セシルとカイル
今日は姉さんはエリオット様と出かけた。僕は剣の稽古の日だったので行けなかった。
姉さんの代わりに、温室で薬草の世話をしていると足音が近づいてくる。
「パトリシアは?」
カイル様だ。数年前から招待をしているわけでもないのに、頻繁にやって来る。
「姉さんはエリオット様と二人で出かけました」
「二人で!?」
カイル様が眉をひそめる。
「君は普段、私とパトリシアの仲を邪魔するのにエリオットは良いんだね」
「そういうわけでは…」
できることなら僕もついて行きたかったし、なんなら行ってほしくなかった。でも、エリオット様は姉さんに信頼されているし、二人でもまあ大丈夫だろう。
「今日はもう帰られては」
この人と一緒にいても疲れるし、正直帰って欲しい。
「いや、せっかくだから話でもしようか」
「え?」
「セシル、君から見てパトリシアとエリオットの仲はどう思う?」
「どうと言われましても、カイル様より仲が良いとしか」
エリオット様といるときは普通に楽しそうだけど、カイル様といるときは緊張しているというか、顔色をうかがっているように見える。
「…そう」
明らかに落ち込んでいる、このまま諦めてくれれば良いんだけど。
「パトリシアとエリオットの会話を聞いたことある?」
二人の会話?いつもカイル様もいるからあまり聞いたことはない。僕が首を横に振ると
「君がいないときだけど…」
「ねぇエリオット、アレってどうするんだっけ」
「ああ、アレならこの前貸した本に載ってるよ」
「ありがとう」
「パトリシア、ソレ取って」
「はい」
「とまあこんな感じだよ。エリオットとはほとんどアレとかソレとかで話しているよ」
ため息交じりに言うカイル様が少し不憫に思えてきた。
「だから私が試しにパトリシアに。『アレ取ってもらってもいいかな?』って言ったら、『アレって何ですか?』って言われたよ」
「ふっ」
想像して思わず笑ってしまったら
「今笑ったね」
とカイル様に怖い笑みを向けられた。
「君はそんな仲の二人を何故邪魔しないのかな?」
「姉さんが楽しそうに勉強しているのに邪魔なんてできませんよ」
今回も珍しい薬草が見れるからと楽しそうにしていた。エリオット様との仲は確かに気にはなるけど、そもそもエリオット様が姉さんに何かできるような人じゃなさそうだし。カイル様と違って。
「それはそうなんだよね、薬草が無事に育ったときの笑顔とかエリオットがいなかったら見れなかったようなものだし」
カイル様は姉さんの笑顔を思い出したのか。愛おしそうに笑う。
カイル様もエリオット様を嫌っているわけではないことは分かるけど、何かにつけてエリオット様に対抗心を燃やしているように思える。エリオット様は気づいているのかいないのかって感じだけど。
「まあ、今回は許してあげるよ」
何故か僕が悪いことをしたような扱いをされている。やっぱり、姉さんのためにもカイル様の邪魔はしないと。
それから4日後、姉さんはブライス邸へ出かけた。
「何で今日もパトリシアはエリオットのところに行っているのかな?」
カイル様がまたやって来た。
「僕に言わないでください」
今日は僕もアリシアも用事はなかったが、姉さんに断られてしまった。
「まあいいや、今日も君と話をして帰るよ」
「え、嫌です」
「可愛い婚約者の弟とは仲良くなっておかないとだからね」
僕はカイル様とは一生仲良くなれないと思う。
「はぁ、姉さん早く帰ってきて」




