表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

01

ーーシオン・フォン・ティアスリング。

お前を追放する。

「え?……なんで」

ーー僕には、魔法の才能がなかった。


12時間前……。

「緊張してる?シオン」

柔らかい声で、僕の肩に手を置いた。

「うん、でも、ワクワクしてる」

クスッと笑い、彼女は前を向く。

「そう、じゃあ、行きましょうか?」

「はい!母上!」

ゆっくりと部屋の扉を開ける。


僕は今日、10歳の誕生日を迎えた。

そして、この国では、10歳を超えると、魔力測定を行う。


ーー魔法。


それは遠い昔、剣が栄えている時代に、ある男が作り出したと言われている力である。

魔法が当たり前となったこの時代で、剣を握る者は、嘲笑の対象になった。


中に入る。

そこには、大きな球体と、協会の制服に身を包んだ男が立っていた。

「お待ちしてました」

そう男は言うと、深く頭を下げた。


僕は緊張し、母のスカートの裾を握りしめる。

「大丈夫よ、シオン。そんな緊張しないで」

頭をくしゃっと撫でられる。

その感触に、少し緊張がほぐれた。


男は、顔を上げて、口を開いた。

「坊っちゃま、準備ができましたら、この球体にお触れください」

スカートの裾から、手を離す。


僕はゴクリと息を飲み、ゆっくりと球体へと歩み寄る。

手が届く距離。

球体は淡い光を放ち、僕の顔を反射していた。

その顔は、不安を表していた。


「この子の魔力量は、どれくらいかしら」

そんな母の期待の声が聞こえた。

深く息を吸ってから、ゆっくり手を伸ばし、球体に触れる。

球体は、固く、冷たい感触が手を伝う。


ーー何も起きない?

僕がそうつぶやくと、男は焦りだした。

「おかしいですね、本来なら、光を放つんですが」


焦りと不安が、僕の心をかき乱した。

「不良品を持ってきたんじゃないわよね」

母は険しい顔をしながら言い、球体に近づき、手を触れる。


その瞬間、球体は赤い光を放った。

「不良品じゃ、ない?」

母はそっと球体から手を離す。

すると、男がゆっくりと口を開く。


「奥様の魔力量は測定できましたが、坊っちゃまの魔力量は……」

その言葉を聞いた母の顔から血の気が引き、静かに床に座り込む。


「母上?」

僕はそっと、母に近づく。

「来ないで!!」

母から拒絶など、1度もされたことがなかった。

「すぐマーウィンに報告して」

そう言うと、男は急いで部屋を出ていった。


静寂が痛い。

今の現状が理解できず、立ち尽くすことしか出来なかった。

マーウィン。

それは、父の名だった。

父に報告するほど、まずいことが起きたのか?


どくんと、鼓動が跳ね上がる。

魔力、それは、魔法を使う上でかかせないもの。

母のあの反応、あの言葉。

僕は両手を見つめ、青ざめる。


ーー僕には、魔力がなかったのか?

魔力がなければ、当然、魔法は使えない。

魔法主義のこの時代で、魔法が使えないなど、死んだも同然だ。

幼い僕でも、それはすぐにわかった。


母を見つめる。

魔力がないとわかった時、なんと思っただろうか。

僕は、これからどうなるのだろうか。

ーー僕は、母になんと声をかければいいのか。


手で顔を覆い、座り込む母に、ゆっくりと近づく。

「あなたはもう、部屋に戻ってなさい」

冷たい声で、母はそう言った。

その言葉に、僕の胸は張り裂けそうになった。

「……はい、母上」

僕は扉に向かって歩き出した。


部屋を出て、ゆっくり、廊下を歩く。

メイドや使用人たちが忙しそうに駆け回り、僕を見て、ヒソヒソと話す者もいた。


ーーガチャ。

自分の部屋の扉を開け、ベッドに座り込んだ。

気づけば、涙が溢れていた。

これから、どうなるかわからない。

その不安が、僕の胸を強く締め付けた。


時間が過ぎ、日が暮れた。

あれから誰も、部屋に来ていない。

僕は、自分でご飯やお風呂を済ませ、ベッドに入ろうとした。

その時。


ーーコンコン

扉を叩く音に、びくっと体が跳ねる。

急いでベッドから降り、扉へとかけ出した。

扉を開けると、そこには父の側近の男が立っていた。


「マーウィン様のお部屋までお連れします」

その一言に、僕の心臓は跳ねる。

父の呼び出し。

それはおそらく、僕の今後の話だろう。

先へと歩く男の後ろを、追いかける。


「お連れしました」

その一言で、扉が開かれる。

扉が開き、中の重たい空気が、僕を襲う。

部屋の中心には父が座っていて、その隣には母と兄妹たちがが立っていた。


「入れ」

たった一言。

それなのに、僕の足は震え出した。

僕は、ゆっくりと、父の目の前まで歩みを進める。

見ていた紙を置き、こちらに視線を向ける。


「お前に、魔力がないと聞いた」

その言葉に、僕の鼓動は大きく跳ねる。

「……はい 」

力なく、呟いた。

これしか、言葉が出なかった。

父は、何も言わなかった。


クスクスと笑いながら、長男が口を開く。

「やっぱり、こいつは無能なんですよ、父上」


長男のアレクサンダー。

彼は、天才と呼ばれ、僅か12歳で、成人男性以上の魔力量を持ち、極大魔法を習得した。

「アレク、喋るなといっただろう」

そう言われると、アレクは顔をしかめ、手を組んで、静かになる。


父は一瞬、目を閉じて、ゆっくりと口を開く。

「シオン、お前の処遇が決まった」

その言葉に、僕の心臓は、大きく跳ね上がる。

僕は、これからどんな扱いを受けるのか。

だが、どんな扱いを受けても、家族と一緒なら…。


ーーシオン・フォン・ティアスリング。

お前を追放する。

「え?……なんで」

血の気が引いていく。

僕は、理解が追いつかなかった。


どんな扱いだろうと、家族と一緒ならいいと思った。しかし、追放……?

「魔法が使えないなら、お前は用済みだ」

その一言は、僕の心を粉々に砕いた。

頭が真っ白になり、足が震え、立っているのもやっとだった。


「そこまで言わなくても!」

姉のサナが、口を開く。

サナは、ひとつ上の姉で、魔法の才能もあった。明るい性格で、いつも、僕と遊んでくれていた。


サナの叫びに、僕はハッと我に返る。

「子供のお前が、口を出すな」

父の荒らげた声に、サナはびくっとなり、下を向いて、唇を噛む。

サナの姿を見て、僕は手に力が入る。


ーーもし僕に、魔力があればサナはあんな顔をせずにすんだのに。

自分の無力さに、心が痛む。

「大丈夫だよ、サナ」

力なく微笑み、サナを見つめる。

顔を上げ、僕の顔を見つめ返すその瞳には、涙が浮かんでいた。

サナが話すのを遮るように、父が口を開く。


「お前には、今から馬車に乗り、森へと向かえ。」

淡々と、父はそう言った。

昔から厳しい人だった。

しかし、ここまで冷たかっただろうか。


「……はい」

小さく、悲しい声でつぶやく。

幼い体では、今日の出来事を抱えるのには、既に限界を超えていた。


ゆっくりと、扉の方へ歩き出す。

その足取りは、朝の時より、何倍も重かった。

部屋を出ようとした時、僕は振り返り、頭を下げる。

顔をあげると、サナが胸の前で手を握り、今にも泣きそうな顔をしていた。

廊下を歩き、玄関へ向かう。


ーーごめんなさい。


ずっと堪えてきた涙が、一気に溢れ出した。

涙を拭っても、止まらなかった。

涙を流した時、母がいつも、慰めてくれた。

しかし、そんな母は、もうここにはいない。

乱暴に涙を拭い、玄関を出て、馬車に乗り込む。


「それでは、森へと向かいます」

馬車が動き出し、小さな石を踏む度、小さく体が跳ねた。


ーーさようなら。


遠ざかる屋敷を見つめ、僕は小さくつぶやいた。

新連載です!!

まずはあっちを完結させようと思ったんですが、手が止まりませんでした!僕森好きすぎじゃない笑!?

今回はガチガチの異世界モノです。

2話は今夜投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ