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4 「奴隷品評会」という名の「飲み会」

そして、奴隷の『品評会』の日。


珍しく早起きしたスレィフは『寝てないで、性的搾取してください』といって紫音を(文字通り)叩き起こし、セックスの相手をさせた。



「ああ、気持ちよかった……。また『無理やり』襲ってくださいね? ……ところでご主人様?」



そして2回戦ほど行って落ち着いたのか、高揚した顔で紫音に尋ねる。

紫音はスレィフの体をタオルで拭きながら、顔を向ける。



「……当然覚えてますよね、今日の予定……」

「ああ、品評会だろ? ま、任せろ、立派な奴隷として紹介してやる……」



そういうと、紫音は寝不足と疲労のせいでふらふらと立ち上がって服を着た後、箪笥の奥から服を取り出す。

スレィフが寝ているときに夜なべして手縫いし、昨夜完成した手作りのワンピースだ。



……なお、この世界の男性の睡眠時間は女性よりだいぶ短い。



「ほら、これがお前にはお似合いだ」

「ええ。……素敵じゃない! 流石ご主人様!」



そういってスレィフはその服を身にまとってくるりと一回転した。



(よかった、喜んでくれたみたいだ……)



「奴隷」である彼女たちは外ではボロボロの服を身にまとう(無論これは『女性は身なりに気を使わなくていい』という文化に起因する)。


だが『品評会』の時には綺麗な服を奴隷主に作らせ、それを着るのがルールとなっている。


「それじゃあご主人様。今夜は準備をお願いしますね? 『奴隷は厨房に入らず』って言いますし。なので私は外で遊んできますので」


そう言うとスレィフは釣り道具を持って出ていった。



「さて、頑張らないとな……」


奴隷の品評会というが、要は『宅飲み』である。


さらに、来客には代理奴隷(妻の体調不良時などに『奴隷主』の夜の相手をする代理人。紫音の場合はスレィフの妹である)も来ると聞かされている。


料理の準備に、部屋の掃除。やることは目白押しだ。

紫音はそう思いながら、自分の口に入らないであろうご馳走を作り始めた。






そして、その日の夜。


「ご主人様達にカンパーイ!」


そういいながら、宴席の場で『奴隷』達がグラスを打ち付けていた。

人数は5人程度だろう。最年長は老人の女性で、最年少はスレィフの妹だ。

彼女たちが楽しそうに談笑する中、『奴隷主』達は台所であくせくと働いている。



なお、彼らは『男性様は勉強なんて辛いだけのこと、する必要はない』という建前で、義務教育が適用されていない。



「おい、卵焼きは出来たか?」

「ああ、ちょっと待ってろ」


そんな風に言って働きながら、お酒を燗する紫音。

そうやっていると、向こうから『ご主人様~!』というスレィフの声が聞こえてきた。

すると、老人の夫であろう『奴隷主』が声をかけた。


「紫音。呼ばれているみたいだし、早く言ってきてくれ」

「そうそう。あんたが一番『偉い』んだからさ。うちの奴隷たちのご機嫌とり……ごほん、『手出し』をしてやってくれよな!」


そういう他の男たちは、そう同情するような眼で紫音を見つめた。



……この世界では『若い男性様ほど偉い』という思想がある。

そのため、若い奴隷主は、他の主人を持つ奴隷達に『手出しする権利』を持つ。


まあ実際は「若い男性が、品評会をやっている女性たちのお酌をしながら、ご機嫌取りをすること」が義務付けられているだけなのだが。



そして紫音は、仕方ないとばかりに『奴隷』達の隣に座った。



「あら、あなたは最近村に来た、新しいご主人様ですね?」


そして、最年長の老婆は紫音ににじり寄り、ニヤニヤと笑って尋ねる。

そして老婆は、しばらく会話をした後、いじわるそうに質問をしてきた。



「ところでスレィフから聞きましたが、あなたまだ奴隷を……妻を孕ませていないのですか?」



やっぱりその質問か、と思いながら紫音はうなづく。

すると偉そうな態度で老婆は紫音の顎をくい、と持ち上げる。



「ったく……。ご主人様は奴隷主としての自覚が足りてないのでは? あなたは選ばれた『強オス』ですよね? まさか種付けをサボってんじゃないですか?」



この「強オス」「種付け」という表現は、高齢者が好んで使う言葉だ。恐らく今よりも『男尊女卑』が激しかったため、このような物言いをするのだろう。



……さすがにこの世界でも一般的には良いとされない物言いだが、この世界の高齢者は、セクハラ発言を平気で行うものがたまにいる。



「やっぱり、今の奴隷主様はダメね。私の若いころは、奴隷主である男性様は家では全裸で過ごさせて……ごほん、過ごされていたもの」

「服を?」

「ええ。メスがいつでも、男性様に性奉仕を出来る状態でなくてはならないって掟があったのですから」



そういって彼女はニヤニヤと夫のほうを見つめた。

無論これもまた建前で、実際は「奴隷主」の被服費削減及び、脱走防止だったのだろう。


どこか見下したような表情をしながら、今度は紫音の胸板をベタベタ触りながら尋ねる。



「どうして妻を『孕ませられない』のですか? 身体がどこか、悪いんじゃありません?」

「…………」

「スレィフも大変ね? 早く、子ども……特にメスを産ませてほしいものよねえ? 奴隷主様、たくましくていい体していますから、きっと出来ると思うんですけどねえ……」



そう、彼女は延々と紫音に対して、現代日本では到底許されない問題発言をネチネチと続けてくる。

紫音はそれを受け流しながら『品評会』の時間は過ぎていった。

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