第2話 レイル・ランシェ
外。
外に出て休みながら歩いていたのが悪かったのか、
深夜になってしまった。
「……どこに行こう。」
兄さんでも探してみようか。
一人では何もできる気がしない。
くん、くん。
慣れない外の匂いのせいか、色々感じられる。
向こうに兄さんの匂いがする。
行ってみよう。
しばらく歩いて。
「……はっ!……はっ!」
大ぶりの斧を振っている兄さんを見つけた。
声をかけるのも邪魔かな。
少し離れたところに座って眺めることにしよう。
あ。
スライムだ。
あれは召喚したスライムじゃないから悪意があるんだよね。
兄さんに斬られた。
二つに増えた。
兄さんが困ってる。
対策は知ってるんだけど、手を出していいのかな。
「ん? ティト!?
何でここにいるんだ!?」
ばれた。
腰を上げて兄、レイルの方向に向かう。
「外に来てたのか?」
スライムに殴られながら兄さんが声をかけてくる。
普通の人なら死んじゃうんだけどな……。
「ラドゥーンが外を見て来いって……。」
「そうか。
あぁもうめんどくさいやつだな!」
スライムを乱暴に叩きつけるレイル。
しかしスライムはぶよぶよしてくっついて一つに戻る。
どこかの世界なら雑魚でもこの世界では割と脅威なんだよね。
「兄さん、燃やそう……?」
「どうやってだ?」
「私がレッドドラゴンを召喚するから……。」
「そんな無茶をしてどうする。」
ザンザンレイルがスライムを切り刻む。
……動かなくなった。
死んじゃったっぽい。
「スライムくらい俺でも倒せるぞ。」
「そっか……。」
「ティトはこれから何かする予定でもあるのか?」
「ない……。」
「ない?
外に出てどうするつもりだったんだ?」
「兄さんを探そうかなって……。」
「そうか。
ティトにはピンと来ないかもしれないが、
いま世界は崩壊の危機に瀕している。
それを変えるためのアイテムを探して俺はここに来たんだ。」
「アイテム……?」
「何でもここの小国、ゼイン王国にあると聞いたんでな。」
「ここ、ゼイン王国なんだ……。」
「知ってるのか?」
「ダンジョンで聞いたことが少し……。」
「ずっとダンジョンにいたのか?」
「うん……。」
「育ててもらった恩はあるんだけどな。
どうも湿っぽいのが性に合わなくてな。」
「兄さんはそれでいいと思う……。」
「そうかもな。
いいところにティトも来たもんだ。
ちょうどそこに宝箱が埋まっているだろう?」
「なんか、見えるね……。」
「あの中に世界を救うアイテムがあれば……!」
「あんな中にあるの……?」
宝箱に近づいた瞬間、小悪魔が飛び出す。
「これには触らせないぜ!」
「やかましい。」
一刀両断。
小悪魔が真っ二つになった。
「兄さん、容赦ないね……。」
「世界の危機にこんな小悪党に構ってられるか。」
すると真っ二つになった悪魔がくっついて元に戻ったではないか!
「こんなんじゃ俺は倒せないぜ!」
「あぁもう!
こんなことをしている場合ではないというのに!
面倒なスキルを持っているやつだな!」
困ったレイルをよそに、両手を上げる私。
「ティト?」
「大丈夫、無理しないから……。」
目の前に大きなラドゥーンが現れる。
「ほー。
こんな小悪党に私が呼ばれるとはなぁ。」
「ぎゃーっ!」
「こ、このラドゥーンは俺たちの親の……!」
「聞いたら来てくれるって話だったから……、
単純召喚じゃなくて、移送召喚……。」
無数の牙で烈斬される小悪魔。
「……久しいな、レイル。」
「ありがとう、ラドゥーン。」
「たまには帰ってこい。」
「……そうする。」
「ふふ。」
再び移送召喚が行われ、ラドゥーンは帰っていった。
「まさかラドゥーンを呼べるとは。」
「ちょっと大きかったね……。」
「身体への負担はどうだ?」
「そんなにかな……?
ないものをここに召喚するわけじゃないから……。」
「そうか。
……では、ティトにはありがたく。
この宝箱を開けさせてもらうぞ。」
「うん。」
レイルが宝箱に手をかけたとき、銃声が響いた。
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