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26 悪役令嬢と継母

今日は特にする事もなく、ぼーっとしていた。

そのとき、扉を叩かれた。

私が扉を開けると、そこにいたのはベアトリスだった。

「パトリシア良かったら、一緒に刺繍でもしない?」

私とベアトリスの仲は良好で、たまにこうして私の部屋に来てはお茶をしたりしていた。

「是非」


私はベアトリスと一緒に、ベアトリスの部屋に入る。そこには沢山の刺繍糸と刺繍枠が用意されていた。

私達はソファに腰を下ろす。


「パトリシアは飲み込みが早いわね」

私はベアトリスに色々なステッチを教わった。案外楽しくて夢中になっている。

「母上の教え方が上手だからですよ」

実際ベアトリスの教え方は丁寧でわかりやすかった。

「嬉しいことを言ってくれるのね」

私はなんとなく、ミモザとピンクのガーベラをイメージしてハンカチに刺繍する。

「素敵ね」

ベアトリスに褒められながらも、刺繍を進める。すると、突然勢いよく扉が開いた。

「お姉様!!」

アリシアがやって来た。

「こら、アリシアはしたないわよ」

ベアトリスがアリシアをたしなめる。

「ごめんなさい、お姉様がお母様と一緒にいるって聞いてつい」

「ふふっ、アリシアも一緒にやりましょ」


「うぅ、難しいです。糸がまた絡まりました。」

「あら、アリシアには少し早かったかしら?」

「そんなことありません」

ベアトリスの言葉にアリシアがムッとしている。

「アリシア、良かったらこれ貰って」

私は出来上がったハンカチを渡す。

「良いんですか?」

「ええもちろんよ」

「嬉しいです、大切にします。」

アリシアはニコニコと嬉しそうに笑う。私も嬉しくなる。

「私もお姉様にプレゼントできるように練習します。」

アリシアが張り切っている。

「楽しみにしてるわ」

私達がそんな話をしていると

「パトリシアは、今度の狩猟大会も大丈夫ね」

とベアトリスが言う。

「狩猟大会ですか?」

「そうよ、今年はカイル様も参加されるみたいだから。刺繍入りのハンカチをお渡ししないとね。」

狩猟大会があることもハンカチを贈る文化も知らなかった。しかも、カイルに贈らないといけないなんて。

「私のではカイル様には相応しくないと思うんですけど…」

「大丈夫よ、こんなに可愛い婚約者からの素敵な贈り物喜ばないはずがないわ」

刺繍の出来栄えは自信があるけど、カイルにあげるってとこが問題なんだよね。

「お母様?何故お姉様がカイル様にハンカチをお渡しするのですか?」

「それはね、刺繍入りのハンカチは大切な人の無事を祈るために贈るものなのよ。だからカイル様の婚約者のパトリシアが贈るのよ」


それなら、なおさら渡したくないな。今後婚約破棄されたときに捨てられるような物をわざわざ時間をかけて作るのも…まあ、作らないとダメだよね。

「狩猟大会は1ヶ月後だからそれまでに用意しないとね」


刺繍自体は楽しかったのに、急に気が重くなってきた。


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