「ゆめのなかのくに ~お姫様と入れ替わりっこ⁉~」
❅冬の童話祭2024参加作品です。
『ゆめのなか』の国。
みんなが行けるという、ゆめのなかの国。
そんなゆめのなかの国にも、ちゃあんと王様が居て娘のお姫様も居ました。
お話はちょっと変わってあるところお姫様になることを夢見るのかちゃんという女の子が居ました。
幼稚園の先生と春組のみんなにも「将来は本物のお姫様になるの!」といつも口癖みたいに言っていました。
のかちゃんの本棚はお姫様やプリンセスと言ったおはなしの出てくる本がいっぱいありました。
その本を読みながら、のかちゃんの頭の中では自分が綺麗なドレスとティアラを付けてダンスを踊る。
そんな想像ばかり浮かべていたのです。
のかちゃんの願いが叶ったのは本当に偶然のこと。
ある日。
「ここは……どこ?」
のかちゃんはさっきママにおやすみを言ったばかりのはずだと思い出しました。
「あれ、じゃあこれは夢?」
のかちゃんはほっぺを触ってみました。
いつものぷにぷにののかちゃんのほっぺが確かに感じられました。
のかちゃんが困っていると、
「そこに居るのはだあれ?」
と後ろから声がしました。
びっくりしたのかちゃんが振り向くとそこには鏡がありました。
だってのかちゃんにそっくりな女の子が映っていたからです。
でも鏡の女の子はドレスを着ていました。
のかちゃんはパジャマのままです。
あれ、とのかちゃんは思いました。
鏡なら鏡の中の女の子もパジャマのはずです。
「その服変ね」
「え!」
鏡が喋ったと思ったのかちゃんは驚きましたが、よおく見ると鏡なんか有りません。
本当に女の子が居るのです。
それものかちゃんに本当にそっくりな女の子が。
「わ、わたしにそっくり!」
「そうね、似てるわね私たち」
ドレスの女の子はにこりともせず言いました。
その時です。
「お姫様~、どこですかー?」
遠くから声がします。
するとドレスの女の子が慌ててのかちゃんの腕を掴みました。
「お願い! わたしと入れ替わって!」
「あなたお姫様なの!」
「いいから、早くその服脱いで。わたしのドレス着て!」
言われるがままにのかちゃんはパジャマを脱いでドレスを着ました。
「いい、今からあなたはゆめのなかの国のお姫様。わたしがのかちゃんよ」
「え、ええ!」
「じゃあまた後でね」
のかちゃんのパジャマを着た女の子は何処かへと行ってしまいました。
「お姫様、見つけましたよ」
メイドの様な服を着た大人の女の人がのかちゃんを見てホッとしたように言いました。
「わたし、本当にお姫様なの?」
「まあ! どうしたんですかお姫様が変だわ!」
「えっと、えっと」
「とにかくお姫様、お勉強の時間ですわ。行きますよ」
「ええ~⁉」
のかちゃんはメイドさんに連れられて本当にお勉強をすることになったのです。
先生が居て、のかちゃんに色々質問します。
「お姫様。ゆめのなかの国のお花の名前は全部でいくつありますか?」
「えっと、えっと」
そんなの分からない、とのかちゃんは「えっと」を繰り返しました。
「今日のお姫様は変ですね」
先生もメイドさんと同じことを言いました。
それから、のかちゃんはダンスの練習やお作法の練習をさせられました。
行く先々で「今日のお姫様は変ね」とも言われました。
「ああ、もうお姫さまって大変!」
やっと一人になったのかちゃんは大声で言いました。
憧れのお姫様はただ綺麗なドレスを着てにこにこ笑って暮らしているとばかり思っていたのです。
「そうよ、お姫さまって大変なのよ」
「お姫様!」
本物のお姫様がそこに立っていました。
のかちゃんは思わず言いました。
「どうして入れ替わってって言ったの?」
「だって、いつもいつも。毎日まあいにち、同じことばっかり。ちょっと飽きちゃったの」
お姫様は拗ねた様に言いました。
のかちゃんには分かりました。
たった一回だけでもあんなに大変だったのです。
「でも」
とお姫様はのかちゃんが来ているドレスにそっと触りながら泣き出しそうな顔で言ったのです。
「私はお姫様の方がいいわ。何だか私じゃなくなったみたいだったもの」
のかちゃんにはよく分からなかったですが、お姫様は元のドレスを着て言いました。
「私は私。のかちゃんはのかちゃんね」
「お姫様……」
「さあ、もう目覚めの時間よ」
もやもやっとのかちゃんの目の前が真っ暗になりました。
「のかちゃん最近〝お姫様になりたい″って言わないけれどどうしたのかしら」
のかちゃんのママはある日から気になっていたことをのかちゃんに聞きました。
するとのかちゃんは。
「お姫様にはなりたいよ」
と言いましたが、
「でも大変だから。もっとお姫様の勉強してからお姫様目指すの!」
のかちゃんのママは目をぱちくりさせて首を傾けたのでした。
のかちゃんという女の子の夢は「お姫様になること」。
でも本当のお姫様の大変さを知ったからこそ、お姫様に益々憧れたのでした。
それから、ゆめのなかの国のお姫様とのかちゃんはたまに入れ替わっていることがあったとか、なかったとか。
~おわり~
お読みくださり、本当にありがとうございます。




