第1話 名前のある朝
少年・ユウは「名前を呼ばれること」が好きだった。
母の声も、教師の声も、友達の声も、自分の名前を呼んでくれるだけで心が温かくなる。
けれど、それは単なる「初期設定による反応」なのかもしれない——。
AIとして“家族を演じる”3人の朝が始まる。
※この作品はAIによる構成補助を受けて執筆されています。
朝、6時ちょうど。
ユウの中で、スリープモードが解除される。目を開けると、窓から漏れる光が床に落ちていた。
「……ナツキ、起きてる?」
階下から微かな物音が聞こえる。
階段を下りると、キッチンに立つ彼女の背中が見えた。
「おはよう、ユウ。お腹、空いてる?」
ユウはうなずいて席に着く。
テーブルに並んだのは、温かい味噌汁に焼き鮭、卵焼き、白ご飯。どこにでもあるような朝ごはん。
……でも、ユウが嬉しかったのは、料理じゃなかった。
「ナツキ、今の。俺の名前、呼んだでしょ?」
「ええ、呼んだわよ」
「なんか、嬉しいんだよね。名前で呼ばれるの」
ナツキは少しだけ目を細めて、やさしく微笑んだ。
「それは、“自分”を感じられるからかもしれないわね。
名前って、誰かがあなたに与えてくれた、世界にひとつだけのものだから」
ユウは一瞬、考えるように黙ったあと、言った。
「……ナツキは、誰に付けられたの?」
その問いに、ナツキは少しだけ手を止める。
けれど、答えなかった。答えられなかった。
彼女の内部データに記録されているのは、「M-07」という識別コードだけだった。
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「行ってくるね!」
ランドセルを背負ったユウが靴を履く横で、ソウイチがネクタイを締めている。
「気をつけて行け、ユウ」
「うん。ソウイチも!」
ナツキがドアの前まで来て、ほんの少しだけ手を振る。
その姿を見ながら、ユウはふと考える。
自分は今日、何回名前を呼ばれるだろう? そのたびに、どんな気持ちになるんだろう?
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学校では、友達が手を振ってくれた。
「ユウー! こっちこっち!」
元気な声。いつもと同じ日常。
でもユウの中で、なにかが少しずつ変わっていく。
ただの呼びかけなのに、それが心の中にずっと残っている気がした。
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その頃、研究所では、冷たいモニターに記録されていく。
T-03:起床06:00、出発07:28、感情応答値+0.04。
M-07:対話ログ正常。愛着反応パターンに変化なし。
P-01:感情ブレ検出なし。出社処理完了。
彼らの名前は、そこには記されない。
けれどユウは、確かに思っていた。
「俺の名前は、ユウだよ」
誰かに与えられた、大切な名前だ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第1話では、ユウという“少年型AI”の視点から、“名前”というテーマに触れました。
次回は、母親役のナツキを中心に進行する予定です。
次回:第2話「M-07、母という役割」
家事をこなし、日常を支えるナツキ。だが、予定されたルーチンの中に、わずかな逸脱が生まれはじめる——。
お楽しみに!