#51:主人公ほど自分の誕生日を忘れるものである
それはとある日の前日の夜に起きた会議であった。
フランチェスカ学園・生徒会室にて
華琳「これで皆、揃ったようね」
バァンッ!
生徒会長である華琳はともかく役員でもない桃香と蓮華が集まっていた。
桃香「私、もう興奮して眠れませんよ!」
蓮華「気持ちはわかるが落ち着け桃香」
華琳「まぁ、何せ明日は年に一度の┅」
華琳「一刀の誕生日なのだから!」
バァンッ!
そう。彼女達は明日行う一刀の誕生パーティーについて会議を行おうとしていた。
華琳「私的には高級ホテルのレストランを貸し切って一刀と二人きりで食事がしたかったのだけどね」
桃香「そんなのダメです!」
蓮華「あまり豪勢にすると一刀から退かれるぞ!」
本音を言うと自分達は華琳のように豪勢にできないためそれだけは阻止したかった。
だが一刀がただ単に金をかければ喜ぶ人物ではないと華琳も知っているため今回は拒否するしかなかった。
桃香「とにかく、明日の一刀君の誕生パーティーは三寮合同で構いませんね」
華琳「えぇ、学園からの許可は出ているから好きに使って大丈夫だし」
蓮華「偶然にも天和達は仕事で明日は学園にいないらしいからな」
最近一刀が数え役満☆姉妹こと張三姉妹と仲がいいのは彼女達も知っているためライバルが減ったと安心していた。
桃香「それじゃあ、明日は一刀君にとって忘れられない誕生日にしましょう!」
華琳「抜かりなくね」
蓮華「気合いを入れなくてはな!」
こうして、一人の男の誕生日を祝うためだけに三寮同盟を結んだ三人であった。
そして翌朝
一刀「さて、今日も頑張りますかな」
一刀は天和達が仕事で学園を休んでいることもあり束の間の平和を楽しんでいた。
一刀「あぁ、何だかわからないが今日は人生で素晴らしい日になりそうだぜ」
何故かそう思った一刀が教室の扉を開くと
パパパァンッ!!
突然クラッカーの音が鳴り響き
「「「誕生日、おめでとう!」」」
そこには一斉に『誕生日、おめでとう!』と言うみんながいた。
一刀「えっ!?」
突然のことに驚く一刀であったが
一刀「(あっ、そうか、今日は俺の誕生日だったっけ)」
すぐに自分の誕生日だと気付き、この状況を理解した。
というのも一刀はまともに誕生日を祝ってもらったことは幼少期以来ない
天和達が来てから父は天和達ばかり優遇し、実の息子である一刀の誕生日なんて忘れていたに等しく
去年はあまり一刀の知名度が低かったため桃香達とあまり縁がなく、男子寮にて華佗、及川と共に祝ってくれたのが唯一の誕生パーティーであった。
それが今年は学園を利用してのパーティーである。
一刀「よく学園が許可を出してくれたな」
華琳「そこはまぁ、生徒会長の力ってやつよ」
だからといって平日に学園を貸し切るのなんてできるのだろうか?
桃香「とにかく、今日は私達で一刀君の誕生日をお祝いします」
蓮華「存分に楽しむがいい」
そう言われては無視するわけにもいかず
一刀「それじゃあ、楽しませてもらうとするか」
一刀は誕生パーティーを楽しむことにした。
桃香「はい。まずは誕生パーティーの定番、ロウソク消しだよ」
大きなケーキに18本のロウソクが立てられていた。
一刀「ありがとう。それじゃあ┅」
ふーっ!!
フッ!
ロウソクの火が消え、一瞬だけ暗くなった直後
パッ!
再び明かりがついた時には
一刀「ケーキが消えてる!?」
大きなケーキがいつの間にか消えていた。
その犯人は┅
及川「こんな大きなケーキなんて逃したら二度と食えへんからな」
恋「┅美味しかった」
及川と恋であった。
鈴々「あぁーっ! 食べそこなったのだ!」
愛紗「よさんか鈴々!」
誕生パーティーのケーキを主役以外が全部食べるのはルール違反である。
桃香「ケーキはともかくプレゼントあげるよ」
蓮華「受け取るがよい」
一刀「ありがとう」
そんな一刀が女子達から合同でもらったのは
ジャーンッ!
手縫いのセーター、マフラー、ニット帽、毛糸手袋のセットであった。
一刀「ありがとう大事にするよ」
各寮でそれぞれ作ったため色違いであったがプレゼントをもらった以上、文句を言うわけにもいかなかった。
華佗「俺は特製胃薬だ。今日のパーティーでたくさん食べても腹壊さなくていいぞ」
一刀「ありがとう」
誕生パーティーで胃薬を渡されるというのも複雑だったりする。
及川「わいはこれや! グラビア雑誌の切り抜き、お宝ものやで」
一刀「あ┅ありがとう」
誕生パーティーでグラビア切り抜きをもらう。普通ならば喜ぶべきことなのだろうが女子を前にして喜んでいいのだろうか?
華琳「さぁ、各寮で様々なごちそうを作ったから残さず食べなさい」
一刀「あぁ、いただきます!」
出された料理は華琳等の料理が得意な人が作ったものもあれば┅
一刀「ぐふっ!?」
愛紗が作った毒料理、凪が作った激辛料理、そして桂花が作った本当の毒料理(トリカブト等を使用)があったりする。
さすがに桂花の料理は危険を察知して食べなかったものの、他の料理を何とか食べきった一刀は翌日
ごろごろっ┅
腹を壊して学園を休むのだった。
一刀「華佗┅、お前からもらった胃薬が役に立ちそうだぜ」
だが、一刀の誕生パーティーはまだ終わらないのだった。