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会いに行きたい

作者: 棘月

ただの絵、だということは私が1番よく理解しているつもりだ。スマホの画面に映るその人、というか1枚の絵は、誰かが作り上げた空想のキャラクターでしかない。それなのに、私はこの「レイ」と名付けられた絵に恋をしている。

どうしてただの絵が好きなのだろうか。私にだってよく分かってない。だから周りから

「どうしてただの絵を好きになるの?」

「いい歳なんだから現実見なよ」

と言われてもなにも返せない。でも、私はレイくんを見る度にそのかっこよさにドキドキして、実際には会えないことに苦しさを覚える。どこかで聞いたことがある恋は苦しいものって、多分こういうことなんだと思う。

レイくんは、アニメのキャラクターである。だから映像を流せば動くところだって見れる。これは静止画とはまた違うかっこよさがある。サラサラな髪の毛、綺麗な指先、クシャっと笑う顔。レイくんのこと考えてたら、アニメ、見返したくなってきたかも。

私は早速スマホを横にしてレイくんが登場するアニメを見ようとした。けど、失敗した。

いつも使っている動画配信サイトからそのアニメが消えていた。正確にいえば、サービスが停止された。焦って調べたから詳しい理由は知らないけれど、レイくんが見られないという事実だけは確かだ。

また、苦しさを覚えた。レイくん。私のレイくん。会いたいのに、会えない。瞬きを繰り返して、涙を堪えた。親に見つかったら、きっと

「なんでこんなことで泣いているんだ」

って怒られるに違いない。

自分の部屋にいるレイくんのアクリルスタンドを見てみれば、いつもの爽やかな表情を並べてポーズを取っている彼がいた。ああ、かっこいい。

いつの間にか、動くレイくんを見られないことに対する悲しさは消えていた。やっぱりレイくんは凄い。なんだか、私は急に全てがどうでもよくなる心地がした。私にはレイくんがいる。それだけで十分だと思った。

だから、現実にはもう、用はない。

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