お嬢様からのプレゼント
私はアンナ=キャロル。フローレス家で侍女をやっている。
私は男爵家ではあったものの、裕福とはとても言えない生活だった。兄二人姉二人の五人兄妹の、末っ子だった私は特に期待もされずに過ごしていた。
私が15歳になった頃、人の良かった父は借金の連帯保証にされていた。もちろん借金をした奴はどこかへ行ってしまい、我が家には莫大な借金だけが残った。私はデビュタントを迎える前に、フローレス公爵家の侍女として働くことになった。
二人の姉は、ドレスを貸してくれようとしてくれた。だけど、私は断った。家が大変なときに自分だけ着飾って出かけるなんてできないから。
フローレス家で働いて一年経った頃、6歳になるパトリシアお嬢様にお付きする事になった。
お嬢様はとても賢く、愛らしい方だった。一応貴族だった私は、お世話になれず何度も失敗をしてしまった。それなのにお嬢様は
「アンナが来てくれてから楽しいの、だからずっと私と一緒にいてね」
と笑ってくれた。
私はそんな、パトリシアお嬢様とずっと一緒にいれるように、一生懸命仕事を覚えた。
いつの間にか、お嬢様の周りには沢山のご友人ができていた。あまりお側にいられる時間も減ってしまい寂しさを覚えていた。そんなとき、パトリシア様は私に刺繍入りのハンカチをプレゼントしてくださった。
「アンナ、いつもありがとう。私がもしここで生活できなくなったとしても、私と一緒にいてくれる?」
お嬢様はたまによく分からないことをおっしゃる。でも、私の返事は決まっている。
「もちろんです。パトリシアお嬢様、何があってもずっと一緒です」
私の言葉に一瞬淋しげな顔をしたあととびっきりの笑顔を見せてくださった。
お嬢様は、9歳の誕生日から毎年プレゼントされたドレスを綺麗に保管している。不思議に思って尋ねると
「何かあったときに、売ってお金にするためよ」
とおっしゃった。カイル様からのイヤリングも数回着けてからは、同じように手入れだけして着けていない。
私がお贈りした髪飾りは、今でも付けてくださる。高価なものではないからかと思っていたが
「これは一番のお気に入りだから、絶対に手放したりしないわ」
と笑っていた。
お嬢様は、カイル様との婚約解消を望んでいるようだ。何故かは分からないけど、恐らく婚約を解消された後の生活を考え、ドレスやアクセサリーを綺麗に保管しているのだと思う。
お嬢様はいつも
「カイル様には私よりもアリシアの方がお似合いよね」
とおっしゃる。私も流石にカイル様を不憫に思ってしまう。大人の私も思わず照れてしまうような、熱烈な愛情表情にもさらっとかわされている姿がなんともお労しい。
まあ、カイル様自身はあまり気にしておられないようだ。
パトリシアお嬢様は、お気づきにはなられていらっしゃらないが、沢山の人に愛されている。
私はお嬢様から沢山のプレゼントを貰っている。
それは物だけではない、優しい言葉や愛らしい笑顔。
お嬢様は、これからもっと沢山の人に愛されることだろう。私はパトリシアお嬢様の幸せを間近で見ていきたいと思う。




