25 悪役令嬢と親衛隊長
私は訓練場に向かっている。剣の稽古は今も続けている。結局アリシアとベアトリスにはバレてしまったが、稽古をやめさせられることはなかった。
「今日もよろしくお願いします」
私は訓練場に入り挨拶をしたが、その場はシーンとしていた。
「パトリシア様?何故こんな所に?」
誰だ?この三年稽古のために訓練場に行っていたが、初めて見る人だ。アッシュグレーの髪に、ブルーの瞳の30歳ぐらいの男性。
クラウドの方に目を向けると、困ったような顔をしていた。
「パトリシア様は、剣の稽古に来られたんですよ」
フィルの言葉にクラウドとサイラスが慌てる。
「それは本当ですか」
「…はい」
ちょっと怒られてるみたいで怖い。
「クラウド副隊長、これはどういう事だ」
「はい、アルフレッド様からのご命令で、パトリシア様の護身のためです。」
私がうんうんと頷く。それにしても、今まで隊長の耳に入っていないのが不思議なくらいだ。
「何故…何故だ。」
「え?」
「何故私には話が来ていないのだ」
「それは、ランドルフ隊長が暑苦しいからでは?」
サイラスが言う。どうやら彼は隊長だったようだ。
「うおぉぉ、私もパトリシア様の稽古にお付き合いしたかった!!」
声がデカい。本当に暑苦しそうな人だな。
「ランドルフ隊長ではパトリシア様がお怪我をしてしまいます。」
クラウドは慣れているのか、冷静だ。
「パトリシア様、ランドルフ隊長は無視して稽古を始めましょう」
フィルが訓練用の剣を持ってきてくれた。
隊長に対して、そんな態度で大丈夫なのかと思いながら剣を受け取る。
「私が、私がお教えします。」
ランドルフが必死に手を挙げている。
「今日は剣の稽古ではなく護身術をお教えします。」
ランドルフを無視してクラウドが進める。
「パトリシア様は女性です。どんなに剣術の腕前が長けていても、力ではどうにもならないことがあるでしょう。」
確かに剣の稽古をしていても、いざってときに剣がなければ意味をなさない。
「では見ていてください。」
クラウドはそう言うとランドルフに殴りかかったが、ランドルフはクラウドの腕を掴み軽く投げた。
「凄い」
私は思わず拍手をした。
「今のは相手の攻撃を受け流し、その力を利用して回避する技です。」
つまりは合気道みたいなものか。
「クラウド、パトリシア様に他のも見せてあげよう。もう一回殴りかかってくれ」
ランドルフは意気揚々としている。
「それはそうと、ランドルフ隊長は私が稽古のときは何をしてらしたんですか?」
三年近くあったのに、合わないほうが難しい。
「ランドルフ隊長がアルフレッド様の護衛の日に稽古をつけていましたから」
クラウドの言葉にランドルフが驚く。
「何故!?」
「力加減とかできなさそうだからですよ」
「ぐぬぬ」
何故ランドルフは私の稽古に付き合いたかったんだろう。
「ランドルフ隊長は、何故私の稽古に付き合いたかったんですか?」
「パトリシア様はもう覚えていないと思いますが、パトリシア様が3歳のとき。」
「私をアルフレッド様と勘違いして、私のマントを掴んで「おとうしゃま、だっこ」って言ったんです。私はその日からパトリシア様のおとうしゃまになったのです。」
そんな事があったんだ。ってかおとうしゃまって…
「だから、アルフレッド様はランドルフ隊長をパトリシア様に近づけないようにしていたのか」
「何故!?」
ランドルフが膝から崩れ落ちる。
「私は、剣の稽古なんて危険なことだからこそ、おとうしゃまである私がお教えしたかった。」
危険なことだからとめるアルフレッドと、危険なことだからこそ自分が教えたいランドルフか二人とも本当にお父さんって感じだな。
「そのおとうしゃまって言うのやめません?」
サイラスは少し引いている。
「パトリシア様、いつでも私のことおとうしゃまって呼んで良いですからね」
私が言ったわけではないけどだんだん恥ずかしくなってくる。
「呼びません!!クラウド副隊長ご指導お願い致します。」
「そんなぁ」
ランドルフの叫びが聞こえるが、無視をして私達は稽古を始めた。




