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憂人の結末  作者: 森山
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20時更新したものから、内容若干修正してます。

既読の方は再読して頂けると嬉しいです('・ω・')

「え?なんで…。相手いないんだよね?」


本日の全ての授業が終わり、明日の授業の予習でもしようかと学園内にある図書館に向かっている時、誰かから呼び止められた。

相手は確か隣のクラスの男子生徒で、何度か友人を交えて会話をしたことがあった。


だからそんな彼から呼び止められた事に驚き、さらに今度の舞踏会のパートナーになって欲しいと言われてさらに驚いた。

ついでに私が彼の誘いを断ったことに、彼はとても驚き、その驚きに私も驚いた。


この学園では年に二度、長い休暇前に学園主催の舞踏会が開かれる。

多くの貴族子息子女が通う学園だからこそ、語学や歴史、乗馬や音楽などの一般科目のほか、ダンスや話術、社交界での礼儀マナーなどの授業もあり、この舞踏会は社交界の予行練習の場として組み込まれたものだ。

もちろんそれだけでなく、普段はあまりかかわることのない他クラス、他学年の生徒との交流、教師講師を含めた学園関係者との親睦を深める目的もある。

舞踏会は強制参加ではないし、仮に参加するとしてもパートナー同伴が条件として決められているわけじゃない。

まぁ参加する生徒の8割近くは特定のパートナーをみつけているが。


「お誘いはとても有り難いのですけど、今年も友人たちと参加しようと思っておりまして」


図書館に向かう間も、聞こえてくるのは舞踏会やドレス、お相手といった内容が多い。


本当であれば婚約者候補が一人もいない私もせっせとお目当ての男性を探すべきなんだろうが、なぜだろう。

全くそんな気が起きない。


我がキプリング男爵家を継ぐのは弟である。

だからこそ長女である私がせっかくこうして王都の学園に在席させてもらっている分、交友関係を広げるなり、いざと言うときに家を助けられるほどの高位貴族の子息一人でも捕まえ嫁にいくのがいいのだろう。


まぁ頭で分かっていても、行動できるかといえば、出来ない。

むしろする気がない。

嫌だ、したくない。

あら、いけない、本音が漏れた。


だからこそせっかくお誘い頂いたわけだが迷うことなく、遠回しに断りの言葉を伝えた。

しかし目の前の同級生は私の返答に理解できないという顔をする。


「…え?その友人って女性だよね。

僕からの誘いを断って、友人たちと参加するってこと?」


それの何がいけないというのか。

確かにクラスメイト達の中にはパートナーを決めて参加をする人もいれば、お目当ての相手にダンスの約束を取り付ける人だっている。


しかし残念ながら私は、そこまで積極的に舞踏会に参加しようと思えず、友人同士で楽しんでさっさと退散するのが常だった。

むしろ本音としては不参加を決め込みたい。


そもそもあまり金銭的余裕のない我が家である。

毎度パーティーのたびに、ドレスを新調していたら家が傾いてしまいそうなのだ。


母親からは結構前からドレスの新調話があったが、断っておいた。

別に同じドレスを着てはいけないルールなどないし、王都の中にはドレスのリメイクに特化した服飾店があるのだ。


先日の休みに頼んでおいたドレスを引き取りに行ったし、そもそも誰も私のドレス姿になど興味がないだろう。

だって私が興味ない。


「いや、決して友人たちと参加するのが悪いとか、パートナーが決まらないのが恥ずかしいとか思っているわけではないんだけど――」


目の前の同級生はパートナー無しで舞踏会に参加すること自体恥ずべき行為だと認識しているらしい。

そして自分がそうなりそうになった焦りからたまたま目についた私を誘ったのだろうと推測する。


前時代的で因習的で、時代錯誤の化石のような考え方だろうと、それは個人の自由なので特にどうとも思わないが。

私が特段親しくもない人間からの誘いに、当然のように頷くと思われていたことに納得がいかないし、

この目の前の人間は自分が誘って断られるわけがないと当然のことのように思い込んでいた事実に驚きを通り越して呆れる。

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