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29 悪役令嬢と狩猟大会

狩猟大会は始まってみると案外退屈で、基本的にお茶会など、貴族同士の交流の場という感じだ。

狩猟ってことだし、ジビエとか食べられるのかな。


「パトリシア様!!」

エレノアが天幕へ入ってきた。エレノアの後ろには、エレノアの侍女ミアとエリーゼ、エリーゼの侍女と思われる女性。

「エレノア様、落ち着いてください」

「そうですよ、落ち着いて」

ミアとエリーゼがなだめている。


「それで、どうしたの?」

「エリーゼから聞きましたわ」

「エリーゼから?」

こんなに取り乱すほど、何のことだろう。

「どうして…私には、私にはハンカチをくださらないのですか?」

そういえば、エレノア以外には渡していた。まさかそのことだったとは。

「ふふっ、ちゃんと用意しているわ」

私は、オレンジのガーベラを刺繍したハンカチを渡す。

「…家宝に致しますわ」

エレノアは唇を噛み締め、ハンカチ持って震えている。

「普通に使ってほしいわ」


「それにしても退屈ですね」

私達はアンナが用意してくれたお茶を飲みながら話をする。

「そうですわね」

「少し散策に行きましょうよ」

エリーゼが立ち上がった。私達はベアトリスに一声かけ天幕の外へ出た。



「お散歩日和ですね」

「そうね」

「あれはカイル様では?」

「本当だ、何でこんな所にいるんですかね?」

カイルは護衛騎士達と一緒に戻ってきたようだ。

まだ始まって一時間程しか経っていない。

「パトリシア様は行かなくて良いんですか?」

「お忙しいみたいだから」

私は適当に笑って誤魔化す。正直行きたくない。


カイルと目が合った。

「パトリシア」

気づかれてしまった。私はとりあえず手を振る。

「私達は気にせず、行ってらっしゃいませ」

「お姉様ー」

「ほら行くよアリシア」

アリシアはエリーゼとエレノアに腕を掴まれ連れて行かれる。


「カイル様は休憩ですか?」

「ん?あーまあそんなところかな」

何か曖昧な返事だな。サボりかな?

「休憩なら邪魔をしてはいけませんね。私はこれで失礼します。」

私は踵を返そうとしたが、カイルに腕を掴まれる。

「え!?いや待って」

一体何がしたいんだろう。

「こんな所では目立ってしまうので、端に行きましょう」

カイルはホッとして顔をした。サボってるのをチクリに行くとでも思われたのかな?

「それで、どうされたんですか?」

「あぁ、その…」

あれ?今何か光ったような。

「カイル様危ない!!」

私はカイルを庇い倒れる。

「…っ痛」

何かが腕を掠った。ズッキンズッキンと痛む腕を手で抑えると血がどくどくと流ていた。

「…パトリシア、血が」

カイルは真っ青な顔をしている。

「…っ、カイル様お怪我は?」

痛みに悶えながらもカイルの無事を確認する。

「私は、私は無事だよ。それより傷を」

「…無事で良かった」

パトリシアごめんね、あなたの身体に傷をつけてしまって。意識が朦朧としてくる。

「パトリシア様、手当てをします。」

カイルの護衛騎士が私を抱き上げられる。

「誰か至急、衛生兵を」

「私が…」

「カイル様は天幕へ」

「待て、私が…パトリシアの傷を」

「パトリシア!!」

カイルがパトリシアを呼ぶ声が聞こえる。


私はそこまでの記憶を最後に意識を失った。



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