第6話 裏切り者
しばらく歩みを進めるが、魔物はおろか物音ひとつしない。
「なんだ……?
なんでこんなに静かなんだ……?」
「ティトちゃんが来たからよ。」
「リズ? 何か知っているのか?」
「召喚の原理って知ってる?」
「魔物を使役するんだろう?」
「そう、そこ。
使役されるということは、魔物は格下。
ティトちゃんは絶対的な立場にいることになるの。」
「ほう。」
「あの腕、何かを探しているようだった。
レイルを斬り、私を跳ね飛ばした。
そう、ティトちゃんを探してたのよ。」
「いることは、分かったんだな。」
「召喚士なんて2人といないからね。」
「ティトに危険は?」
「ないない。
むしろ逆。
重畳されてると思うわ。
隣に置いて置くだけで全魔物がひれ伏すんだから。」
「……そうか。
なんかすまんな。」
「? なにかした?」
「ティトが無事なら、なんだ。
俺が言うのも何だが、
無理に開けなくても時間をかけて何か方法を探せば……。」
「ティトちゃんを取られたから、私が嫌なの。」
「そ、そうか。」
奥に牢屋が見える。
「牢屋なんて概念が魔物にもあるんだな。」
「そうね。」
「誰かいるのか!?」
「……誰か入ってるようだが?」
「うん? 聞き覚えがある声のような……。」
「ここだ、出してくれ!」
声のする方向に歩み寄ると、
ぼさぼさの髪の男が牢にしがみついていた。
「人間……?」
その男を見るや否や、リズの表情が怒りに変わる。
「マグリー!」
「……その声、リズか?」
「ハン! 裏切り者らしい末路じゃない!
2年経って少しは頭でも冷えた?」
「違う、俺は裏切ったんじゃない。
……信じてはもらえないだろうが、
デーモンに憑りつかれているんだ。」
「どうだか!」
「……そうか、お前も被害者だったのだな。」
「レイル! なんで信じるの!?」
「……俺の怪我を見ただろう。」
「そういやあんなに派手に斬られてたのにサッパリなかったわね。」
「俺は過去、デーモンに憑かれていたことがあってな。」
「え?」
「生まれ持ちだったんだ。
忌み子として捨てられたのはそういう理由があってな。
追い出すのに随分と時間を要した。
そのせいかは知らんが、俺は死ななくなった。」
「死ななくなった?
怪我が治るのとは違うの?」
「文字通り死なないんだ。
飢えも渇きもどんなにこびり付いても、死なない。
腕を斬られ、心臓を突かれ、身体を半分にされようとも、死なない。
俺にはわかる。
このマグリーとやらは間違いなくデーモンの配下にいる。
2年間も飲まず食わずで生きているほうがおかしいと思わないか。
魔物がそんな世話を焼くとは思えん。」
「そ、そんな……!」
「謝って許されることじゃないのは分かっている、リズ。
他の仲間2人にも申し訳なかった……!」
「……。」
「そういやあんなに騒がしかったのに急に静かになったな……。
何かあったのか?
お前たちが来ようものならこんなはずじゃないんだが。」
「ティト・ランシェという名前に聞き覚えはない?」
「あぁ、リズ。
嫌でも耳に入ってくるよ。
ここのやつらはこぞってティトが欲しい、
ティト・ランシェがいればって常日頃から言ってるからな。
……、おい。
まさかとは思うが。」
「俺の妹の召喚士であるティトがここに引き込まれたんでな。」
「マジかよ!
じゃ、じゃあお前は同姓同名の他人じゃなくて
あのレイル・ランシェか!?」
「なんだ、俺の名まで知っているのか?」
すると、マグリーの右腕が伸びる。
しかし牢に阻まれてしまった。
「クッ!」
「マグリー!?」
「……ほう、デーモンは余程俺を殺したいと見える。」
「本当に憑りつかれているのね……。」
「……だ、大丈夫だ。
デーモンは俺が抑える。
ティトのいる場所まで案内してくれ。
きっと、役に立って見せる。」
「リズ、いいな?」
「……次に裏切ったら、絶対にあなたを殺す。」
「それでいい。」
牢獄を開放し、マグリーを連れ、階上に上ることとした3人。
果たしてどうなるか……。
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