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第4話 次元の狭間

野営中。

ティトは寝ている。


「リズ、どこまで行くんだ。」


「一つ山を越えなきゃいけないからね。

あなたも休んだら?」


「細身の割には体力があるな……。

リズこそ休め。

確かに力しか能のない俺だが、ここを守ることはできる。」


「頼もしいこと……。」


「そういや次元の狭間とか言ってたな。」


「えぇ。

最近モンスターが増えたでしょう?」


「そうだな。

明らかにダンジョンから漏れたモンスターではない。」


「その次元の狭間から出てきたやつらでね。

小悪魔が漏れてる程度ならまだ救いはあるんだけど。

上級神族がこちらの世界を掌握しようとしているのが問題。

小悪魔なんて神族にしてみたら使い魔だからね。」


「詳しいな。」


「調べたからね。」


「そうではない。」


「うん?」


「見てきた口ぶりだ。

行くのは初めてではないな?」


「なんでそう思うの?」


「悪魔が漏れていれば、上級魔族が出ると思うのが普通だ。

しかしお前は”上級神族”、と言ったな?

何かがあって、居た場所を外さざるを得ない状況になったんだろう。」


「……ねぇ、私ってそんなにわかりやすい?」


「顔には出てなかったんだがな、当たりか?」


「そうよ、2年前ね。

その上級神族から漏れ出るモンスターを根絶するため、

アストライアと対峙するために4人で向かったの。

当時、次元の狭間は小さくてね。」


「ん? こじ開けたのか?」


「そ。この石でね。」


「放っておけば来なかった問題ではないか?」


「あの時点でアストライアはね。

ただ、向こうから長い年月をかければ綻び次第で大きく開いちゃうのよ。

そもそもこの石を扱える人は限られてる。

昔の人はその狭間を小さくすることしかできなかったのよね。」


「そうか。」


「……。」


「……。」


「……あれ?

サッパリしてるわね。

あなたの性格上、余計なことをしてとか突っかかってくると思ったんだけど。」


「……仲間を亡くした奴を責められるか。

悪戯に世界を滅ぼそうとしたわけではあるまい。

むしろその逆だろう。」


「あ、ヤサシー。」


「やかましい。」


「……いいや、あなたには隠し事はしないことにする。」


「なんだ、どうした。」


「ティトちゃん、召喚の力があるでしょう?」


「そうだな。」


「次元の狭間を閉じる方法は二つあってね。」


「……おい、まさか。」


「逆相召喚って、聞いたことある?」


「冗談ではない!」


「こら、ティトちゃんが起きちゃうでしょうが。」


「だ、だが……!」


「私だって可愛いティトちゃんにそんなことはさせられないし、させない。

ティトちゃんは知らないし、知ってたってその方法は難しいの。

言葉上単純に召喚の逆って言ったって実際にするなんて困難よ。

だから、この石を譲ってって言ったんだから。」


「ティトの召喚を見たならティトにやらせればいいだろう?

普通はそう思う。」


「まぁ、そうね。

あの狭間はこの世界から向こう側に向かって開いてる。

意味はわかる?

開いてる向こう側からじゃないと狭間は閉じられないの。

でもさ、ティトちゃん可愛いじゃない?

そんなことやらせられないのよ。」


「やけにティトに入れ込んでるな。」


「お兄さんだからそう思わないのかしら。

あの子、可愛さで言うなら相当な逸材なんだけど。」


「同じ女ならお前も同じ逸材だろうが。」


「あれ? 私口説かれちゃってる感じ?」


「やかましい。」


「あはは。

まぁ、口説くなら私はやめときなさい。

人殺しだからね。」


「人殺しだと?」


「……さっきあなたも言ったでしょ。

殺される仲間を見捨てて逃げてきたんだからね。」


「……。」


「2人は目の前で殺された。

遺体も回収できないまま、私は逃げた。」


「ん? 4人ではなかったか?」


「……言い訳くさいんだよなぁ。」


「言えよ。」


「アストライアは強大だった。

だから、次元の狭間の向こうから私たちは逃げようとした。

でも閉じる狭間をこじ開けた裏切り者がいるのよ。」


「何故に?」


「理由はわかんない。

ただ、こじ開けられた狭間からアストライアの手が伸びてね。

裏切り者はもういなかった。

だから残った私たちは必死で狭間を閉じた。

……どうして2年ぽっちでまた狭間が開いたのかは謎だけど。」


「……つらかったな。」


「やめてよ。

慰めなんていらない。」


「俺にそんな器用な真似ができると思うか?

つらいをつらいと言って何が悪い。

リズは必死に狭間を閉じた。

その時の後の人間、世界を救ったんだ。」


「逃げたのよ、何もしてない。」


「見ただろう、アストライアを。

もう一度向かおうという気概が普通ではない。

世界などどうでもいいではないか。

逃げてしまえばいい。」


「……裏切り者を残しておけない。

確証はないんだけど、狭間が開いたのはあいつのせいかもしれない。」


「その石はいくつかあるのか?」


「数は減ったけどいくつかはね。

一応には希少鉱石だからさ。」


「そうか。」


「……あなたってさ。」


「なんだ。」


「私の素性は聞かないの?

興味ないだけ?」


「気が向いた時でいい。

話さないということは何かがあるのだろう。

俺としてはティトを守ってくれる。

それだけで十分だ。」


「やっぱティトちゃん、守りたくなっちゃうわよねぇ。」


「俺にとっては唯一の家族だからな。」


「そうよねぇ。」


「そういうリズも俺の素性を聞かないんだな。」


「ダンジョン育ちって言ってたじゃない、違うの?」


「違わないが。」


「実は高貴なお家柄だったりして!」


「どこぞの馬の骨だ。」


「自分でそれ言っちゃう?」


「大したものでもない。」


「ふぅん。」


「さっき、狭間は向こう側から開いている。

向こう側からではないと閉じられない、そう言ったな。」


「えぇ。」


「リズが向こうに残る気か?」


「ま、早い話そうね。

2人も死なせておいて自分だけ生きたいってのもねー。

つまんないこと気にしてんじゃないわよ。

レイルはティトちゃんを守ることを考えてればいいの。」


「……。」


「さ、私は寝ておくわ。

レイルに警戒は任せるから。」


「おう、任せろ。」


「寝込みを襲ったりして。」


「神に誓ってないと言おう。」


「その神はアストライアなんだけど?」


「む。確かに、誓う相手を間違っているな。」


「ふふ、冗談よ。

でもあなた、寝ない気?」


「丈夫だけが取り柄なんでな。」


「どこかで起きたら交代するわ。」


「無理せずにな。」


「えぇ。」


リズがティトの隣で横になる。


遠くでフクロウが鳴いている。

斧を肩にかけながら、焚火に薪を投げる。

パチパチと木が爆ぜる音がする。


逆相召喚か……。

そんなものがあるとはな。

ティトにそんなことを間違ってもさせないように

俺がしっかりせねば。

Copyright(C)2025-大餅 おしるこ

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