#29:背中を洗う際、胸を押し当てる行為は実際に行うと後に後悔するものである
私は関羽 愛紗
剣道部に所属しているフランチェスカ学園の二年生だ。
我々剣道部は合宿のため不動先輩の実家の寺に来ており初日は皆で海で遊んだ後、合宿が開始されたのだが
合宿三日目にして
愛紗「凪が出てこないですか」
如耶「あぁ、今朝から出てこないので様子を見に行ったら布団から出てこないそうでな。李典殿と于禁殿が心配で一緒にいるそうでござる」
真桜と沙和はともかく真面目な凪が合宿を休むだなんてどうしたのだろうか?
如耶「北郷殿は何か理由を知っておるか?」
不動先輩は一刀殿に聞くが
一刀「えっ!? お┅俺は何も聞いてませんよ!?」
一刀殿は顔を赤くしながら否定した。
怪しいな
ちなみに私の知らないところでは
沙和「凪ちゃん、いい加減に布団から出てくるなの~」
凪「無理だ!? 自分から胸を見せてしまった私なんて痴女、先輩は嫌うに決まっている!」
真桜「おっぱい見られるやなんて日常茶飯事やないか、先輩だって喜んどるって」
凪「私自身が恥ずかしいんだ!」
という出来事が起きていたという。
しかし、合宿。それは男女の距離を縮めるにはうってつけのイベント
修学旅行等ではよりライバルが多いが合宿ならばライバルは少ない!
義姉上(桃香)には悪いが今夜、私は一刀殿と結ばれてみせる!
そしてその日の夜
一刀「ん~っ! やっぱり広い風呂はいいねぇ」
一刀殿が温泉に入っていた。
一刀「しかし、不動先輩のお寺って風呂が男女で分かれているから混浴ができないし、男が俺一人しかいない状況では覗いたら確実に俺のせいになってしまうし、あぁ、たまには誰でもいいから『あっ、間違えちゃった♪』って男湯に入ってくる女がいないかなぁ、まぁ現実ではあり得ないけどね」
一刀殿がそんな邪な独り言を言っているところへ
ガラッ!
一刀「んっ?」
愛紗「か┅一刀殿┅」
タオルを巻いた私が男湯に現れた。
一刀「あ┅愛紗!? どうして男湯に!?」
愛紗「こ┅この時間は誰もいなくてな、一人寂しく入るのもあれなので待っていたら男湯から声が聞こえてきたのでな」
この時、私は嘘をついていた。
本当は一刀殿が男湯に入っているのを見てから自分も入ったのだ。
一刀「と┅とにかく早く出ないと、こんなとこ先輩や真桜達に見つかったら!?」
愛紗「そ┅それは多分大丈夫だ!」
真桜達は凪に付き添い、不動先輩もそんな凪の話し相手になっているのだから
愛紗「と┅とにかく、このままいると風邪を引いてしまうし、早く風呂に入ろうではないか」
一刀「あ┅あぁ!?」
とにかく私は一刀と共に風呂に入ることに成功した。
ちゃぷんっ
ああぁっ!? し┅しかし、勢いで風呂に入ったものの恥ずかしすぎる。
一刀「お┅俺、先に体洗ってそのまま出るからさ」
ザパァッ!
一刀殿がそう言って風呂から出ると
愛紗「ま┅待て! か┅体なら私が洗ってやろう」
私は強引であるが一刀の体を洗ってやることにした。
そして
ゴシゴシッ!
愛紗「お┅男の背中とは広くて逞しいものなのだな」
一刀「そ┅そうか?」
考えてみれば私が背中を洗うのは義姉上か鈴々くらいのもの、男の背中なんて私の生涯で一度も洗ったことがない
そして初めて洗う殿方の背中が愛しの一刀殿だなんて
┅
そう思った私は
きょろきょろっ!
周囲に誰の目がないことを確認すると
えいっ!
むにゅんっ♪
泡だらけの一刀殿の背中に胸を押し当てるという大胆なことをした。
一刀「なっ!? 愛紗、何だか背中に柔らかいものが当たって┅!?」
愛紗「こ┅こっちを見るな! 我が家に伝わる秘蔵のスポンジだ!」
もちろん嘘だ。
あぁ、恥ずかしすぎる!?
いくら愛しの殿方とはいえ胸を押し当てるだなんて私は何て大胆なことを┅
だ┅だが義姉上が読んでいた本には
桃香「ねぇねぇ愛紗ちゃん、これ見てよ! 男を落とす方法なんだけど自分の胸を男の背中に押し当てるんだって、私も一度やってみようかな♪」
愛紗「義姉上、そのような破廉恥なことはお止めください!」
あぁ、私は自分で自分を罰したい!
あの時の私よ、未来の私は破廉恥なことをしているぞ!
そして私は更に破廉恥なことに
ぐりぐりっ!
胸を押し当てたまま一刀殿の背中を洗った。
一刀「あ┅愛紗、何だか背中に二つの感触が┅!?」
愛紗「す┅スポンジは二つあるのだ! こっちを見るでない!」
み┅見られたら私は死ぬ!?
ぐりぐりっ!
それでも私は胸で一刀殿の背中を洗いまくった。
一刀「(こ┅この感触は間違いない!?)」
そしてようやく洗い終えたその時
ヒュ~~ッ┅
ドッカァーーンッ!!
花火が打ち上がる音がした。
そういえば今日は近くで花火大会があると不動先輩が言っていたな
一刀「お┅おぉ、きれいな花火だな愛紗┅」
スッ!
花火の感想を聞こうと一刀殿はこちらを振り向くが
愛紗「あぁ、そうだな」
その時、私も花火に気を取られて一刀殿から離れてしまった。
つまり
ぷるんっ♪
私は胸を一刀殿に見せてしまっていたのだ!
一刀「あ┅愛紗!?」
愛紗「えっ?」
一刀殿の動きが止まっていることを不思議に思う私であったが、すぐに自分の姿を確認すると
ボッカァーーンッ!!
私はすぐに自分が破廉恥な姿でいることを認識し
愛紗「う┅うわあぁーーっ!?」
ダダダーーッ!!
叫びながら風呂場から逃げ出したのだった。
そして残された一刀殿は
一刀「フッ、花火より おっぱいの方が 炸裂だ」
破廉恥な俳句を作った後
ブバァッ!
ばたんっ!
鼻血を噴いて倒れたという
こうして我々の合宿は終わり
如耶「全く、今年はどうしたというのだ」
帰りのバスにて不動先輩は我々に説教をしていた。
如耶「李典殿と于禁殿は看病という名でサボり、楽進殿は二日目の夜から引きこもり、関羽殿は今朝の鍛練をサボるだなんて皆、気がたるんでおるぞ!」
真桜「すんまへん」
沙和「ごめんなさいなの」
如耶「全く。北郷殿も今朝は貧血で鍛練を行わなかったそうではないか、長湯するでないぞ!」
不動先輩が皆を叱るなか
一刀「は┅はい」
一刀殿は貧血で動けず、私と凪に至っては
愛紗「すみません」
凪「申し訳ありませんでした」
バァンッ!
私達二人は紙袋や覆面を被っていた。
如耶「全く。学園に帰ったら地獄の鍛練を開始するから覚悟するがよい!」
我々は地獄の鍛練よりも合宿中に起きた破廉恥なことを反省するしかない
そう心に決めた私と凪であった。