19 悪役令嬢と手紙
先日の一件はアルフレッドの耳にも届いたようだが、特にお咎めはなかった…が、アルフレッドのため息の数が日に日に増えている。
「お父様、今日もため息をついていらしてましたね」
私とアリシア、セシルで書庫にいる。
今は12月雪が降ることはないが、それでも少し肌寒い。
カウチソファに三人で身を寄せ合うように座っている。
「確か、王宮に行った日からだったな」
私の左隣に座っているセシルは、読んでいた本に視線を向けたままそう言った。
絶対それが原因じゃん、私が剣の稽古をしているのがバレたのが関係しているのかな?
「はぁ」
私も思わずため息がこぼれる。
「お姉様まで」
アリシアが私に抱きつく。
「ごめんなさい」
私はアリシアの背をポンポンっと軽く叩く。
「パトリシア様!!」
勢いよく扉が開かれた。
慌てた様子のアンナが私のもとへ来た。
「旦那様がお呼びです。すぐに旦那様の書斎へ」
書斎に着いた私は扉を叩く。
「お父様、パトリシアです。」
呼ばれたのは私だけだったが、アリシアとセシルもついてきている。
「入りなさい」
扉を開けるとアルフレッドはソファに座り頭を抱えていた。
アリシアとセシルがいることは何も触れられなかったため、三人でアルフレッドの向かい側に座る。
「はぁ」
アルフレッドはため息をつく。
「お父様、何かご用だったのでは?」
「…呼び出してしまってごめんね、その……はぁ」
何かを言おうとして、またため息をつく。
「あの…」
「……パトリシア、カイル様からこれを」
アルフレッドから手紙を渡された。
勿忘草のドライフラワーの上に紋章のようなマークのシーリングスタンプが押された手紙。
私は封筒を開け、便箋を取り出す。
「…嘘でしょ」
手紙の内容はセシルから、パトリシアへ婚約を申し込むというものだった。
間に合わなかった。どうする、どうしたら良いの?
でも、これからカイルがアリシアに惚れる可能性もあるし。いや、それで邪魔になった私が殺される可能性も
「お姉様大丈夫ですか?」
「姉さん顔色が悪いよ」
便箋を持ったまま震えている私を見て、アリシアとセシルが私を心配している。
「お父様、これって」
私は立ち上がり、テーブルに手をつきアルフレッドに便箋を突きつける。
「…そういうことだよ」
アルフレッドが視線を下に落とす。
「お父様、私婚約なんて」
「「婚約!?」」
アリシアとセシルの声が重なる。
「僕も断ったんだ、でも無理だった」
「姉さんとカイル様が婚約って事ですか?」
「うん」
アルフレッドが頷く。
「お姉様…」
アリシアが小さく囁いた。
その瞬間
「やだやだやだ!!」
突然アルフレッドが叫ぶ。
「お父様!?」
「パトリシアが婚約なんて…嫌だ!!こんなに可愛いパトリシアがお嫁に行くなんて、僕は耐えられない!!」
「…お父様」
私はあまりの衝撃に倒れるようにソファ座る。
小説だと、パトリシアとカイルの婚約の話が出たとき、アルフレッドはパトリシアと距離を置いていた。もし、関係が良好だったら、今みたいになっていたのかな?と考えると切なくなる。
でも、アルフレッドのため息の理由が分かった。
「後日、正式に挨拶に来るみたい。」
アルフレッドは涙目だ。
私も泣きたい、なんて考えていたら、アリシアとセシルが私の手を握っていた。
「お姉様大丈夫です」
「僕に任せて」
二人が何をしようとしているのか分からないが、
とりあえず、カイルとの関係は良好にしておかないと。




