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33 悪役令嬢は毒性学を学びたい。

今日はエリオットがやって来た。私はあの日から、怪我を理由に外出を禁止されている。そのため、エリオットやエリーゼが度々遊びに来てくれている。


「今日はエリーゼはいないのね」

「アリシアのところへ行くって」

本当に仲良くなったみたい。

「本を持ってきたよ」

エリオットは薬草の本を持ってきてくれた。

「ありがとう」


「へぇ、薬にも毒にもなるのね」

まあ、前世でもそういうものはあったな。要は用法用量を守れってことだよね。

「毒で思い出したんだけど、君が怪我をしたあの矢には毒が塗られていたんだって」

「え!!」

危うく聞き流すところだった。毒!?

「処置が早かったから大事には至らなかったって」

私が目を覚さなかったのもそれが原因だったってことかな?でも毒か、毒に耐性があれば毒殺は回避できるのでは?

「…その毒って手に入らないかな」

「え?何のため…もしかして君、毒を慣らそうとしているでしょ」

私は身体がビクつく。鋭い、エリオットは眉をひそめ、私の目を真っ直ぐ見つめる。

「…違うわ」

目が泳いでしまう。

「ねぇ、俺の目を見てもう一回はっきり言って」

エリオットに肩を掴まれる。

「えーと」

「素人が簡単にできるようなことじゃないんだよ、死ぬかもしれないだよ!!」

「はい」

「はぁ、君は賢いって聞いていたんだけど」

子供に叱られてしまった。

「ごめんなさい」

「それにしても、何で毒を慣らそうなんて…」

「だって、今後毒を盛られる可能性もないとは言えないじゃない」

「そうかも知れないけど、毒を慣らす過程で死んだら元も子もないよ」

確かに、エリオットの言うことは正しい。でもカイルの婚約者である間はそういった危険と隣り合わせってことだよね。

「はぁ、婚約解消してくれないかなぁ」

「え!?」

やばい、声に出てた?

「何でもないわ」

「パトリシアはてっきりカイル様の事が好きなのかと思ってた。」

「いえ、全然」

エリオットには、私がカイルを好きなように見えてたのか。

「…そうだったんだ」

「逆に何で私がカイル様を好きだと思ったの?」

「ハンカチの刺繍で迷ったり、わざわざ天幕の裏でハンカチを渡したりしていたから」

渡すところ見られていたのか。

「それは相手が王子様だから、下手なものは贈れないと思ったからで。それに天幕の裏で渡したのも、婚約の話が公になってないのに人前で渡すわけにはいかないからよ」

「そっか」

エリオットは小さく笑った。

「そうよ、まったくもう」

もう少し距離を置いたほうがいいのかな?

「パトリシアは本当に婚約解消になったらどうするの?」

「そうね、田舎で自給自足をしてひっそり暮らしたいわね」

婚約解消されたら、噂はすぐに広まり平穏な生活なんて送れない。それならいっそ、田舎でひっそり暮らすしかない。

「ハハッ、ひっそりは無理でしょ」

エリオットが笑う。

「アリシアやセシルもついてくるんじゃない」

アリシアはともかく、セシルは来ないと思う。

「それに俺も遊びに行くから」

「ふふっ、それはそれで楽しそうね」

円満に婚約を解消できたらそんな未来が待っているのかな?

「でも、危険な目に合わせてしまった事で婚約解消にもなりそうじゃない?」

それだ!!パトリシアの事が好きなカイルがパトリシアの傷つく所は見たくないはず。私は上がってしまう口角を両手で隠す。

「逆に怪我を負わせた責任で婚約継続って可能性もあるけど…」

それもあり得る。カイルは私を守れなかったことを悔やんでいたみたいだし。

「はぁ」

「露骨に肩を落とさなくても、それに良い薬も貰ってるんでしょ」

それはそうだけど。やっぱり殺されるのは嫌だし、毒については調べておきたい。

「ねぇ、エリオット私やっぱり毒について勉強したいの」

「まだ諦めてなかったの?」

エリオットは呆れたようにため息をついた。

「だって…ならエリオットと一緒なら良いでしょ?私が毒を使わないように監視できるでしょ」

エリオットも薬学を勉強してるっぽいし。

「…分かった、でももう少し待って。君に教えてあげられるように勉強するから」

「本当に、約束よ」

私は嬉しくて、エリオットの手を取りブンブンと振って子供のようにはしゃいでしまった。


剣術を極め、毒に詳しくなればそう簡単に殺されないはず。よし、平穏な田舎暮らしを目指して頑張るぞ!!

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