパトリシア様に年下だと思われていたようで、ハンカチを返したとき頭を撫でられた。同い年と知ったパトリシア様は敬語は使わなくて良いと言ってくれた。

パトリシア様と仲が良いエリオットとの差を近づけるために

「トリシャちゃん」

そう呼ぶことにした。


僕はトリシャちゃんに年下扱いされたことが嫌だったわけではないが、トリシャちゃんに頼ってもらえるように…そしてトリシャちゃんを守れるようになりたくて父さんに頼んで剣の稽古をつけてもらうことにした。





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