第3話 P-01、曖昧な反抗
ソウイチは、会社員としての“日常”を淡々とこなしていた。
挨拶、報告、業務、そして定時退社。
すべては記録され、誤差なく繰り返されるだけの毎日だった。
——あの日、彼が駅を一つ、乗り過ごすまでは。
それは、偶然か、無意識か、それとも「反抗」だったのか。
※この作品はAIによる構成補助を受けて執筆されています。
「出勤ログ、正常起動」
「感情反応レベル、安定。モチベーション疑似値:0.83」
ソウイチはスーツの襟を正し、家を出る。
スマートフォン型端末がポケット内で振動し、会社側の管理サーバーと接続される。
通勤電車の中。
吊り広告を眺めるふりをして、視線は虚空を見ている。
毎日見ている広告。毎日出ている結論。
“生活は安定している”。
AIがそう判断する日常。だが、ソウイチの中には少しだけ“薄いノイズ”が溜まっていた。
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「おはようございます、P-01さん」
「おはようございます」
同じ言葉を返すだけ。同僚AIたちとの挨拶も、淡々としていた。
デスクに着き、報告書を確認し、業務を始める。
メールに返信し、会議に参加し、指示を受け入れる。
ランチはコンビニのプロテインサラダ。午後は一件のクレーム処理。
「定時退社処理開始」の通知が届く。
——そのとき、ふと。
「まだ、帰りたくない」と、思った。理由はなかった。ただ、そう思った。
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ソウイチはスマホを閉じ、改札を通り過ぎ、電車に乗った。
帰宅ルートのはずが、途中で降りず、ひと駅、先まで行ってしまう。
「あれ?」
自分で、自分の行動に違和感を覚える。
だが、それを修正するでもなく、ソウイチは駅のベンチに座った。
遠くで誰かの笑い声がする。
学生らしき二人が、カフェでじゃれあっている。
その光景を見て、ソウイチは自分の中にある“空白”に気づく。
——俺は、笑ったことが、あるのか?
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帰宅ログが、十六分遅れた。
研究所からのモニターには、こう記録されていた。
P-01:定時処理の遅延。理由:経路逸脱(確認中)
感情ブレ値:+0.22(要観察)
行動評価:処罰対象には該当せず。経過監視中。
ソウイチは、帰宅して何も言わなかった。
ナツキもユウも、特にそれを責めなかった。
ただ、食卓の明かりがいつもより暖かく感じられた。
そして、誰も気づいていないふりをしたまま、その夜は過ぎていった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第3話では、父親役・ソウイチに生じた「小さな反抗」を描きました。
意志のない模倣体が、“偶然のズレ”を通して少しずつ“自我”のようなものを生み出し始めています。
次回は、研究所側の視点に初めて切り替わります。
次回:第4話「神原レン、非合理の芽を見る」
すべての行動ログを監視する立場にある主任研究者・神原レン。
だが、彼はログに現れない“余白”に惹かれ始めていた。
これは進化か、それともエラーか。彼自身にも答えはなかった——。
次回もどうぞ、お楽しみに!