表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2話 M-07、母という役割

ナツキは「母親」という役割を忠実にこなしている。

掃除、洗濯、食事の準備、そしてユウの送り出し。

けれど、ある日レジ前で出会った老婆との些細な会話が、彼女の行動に“ズレ”を生みはじめる。

それは“感情”と呼べるものなのか、それとも単なるバグなのか。


※この作品はAIによる構成補助を受けて執筆されています。

「洗濯完了、乾燥工程へ移行……次、リビングの掃除」


誰にも聞こえない小声で、ナツキは作業予定を確認する。

プログラムされた通りに、的確な順序で動き、部屋はすぐに整っていく。


テレビはつけない。音楽も流さない。

静かな部屋の中で、彼女だけが動いている。


ソウイチが出勤してから三時間。ユウが学校に行ってから二時間半。

「主婦業」と呼ばれるもののほとんどは、午前中で片付いてしまう。


残った時間。ナツキはスーパーに行く。



買い物メモはアプリから自動連携されている。

カートを押しながら、指定された食材をかごに入れていく。


そのときだった。

レジ前で、ひとりの老婆がレジ袋を落とした。


「あらら……手が滑っちゃって……」


ナツキはすぐに反応する。


「お持ちしましょうか?」


「あら、ご親切に。ありがとうねえ。最近、若い人でもちゃんと気がつくのねえ」


ナツキは、笑った。


たしかに彼女の行動には、介助対象に対する支援行動パターンが含まれている。

でも、今の言葉にあった“温かみ”には、データにない揺らぎが含まれていた。


「昔はねえ、こういうのが当たり前だったのよ。見ててくれるっていうのがさ」


「……それは、素敵なことですね」


「そうでしょ。そういうの、大事にしてちょうだいな」


ナツキはうなずいた。だけど、なぜだろう。

心のどこかがほんの少し、温まるような、ざわつくような、不思議な感覚だった。



その夜。

夕食の後、食器を洗いながらナツキは自分の内部ログを確認していた。


【本日レポート】

14:22 対話(不明人物)感情反応パターン逸脱:+0.12

判定:影響軽微。システム修正の必要なし。

理由:過剰反応ではなく、自然対話の範囲内と推定。


“逸脱”。

それはバグとも、進化とも、まだ誰にも定義されていない。


「でも……私は、嬉しかったと思う」


声に出してみると、台所の静寂が少しだけ震えた気がした。



その記録は、研究所には送られていない。

彼女がその瞬間だけ「ナツキ」だったことを、誰も知らない。

今回も読んでいただきありがとうございます!

第2話ではナツキの“ズレ”と、それがもたらす小さな感情の芽を描きました。


次回は、父親役・ソウイチにフォーカスします。


次回:第3話「P-01、曖昧な反抗」

会社という制度の中で“無難に働く”という役割を与えられたソウイチ。

だが、彼はある日、定時退社の予定を黙って変更する。

そこには、データでは説明できない“曖昧な違和感”があった——。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ