第7話 代償
二階に進むと、偉そうな悪魔が椅子に座っていた。
「ティト!」
「に、兄さん……!
リズさん……!」
ティトは牢に入れられるわけでもなく、隣で座っていた。
確かに重畳されているようだ。
「来ると思っていたよ、レイル。」
「その声、デーモンか。」
「マグリーにつけていた呪いは順調に働いているようだが……、
どういうことかお前の呪いは解けてしまったようだな。」
「苦労したよ。
俺にも呪いが解けた理屈はサッパリだがな。」
「……レイル、ひょっとして。」
「なんだリズ。」
「ティトちゃんが何かして外れたって記憶はない?」
「そういや、いつだったかティトが召喚に失敗したことがあったな。
その時からデーモンの声がしなくなったなとは思ったんだが。」
「あ……。」
「ティトちゃん、知ってるわね?」
「……うぅ。」
「ティト?」
「言えないなら俺が言ってやろうか。
召喚に失敗したんじゃねぇ。
逆相召喚をしたんだ。
つまりは召喚の逆をしてデーモンを送り返したんだ。」
「マグリー、そうか。
……ティトにはいつからかそんなに世話になっていたんだな。」
「それだけじゃねぇ。」
「うん?」
「召喚もそうだが、発動するたびに命を削る。
逆相召喚は召喚の比じゃないほど命の蝋が溶ける。
何回召喚をして、何回逆相召喚をしたんだ?
回数如何によっては、その若さでもう寿命が残ってないかもしれないぞ。」
「なんだと!?」
「ティトちゃん……!」
「わ、私……。」
「そういうことか。
どおりで呪いが返ってきたと思ったら、逆相召喚。
もう一度呪われるがいいわ!」
デーモンがレイルに向かって手をかざす。
「クッ!」
突風が3人に向かって吹く。
「くそっ、また呪われ……!
うん? デーモンの声がしないぞ?」
「なんだ? 何が起きた?」
殺気がデーモンの方からする。
だが出所はデーモンではない。
「ティト!?」
「デーモン……!
兄さん達に手を出さないって約束したから私、大人しくしてたんだよ……!
噓つきは許さない……!」
ドクン、と心臓が揺れそうなほどの鼓動が部屋いっぱいに響き渡る。
「な、なんだこの気は……!」
「レイル! ティトちゃんを止めて!
この空間一帯が逆相召喚の対象になってる!」
「ティト・ランシェ……!
少女でありながらここまでの召喚をするのか……!?
水菫青石なんて玩具じゃねぇか!
こんな規模の逆相召喚。
普通の人間なら水になって崩れ落ちるほどのエネルギーを使ってるんだぞ……!
これが、伝説の召喚士……!」
「ティト! やめるんだ!
か、身体が重い……!
全身がスライムの中にいるようだ……!」
「ティ、ティト!
これは……、違……!」
「五月蠅い……!」
再び、空間が鼓動する。
「ぎゃああああ……!」
デーモンが切れた空間に吸い込まれ、消滅した。
どさっ。
ティトが倒れる。
その瞬間、止めていた呼吸が再開するように身体が軽くなる。
「ティト!」
「ティトちゃん!」
レイルがティトを抱き上げる。
「目を開けろティト!
クッ、何という失態だ!」
「見せろレイル。」
「マグリー?」
ティトに手をかざすマグリー。
するとマグリーの顔から溢れるように汗が滴り落ちる。
「……マ、マジかよ。」
「どうした。」
「もう30分も寿命が残ってねぇ。」
「30分!?」
「マグリー!
この期に及んで嫌がらせを……!」
「バカリズ!
こんな時に嫌がらせなんかするか!
俺だからわかるんだよ!」
「何が……!」
「やはりデーモンでは役不足でしたね……。」
崩れた天から声がする。
声のする方へ振り向くと、さらなる絶望が待ち受けていた。
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