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20 悪役令嬢と婚約者

今日はカイルが挨拶に来る日だ。

私は誕生日の日と同様に早く起こされ、念入りに身支度をされている。


「はぁ」

「緊張されてます?」

アンナが髪を梳かしている手をとめる。


「分からない」

これが緊張ではないことは分かっている。どちらかというと、不安に近い。

「優しくて、可愛らしいパトリシアお嬢様なら大丈夫ですよ」

アンナは微笑む。

「でも、私が王宮で暮らすことになったら、アンナとは離ればなれになっちゃうのよね」

私の言葉でアンナの顔がこわばる。


「…私もお嬢様と離れるのは寂しいです。でも、お嬢様の幸せが、私の幸せですから」

アンナは悲しそうに笑う。


アンナは本当にパトリシアを大切に思ってくれているんだ。


「そうだ、カイル様から頂いたイヤリング」

一応つけたほうが良いよね。

「では、イヤリングが見えるような髪型にしましょう」



「カイル様、ようこそお越しくださいました。」

私はアルフレッドとベアトリスと一緒にカイルを出迎える。

「カイル=ルーク=アルフォードです。ご挨拶に伺わせていただきました。」

カイルが会釈する。

少し遅れてやって来た、アリシアとセシルも挨拶をする。

「私はアリシアと申します」

「セシルです。」


軽い挨拶も済んだとき。

「パトリシア、せっかくだから、カイル様とお茶でもしておいで。」

アルフレッドはそう言って少し引きつった笑顔を向ける。



「お姉様、今日の髪型素敵ですわね」

私は編み込みをカチューシャのようにして後ろでハーフアップにしている。

「本当に良く似合ってるよ。それに、そのイヤリングも」

「ありがとうございます」


カイルと二人きりでお茶をすることになりそうだった所を、アリシアとセシルが来てくれた。


「それにしても、本当に仲が良いんだね」

エレノアにも同じ事を言われたなぁ。

「はい、二人とも本当に良い子で…」

私は、少々姉バカになってきているのかも。

「二人は本当に姉想いなんだね」

カイルは口元は笑っているが、目は笑っていなかった。

セシルが身体をビクッとさせている。分かる怖いよね。


「お姉様、カイル様に庭園をご案内しましょう」

アリシアはピリついた空気には気づいてないようだ。

「是非案内して欲しいな」

カイルがさっきとは違う優しい顔で笑う。さすがアリシア。


「カイル様、こちらです!!」

「そんなに慌てなくてもちゃんとついて行くよ」

アリシアがカイルの手を引いて走る。


いつの間にか仲良くなってるな。


「姉さん大丈夫?」

セシルが私の顔を覗き込んできた。

「ありがとうセシル、アリシアもカイル様も楽しそうね」

「…そうだね」

「私なんかより、よっぽどお似合いよね」

私は、大木に持たれるように座る。

「アリシアと婚約すれば良かったのに」

しまった口に出してた。

「…姉さんは、もし本当にそうなったらどうするの?」

セシルが私の隣に座る。

「そうね、まだ公になってない今なら大丈夫だけど、公になってからだと、ここにはもういれないわね」


婚約破棄されるなんて家の恥って感じだろうし、アルフレッドはそんな事言わないだろうけど。


「それなら…もし本当にそうなったら、そのときは僕が…」

「二人は何を話してるのかな?」

セシルが何かを言いかけたところにカイルが現れた。

「ついてきていないと思ったら、パトリシアは婚約者の私といるより弟君(・・)といる方が楽しいんだね」

また、口元は笑ってるのに目が笑っていない。

「申し訳ありません、そんなつもりは」

私は慌てて立ち上がり頭を下げる。

怖い、子供なのにこんなに威圧感が。

「お姉様ー」

アリシアが走ってきた。

はぁはぁと息が上がっている。

「アリシア、落ち着いて」

「カイル様、お姉様をいじめないでください」

アリシアが私の前に立ち両手を広げている。


私がカイルに頭を下げているのを見て、いじめられていると勘違いしたようだ。

「アリシア違うのよ、カイル様にはいじめられてないわ」

「そうだよアリシア、私は可愛い婚約者が私より、義弟君(・・・)を優先しているのに嫉妬してしまっただけだよ」

「そうだったのですね、カイル様ごめんなさい」

アリシアはシュンとしている。

「いいよ、君たちとも仲良くなりたいしね」

カイルがセシルの方を見ている。

「そうですね、これからよろしくお願いします。カイル様」

セシルがカイルに手を差し出す。

「よろしく、義弟君(・・・)

カイルがセシルの手を握る。


仲良くなった?のかな?


カイルが帰った後、アリシアとセシルが私の部屋にやって来た。


「姉さん、カイル様とはあまり二人きりにならないほうがいいよ」

セシルが真剣な顔で言う。

お互いまだ子供だし、殺される心配はないと思うけど、セシルにもあの恐ろしさが分かったみたい。


「お姉様は私がお守りいたしますわ」

アリシアが私に抱きつく。


こんなに優しいアリシアをカイルとくっつけようとしていたのが申し訳なくなったきた。


でも、何かの拍子でカイルの逆鱗に触れて殺される可能性もある。

私は一体どうしたらいいのだろうか。


その日は、二人とも侍女に伝えてから来たようで、久しぶりに三人で一緒に寝た。



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