第9話 大団円
城の外まで出て。
「……。」
リズにかける言葉がない。
「……。」
リズもまた言葉をなくしている。
「リズさん……、あのね……。」
「なぁに、ティトちゃん。」
「マグリーさん、この世界の人じゃないんだって……。」
「……え?」
「一つの世界に1人しか召喚士はいないんだって……。
だからマグリーさんは……、イレギュラーとして
千何百年もこの世界で生きていたんだって……。」
「そうなの!?」
「私のお陰でやっと死ねる……って。
ありがとうって言ってた……。
あと言伝を預かってるんだけど……。」
「マグリーが? なぁに?」
「……うー……。」
「?」
「お、怒らないでね……?」
「えぇ。」
「泣き虫バカリズお尻ぺんぺーん、だって……。」
「あんのバカー!」
「ぷっ、あははははっ!」
「レイルも笑ってんじゃないわよ!」
「こりゃある意味裏切られたかもなぁ。」
「上手いこと言ったつもり?
まったく男ってのは……。」
「リズ、俺を殺すか?」
「へ? なんで?」
「お前の敵の敵だぞ。」
「いいやもう、下らない。」
「そうか。」
「怪我が治らないくせに私のこと庇ってさ。
ティトちゃんを守りなさいよ。
バカじゃないの?」
「治ると思っていたんだ。」
「気づいてからも私が動きやすいように位置取りしてたじゃない。
……結構、場数を踏んでいたのね。
貶すようなこと言って悪かったわ。」
「いや、いい。
元気がなさそうだったから何かできることないかとは思ったんだがな。」
「……何かしてくれるの?」
「すまんが俺では思いつかん。」
「なんでも?」
「事と次第に……、あぁもう何でもいい。」
「……ふーん。」
リズから足払いを受けて転ぶレイル。
「うお!? 何をする!?」
「やーめやめ。
ガラじゃないわ。」
尻もちをついているレイルにリズが目線を合わせて屈む。
「……正式に私、エリザベス・ゼインがあなたに求婚するわ。」
「……は?」
「素性を明らかにしたわ。
何でもするのよね?」
「おま……、ゼイン王国の王女だったのかよ!?」
「あ、嬉しーい。
バラしても付き合い方を変えないのね。」
「あ、いや。えぇ?」
「あははは、感情がバグってるぅ。
おもしろーい。」
「王女って、家出したって聞いてたが……?」
「私はもっと広い視野で世界を旅したいの。
狭い領地で王家を継げと言われても困るわ。」
「……城に帰るのか?」
「あっははは、まっさかぁ。」
リズが立ち上がる。
「あれ……? リズさん、私の義理のお姉さんになるの……?」
「ん! そうね!
ティトちゃんみたいに可愛い妹が出来て私は嬉しいわよ。」
「壮大な嘘ということはないか?
エリザベス・ゼインという王女は確かにいる。
だが、お前という証拠が……。」
「はい、チョーカー。」
水菫青石がはめ込まれたチョーカーに下がった紋章が見えるように
少しリズが胸の襟周りを下げる。
「……ゼイン王国の紋章、だな。」
「あー、でもこれを奪ったとしたら信じられないわねぇ。
いい機会か、一回お城に帰ろうかな。
マスケット銃壊しちゃったし。
……顔に出てる?」
ぶんぶん振り回すマスケット銃にもゼイン王国の紋章が刻まれている。
気づかなかったな。
顔にも出てないし、嘘もついてないんだろう。
と言っても、もう疑わないんだが……。
「リズ。」
「ん?」
「俺は穢れの血筋だぞ。」
「知ってる。
あ、求婚拒否?」
「違う。
お前を穢してしまう。」
「だから勘当されに城に帰るのよ。」
「……いいのか? 俺で。」
「あなたさぁ、鈍すぎない!?
求婚するって言ったら求婚なの!
何もチューリップの根元の話してるんじゃないんだからさ?
キスでもしないと信じられない?」
「……お前らしくない。」
「でしょ?
あなたとこうしてバカやってるのが心地いいから
ずっとそうしていたくなったの。
付き合ってよ、ティトちゃんと一緒にさ。」
「……おう。」
3人並んで城への歩みを進める。
「そのマスケット銃、何を撃って壊したんだ?」
「……怒らない?」
「怒らんが。」
「劣化ウラン弾。」
「おまっ……!」
「怒らないって言ったでしょ!」
「どっちの意味だ?
お前、死ぬ気だったろう。」
「いいえ?
生きたいから撃った。」
「案外、リタルとダンテが力を貸してくれたのかもな。」
「私もそう思うわ。
……弾丸製作者からは、”撃てない”と明確に言われていたからね。」
「うん……?」
「純粋なティトちゃんは知らなくていいのよー。」
「しかし神をも殺すとは逆相召喚は恐ろしいな。」
「そうねぇ。」
「ティトはいつ、逆相召喚に気づいたんだ?」
「……ラドゥーンに教えてもらってて……。」
「あー、ラドゥーンか。
じゃあ仕方ないかもなぁ……。」
「お陰で助かったんだし?」
「確かにな。」
山を越え、ゼイン王国の城に辿り着いた。
中に入るとまぁ大層なお出迎え。
「エリザベス様! お帰りに……!」
「ならないの。
銃を直しに来ただけよ。」
「……そちらのお二人は?」
「旦那様と義理の妹よ。」
「は?」
「異論は認めないわ。
嫌なら私を殺してからにしなさい。」
「出来ません!」
話半分でリズが手際よく銃をばらしていく。
「銃身……、完全に割れてるわね。
よく持ったと思うわ。
あとはガワがちょっと割れただけか。
レイル、ちょっと銃身を取ってくれない?」
「どれだよ。」
見回すが大量のパーツがあってどれか分からない。
「その辺にかかってなかったっけ。
あ、ティトちゃんの隣に置いてあるそれ。」
「これ……?」
「ありがとー。」
「で? ガワは?」
「飾りだからそのままでいいわ。
アストライアを倒した証として、ね。」
「アストライア様を倒されたのですか!?」
「人に仇を為す神なんていらないわよ。
邪神でしかないわ。」
「は、はぁ……。」
「なーおった。
まぁ、あとは残党狩りしかないからねぇ。
当然付き合ってくれるわよね、レイル?」
「あぁ、構わん。」
「行きましょ。
じゃあね、もう帰って来ないから。」
「王様になんと申し上げれば……!」
「面倒だったら死んだとでも言っといてくれていいから。」
「そんな……!」
そんなこんなで城を飛び出したリズ。
おてんばな王女に付き合って旅路を共にする斧術士と召喚士。
生涯レイルとリズの間には子供は授からなかったが、
それはまた別のお話。
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