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憂人の結末  作者: 森山
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「あのパウスフィールドさんは――」

「オリヴィアがいいです。呼び名。

今だに家名で呼ばれても、自分のことを呼ばれているって気がしなくて」

「じゃあオリヴィアさんは、…()()オリヴィアさんなのですか?」


伯爵家に引き取られる前は市井で暮らしていたと言われれば、先ほどの口の悪さや、従姉の見合いに同行する理由には納得する。

しかし人間ユージン様から王子殿下や高位貴族令息に粉をかけていると伝え聞いた話や以前食堂で見かけた姿と、今目の前でケラケラと笑う彼女が違い過ぎて絶賛混乱中である。


ただ目の前のオリヴィアさんは、はじめは私の質問が理解出来なかったのかキョトンとした顔をしていたが、質問の意図を理解したのかアハハと笑い出す。


「王子周辺をウザ絡みしながら飛び回る自称お転婆天然キャラの()()オリヴィアなら、私ですね」


え、自称?お転婆天然キャラ?え、人工物だったの?

まあ逆にアレが天然と言われても、それはそれで驚きですが。


「相手の誰かが実家にクレーム入れてくれることを期待して、あえての誇張キャラにしたのに!

さすがにあんな常識外れの頭のネジがぶっ飛んだおかしい女に靡かないとは思ってたけど、あの人たち寛容すぎません?

貴族の男って短気で、実家の権力振りかざす奴が大半だと思ってたから、不興を買う覚悟で挑んだのに拍子抜けだったわ」


寛容度に関しては人によるとしか言えない。

確かに先ほどの同級生みたいに自分の思い通りにいかないと癇癪を起したり、実家の威光を振りかざしたりする人間は多い。

ただオリヴィアさんが粉をかけていたフェルナンド王子殿下やユージン様をはじめとした高位貴族の令息たちは己の立場をしっかりと理解しているため、軽率な行動はしない。

まあ、しないからと言って、イコール寛容であるわけじゃないが。


ただオリヴィアさんはわざと人間外生物を演じ、王子殿下たちに近づいていたらしい。

それも誰かがオリヴィアさんの実家、パウスフィールド伯爵家にクレームを入れていれてくることを期待して。


そもそもなぜオリヴィアさんはそんなことを?

私の疑問を読み取ったのだろう。

オリヴィアさんは大きなため息と同時にうんざりとした顔で話し出す。


「ご存じのとおり、私は元々平民なんです。

それが半年ぐらい前ですかね、いきなり家に前に馬車が止まったんですよ」


実の父親を知らずに母親と二人で下町で暮らしていたが、一年ほど前に母親が病死。

しかし近所の人や母親の同僚の世話になりながら何とか生活していたところ、いきなり伯爵家の家紋を付けた馬車が家の前に止まったそうだ。

そして伯爵家の執事だと名乗る人間に、オリヴィアさんは伯爵家当主の娘だと言われたらしい。


「そもそも私の母親は娼婦だったんですよ。それも貴族御用達の娼館のね。

で、客だった父親を手籠にして()()()に妊娠した母が、腹に宿った私を脅しの材料にして身請けしてもらったらしいです」


オリヴィアさんの父親は当時、伯爵位を受け継いだばかりで家全体が慌ただしかったうえ、正妻が出産間近というタイミング。

そんな時にまさかの贔屓にしていた娼婦からの妊娠報告。

当然伯爵は妊娠出産などすんなりと受け入れられるわけがない。

その返事内容を予想していた娼婦ーーオリヴィアさんの母は、自身の身請けを条件に妊娠事実を他言無用とし、堕胎を受け入れたそうだ。


「ま、母は身請け後に、伯爵から堕胎費用とまとまった生活費用をふんだくった上で、さっさと伯爵の前から行方をくらませて私を産んだんですけどね」


オリヴィアさんは生前の母親から、自分の生誕経緯や父親が貴族であるということは聞かされていたらしいが、名前までは教えてもらっていなかったらしい。


「で、半年ぐらい前、いきなり伯爵家へ連行されて、父親と名乗る見知らぬオッサンと会ったんだけど、誰もが驚くほどに私とオッサンの顔がそっくりだったんです!

連れてきた執事も、お茶を出しに来たメイドも、壁際に立ってた従僕も、私とオッサンの顔何度も見比べてるし、さすがに人違いって言い張るには無理があるレベルだった」


ちなみに正妻が産んだ異母姉や異母弟とも、オリヴィアさんと顔立ちがそっくりらしく。

さらに家に飾られている父親の親族の肖像画も皆同じ顔をしているらしい。


やばい。見たい。とっても見たい。

私も何度も見比べたい。

今一度よく見ればオリヴィアさんはとても美人なのだ。

すらりと長い手足と小さい顔。切れ長の瞳と、通った鼻筋、薄い唇。

この美しい顔とそっくりの中年男性とその一族。


お父様に頼めばどうにかなるか。

いや、ここは人間ユージン様におねだりできないか。

そんなことを素早く頭の中で計算する。


あの、近日伯爵様親族が参加される夜会はご存じです?

え、来月に自宅でオリヴィアさんのお誕生日会が開催ですと。

もちろん参加させていただきたいです!


お読みいただきありがとうございます。

ブクマ、★★★★★で応援いただけると、喜びでのた打ち回ります(˘ਊ˘)

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