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憂人の結末  作者: 森山
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そんな目の前の彼は私の思いに気づくわけもなく、誰かに言い訳するかのように話し出す。


「パートナーと言っても一緒に入場して、ダンスをするだけであって、パーティー中は常に一緒に行動するわけじゃないし、ほかの男子生徒との交流に口を出すつもりもないし、もちろん僕だって君以外の女子生徒とダンスや会話と楽しむつもりでいるし」


だったら初めから私以外の女性と参加なさればいいのでは?

そう思ったものの、口を挟む隙もなく同級生の言葉は続く。


「一応わざわざ学園側が僕たち生徒のために用意してくれた舞踏会で、これは授業の一貫だと僕は思っているわけで。

成績として評価されるわけじゃないけど、ほら、僕たちほどの優等生なら他の生徒たちに模範となる姿を見せる義務があると思うわけで」


ちょっと待て。

勝手に不可解な義務を作るな。

そもそも誰に、何を見せるのか。


「もちろん新たな友好関係を広げること大事だと思うが、まずは今の二人の関係をより深いものにするためにはとても素晴らしいきっかけになると思うんだ。

それに二人の未来のための予行練習として共に参加するということは絶対に将来の役に立つと思うわけで」


いや、だったらなおさら誘う相手を間違えている。

聞こえてきた“二人の未来”という単語にゾワッと寒気がする。

もちろん私ではない女性どの未来ですよね?


「もちろん良ければ僕のほうでドレスや靴なんかも用意するし。

ほら、昨年のダニエル先輩とバーバラ先輩なんてとても素晴らしかったじゃないか。お互いの色を身にまとった二人――、あ、もちろん強要するつもりなんてないんだけど、女子ってそういうことに憧れがあるんじゃなかと思ったわけで」


確かにお互いの色――髪色や瞳の色をドレスのさし色やハンカチーフとして纏った二人に憧れる、また憧れたという女子生徒は多数いるだろうし、昨年一緒に参加した友人たちもそのようなことを話していた。

もちろん一応年頃の私も、淡い憧れを抱いたものの、あまりの現実味の無さに一瞬で目が覚めたわけである。


「あの二人の先輩を含めて、舞踏会でパートナーだった二人がそのまま人生のパートナーになったなんてよく聞く話で――あ、もちろん僕はそんな早急に関係を深めようなんて思っているわけじゃないんだけど。

ゆっくりとお互いの意思を確認しながら未来に向けて歩んでいけたらと思っているだけで」

「そうでしたらその未来を共に歩んでいってくれる可能性があるご令嬢と一緒に舞踏会に参加されるのがよろしいのでは?」


その相手が私ではないことだけは確実である。

しかし同級生はそんな私に驚く顔を向ける。

え、だからなんで驚く?


「…僕は君に交際や、まして婚約を申し込んでいるわけじゃなくて、学校の行事である舞踏会のパートナーになってくれないかと誘っているだけなんだけど。

なぜ君が僕の誘いに頷かないのか理解出来ない」


それは私も同感である。

その舞踏会の誘いを断っているのに、なぜ理解してくれない。


「ドレスや靴、アクセサリーなんかも僕が用意すると言っているじゃないか。

君が望むなら入場から退場まで君を一人になんてしないし、ほかの女性とも踊らないよ。

それ以上君は僕になにを望むんだい?」


まるでなかなか言葉の意味を理解出来ない幼子を相手にしているようで。

呆れと憐れみと、辟易とした声音を隠すことはない。

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