23 悪役令嬢とブライス兄妹
会場の近くまで戻った私達に、アリシアとエレノアが駆け寄ってきた。
「お姉様達はどこに行かれてたのですか?」
「少し疲れて、木陰で休憩をしていたの」
「そうだったのですね、もう大丈夫なんですの?」
アリシアが心配そうに私を見つめる。
「もう平気よ、心配してくれてありがとう」
「あら?そちらの方は?」
エレノアがエリオットを見る。
「俺は、エリオット=ブライスです」
エリオットが軽く会釈する。
「私はエレノア=コーデリアですわ。ブライス?もしかしてあなた…」
「兄様!?」
みんなが声の主の方を見る。
そこにいたのは、ペールパープルの髪を耳の上でツインテールにした。アクアマリンの瞳の可愛い女の子。
「兄様が会場に入ってくるなんて珍しい。頭でもぶつけちゃった?」
「エリーゼ」
エリオットが呟く。
「やっぱり、エリーゼのお兄様でしたのね」
エレノアの知り合いのようだ。
「私はエリーゼ=ブライスです」
エリーゼが微笑む。可愛い、アリシアが妖精ならエリーゼは天使だろう。
「パトリシア様が兄様を連れてきてくれたのですか?」
名乗ってないのに名前を知っているのは、お茶会にちゃんと参加しているからだろう。
「連れてきたと言うわけでは…」
「兄様はいっつもくだらない噂に怯えてるんですよ、そのせいで私が食事を持っていくことになって大変なんです。」
エリーゼがぷりぷり怒っている。
「だから、連れてきてくださってありがとうございます。」
「エリーゼ様はお兄様想いなのね」
私が笑う。
「別に、そんなんじゃありません。」
エリーゼがぷいっとそっぽを向く。
「…悪かったよ、そのいつもありがと…」
エリオットがエリーゼの頭を撫でる。
「もう頭を撫でられても嬉しい年齢じゃないんですけど」
エリーゼは文句を言いながらも嬉しそうだ。
「そういえば、エリオット様とエリーゼ様はおいくつなんですか?」
「俺は今年で11になります。エリーゼは8歳に…」
「エリオット様は私と同い年だったんですね、エリーゼ様はアリシアと…」
私はハッとする、エリーゼは頭を撫でられても嬉しい年齢じゃないって言っていた。
「アリシア、もしかして頭を撫でられるのは嫌だったかしら」
「そんなことありません。私はずっとお姉様に頭を撫でていただきたいです」
「そう、良かったわ」
私はアリシアの頭を撫でた。アリシアは幸せそうに笑う。
「ふーん、アリシア様はお子様なのね」
「こら、エリーゼ」
「お姉様に撫でていただけるならお子様で結構です」
アリシアが珍しくムスッとしている。
「まだ姉離れができないのね」
この子、天使な見た目に反して結構ズバズバ言う子だな。
「…お姉様」
アリシアは両頬がパンパンになるぐらい頬を膨らましている。
アリシアを抱きしめて撫でてあげる。
「エリーゼ、感じ悪いぞ」
エリーゼが身体を揺らす。
多分この子は、虚勢を張って強がってるんだ。エリオットが側にいない間、一人で…兄を侮辱されながらもこの場に残るために。
「エリーゼ様は強いですね」
「え?」
エリーゼが私の方を見る。
「幼いのに…良く耐えてきましたね」
私の言葉でエリーゼの瞳が揺れる。
「大切な人が悪く言われるのは許せないものね」
「…エリーゼ」
「…ずっと、ずっと辛かったの、兄様の事を悪く言われるのも…私とは本当の兄妹じゃないんじゃないかって言われるのも…」
エリーゼの瞳から涙が溢れる。
「俺のせいで、ごめんな」
エリオットがエリーゼの事を撫でている。
「さっきは撫でられても嬉し…」
アリシアの言葉をセシルが手で口を塞いで遮る
「アリシア様、さっきはいじわるを言ってごめんなさい。」
エリーゼが頭を下げた。
「全然気にしてませんよ」
アリシアが笑う。
「同い年なら呼び捨てで良いでしょ?よろしくねアリシア」
「よろしくお願いします。エリーゼ」
平和だなぁ
「…あの、俺も呼び捨てでも大丈夫ですか?」
「構わないわ、これからよろしくね。エリオット」
「うん、よろしくパトリシア」
私達は握手を交わそうとした…が
「私も同い年だから、呼び捨てでも構わないよ」
何故か、カイルとエリオットが握手している。
カイルもエリオットと仲良くなりたかったのかな?
そろそろ会場に戻るとしますか。
「あら?パトリシア様、髪に何かついていらしてますわ」
髪?え!?もしかしてまた毛虫?
「嘘!?毛虫?やだやだやだ誰か取って」
私はまた泣きそうになる、
「大丈夫、ただの葉っぱだよ」
セシルが取ってくれた。良かった毛虫じゃなくて。
「お姉様?」
私は顔がみるみる赤くなってきているのを感じる。
「苦手なものは誰にでもありますわよ」
エレノアの優しい笑みが余計に刺さる
「ぷふっ」
カイルが吹き出す。
「恥ずかしい、特にアリシアには見られたくなかった」
私は顔隠しへたり込む。
「何でですか?」
「だって、かっこ悪いでしょ?」
「そんなことありませんわ。今のお姉様とっても可愛らしかったです。」
可愛らしいって子供に言われるなんて、それにアリシアは何かズレてる気がする。
「ふふっ、本当にパトリシアは可愛いね」
カイルはずっと笑っている。
「笑いすぎですよ」
エリオットがそう言っても、カイルは笑っている。
セシルが私の頭を撫でている。子供に慰められてしまった。今まで作り上げてきたお姉さんキャラが壊れていく。
「カイル様は放っといて行きましょう。」
「婚約者をバカにするなんて酷いですね」
「ほんとほんと」
私はエレノアとエリーゼに手を引かれている。後ろからセシルとアリシアがついてくる。
「パトリシア、ごめんって」
カイルが慌てて走ってきた。私も流石にムカついたからわざとらしく、顔を背けた、
「あーあカイル様が怒られせた。」
「うるさいな、エリオットだって少し笑ってただろ」
エリオットも笑ってたのか。
「罪を擦り付けるのは良くないですよ」
王子相手に軽口を叩く程仲良くなったのか。
「ふふっ」
「お姉様?」
「ごめんなさい。楽しくてつい」
こうして、カイル主催のお茶会は幕を閉じた。




