27 悪役令嬢は考える。
カイルに渡すハンカチ…何を刺繍したら良いんだろう。
紋章とか?でも難しいし、アリシアにあげたのと同じように花にしようかな。
あれじゃない、これじゃないなんてなりながら作っていたら、刺繍入りのハンカチが増えてしまった。
紫のパンジーの刺繍に、紫のスターチス刺繍。どれもカイルって感じではないんだよなぁ。
でも、これどうしよう。あ、そうだ!!
今日はブライス兄妹が遊びに来た。セシルは狩猟大会に向けて、騎士達と狩りに出ているため、不在だ。
「そういえば、エリオットも狩猟大会に参加するの?」
カイルやセシルが参加するから、年齢的にエリオットもかな?
「…まあ、一応」
エリオットはあまり乗り気ではないのか嫌そうな顔をしている。
「兄様は弓の扱いは素晴らしいんですけど乗馬の才能が絶望的なんです。」
「エリーゼ、余計なことを言うな。」
弓の才能があるだけ凄いと思うんだけどな。でも、参加するなら丁度いい。
「エリオット、良かったらこれ貰って」
私はパンジーの刺繍のハンカチを渡す。
「え、これ貰って良いの?」
「ええ、なんとなく作ったものなんだけど、エリオットの髪色に似ているから、あげたくなって。」
「ありがとう、大切にする」
エリオットは俯いてしまったが、少し笑っているように見える。
「兄様良かったね」
エリーゼがエリオットの背中をバシバシを叩いている。
「エリーゼも良かったら貰って。」
私はスターチスの刺繍のハンカチを渡した。
「私にも良いんですか?」
「ええ、もちろん」
こっちもエリーゼの髪色に似ているなぁってなったんだよね。
「私はお姉様が初めて刺繍なさったハンカチを貰ったんですよ」
アリシアは誇らしげに言う。気に入ってくれたみたいで嬉しいな。
「パトリシアはこの刺繍入りのハンカチ、俺達以外に誰かにあげたの?」
「ここにいる三人だけよ」
何でそんな事を聞くんだろう。
「…そっか」
エリオットはまた俯いてしまった。
「お兄様にはあげてなかったんですね」
忘れてたわけではないんだけど、カイル同様に何を刺繍するか迷ってるんだよね。
「あげるつもりなんだけど、まだ用意できてなくて。」
「それにしても、こんなに細かいの作るの大変だったんじゃ」
「そんなことないわ、時間を忘れるぐらい楽しかったわ」
「それでは、カイル様にお渡しする物はもうできたんですか?」
「…いや、それはまだできてなくて」
「あげなくても良いんじゃないですか?」
エリーゼの言葉に私は心の中で頷く。正直、何を刺繍したらとか考えるのも疲れる。セシルのは良いとして。
「…そういうわけにもいかないわ」
「でも、パトリシア様に意地悪するような方ですよ」
「エリーゼ、一応王子様何だからそういうのはやめておけ。」
一応ってまあ、誰に聞かれているか分からないし、カイルの話はやめにしよう。
「狩猟大会頑張ってね、エリオット」
私は無理矢理話を変えた。
「え、あ…うん」
不自然な話題変換にエリオットが戸惑ってしまった。
その姿を見てエリーゼは楽しそうにエリオットの肩を叩いている。
はぁ、カイルの話は本人がいなくても緊張するな。
でも結局何を刺繍したら良いんだ。




