変化と前進
俺はエリオット=ブライス。ブライス公爵家の長子で嫌われ者。
そんな俺は今、鏡と向き合っている。
「せっかく綺麗な瞳なのに」
「アクアマリンみたいで凄く綺麗です。」
あの日パトリシアに言われた言葉が忘れられずにいる。
前髪、切ろうかな?でも、パトリシアに褒められたから切ったって知れたら恥ずかしい。
そういえば、パトリシアは毛虫が苦手なことをアリシアに知られたとき恥ずかしがっていたなぁ。
「…様、兄様」
「エリオット兄様!!」
「何だよいきなり」
「いきなりじゃないんだけど、ずっと呼んでたのに聞いてなかったのは兄様でしょ」
全然気づかなかった。部屋に入られていたことも、呼ばれていたことも。
「どうせ、パトリシア様の事でも考えていたんでしょ」
「なっ…そ、そんな、考えてない。」
思わずどもってしまう。
「ふーん」
エリーゼが疑り深い目で見てくる。
「それにしても何でハサミなんて持って…あ、前髪を切るの?」
「…まだ迷っている」
「切ればいいのに」
「急に前髪切ったら変に思われないか?」
「何をそんなに気にして…あ、パトリシア様に何か言われたんだ」
エリーゼはニヤニヤしている。
「うるさい」
「図星だ」
エリーゼがケタケタ笑う。本当に良い性格している。
まあ、せっかく用意したんだから切るか。
俺は机の上に紙を広げ、ハサミで毛先を切…
「へっくしょん」
ザクッ
「あー!!」
「兄様うるさい」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
俺は慌てて鏡を見る。毛先を少し切るつもりが、鼻下までざっくり切ってしまった。しかも斜めに。
「最悪だ」
どうする、どうやって修整したら。
「私が何とかする」
正直信用できないが、
「私のせいだから」
と反省しているみたいだから、一か八かお願いする。
チョキチョキとハサミの音だけが響く。
「よし、できた」
エリーゼに鏡を渡され、鏡を見る。
前髪は斜めに切りそろえられている。長さも鼻下から目にかからないぐらいの長さになっている。
「何か変じゃないか」
「うーん、そうだ」
エリーゼが右側に残った長めの髪を三つ編みにし始めた。
「これで完璧」
いや、変じゃないか?似合ってないだろ
「大丈夫、似合ってるから」
パトリシア達が屋敷に来た。
「エリオット前髪を切ったのね。良く似合っているわ」
パトリシアはそう言って笑った。俺はその笑顔と言葉で顔が熱くなってきた。恥ずかしくなって顔を逸らしたらエリーゼと目が合った。
エリーゼは自分のおかげと言わんばかりのしたり顔をしている。
最近、エリーゼの色んな表情を見ることが増えた。
俺もエリーゼもパトリシアと出会ったことで、少しずつ変わってきているのかもしれない。




