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ナルシスト



輝く金髪に、同じ色をした長いまつ毛、その下から覗く、青緑色をしたアレキサンドライトの瞳



この瞳を一度見た人達は皆、美しいと声を揃えて言う


まるで昼は輝くばかりのエメラルド、夜は鮮やかな色をしたルビーの様だと。



どんな格好に変装しようと、この瞳を隠していなければ、彼が王族と言うことはすぐにわかってしまう


今はまだ外は明るく、特に今日は窓から日差しが差し込むほど晴天だ。

その為、今の瞳はどう見ても濃いエメラルドのまま


それに加え、肌は吹き出物ひとつなく、キメが細かく、目鼻立ちはうっとりするほど整っており、どの角度で眺めて見ても飽きず、美しいの一言


こんな絶世の美男子がいたら、きっと見惚れてしまうのは当たり前だ。


前世にもし、彼がいたら間違いなく芸能人になっていたはずだ。

それ程に彼は美しく、下手したら女性よりも綺麗な顔をしているかもしれない


実際、彼よりも美しい人は私が知る中では、実の母ローズ以外いない




先程からまじまじと、鏡を眺めている様子は側から見れば、ただのナルシストの様に見えるだろう


侍女にもらった、手鏡に映る自分の顔を眺め続ける様子は、彼の中身が、宝城るびだと知らない侍女にとっては、かなり奇妙な光景に映っている



「はぁ〜綺麗・・・」



そんなことは知らず、手鏡の中に映るゼニスの顔に夢中になっていた私は、侍女の存在を完全に忘れていた


侍女は、ゼニスから話しかけられていると勘違いし、力強く頷き返事を返した



「はい、殿下のように美しい方は他にはいません!」






小鳥の様に、可愛らしい声で答える声に私は驚いて振り向くと、先程手鏡を持ってきてくれた茶髪の小柄な子がいた




今まで、自分の顔に見惚れていたせいで、彼女の存在を忘れていた。

誰もいないと思っていたのに、さっきからずっと侍女がいたのだと思うと、なんだか恥ずかしい


しかし、今更後悔しても遅いので、羞恥心を隠し、とりあえず笑って誤魔化した。


一応褒めてくれたので、彼女にお礼を言って下がっていいよと伝えれば、素早く部屋を後にした


彼女がちゃんと部屋から出て行った事を確認すると、手鏡を枕元に置き、崩れるようにベットに寝転がる


金であしらってあるお花の模様の天井を眺めながら、盛大にため息を吐いた。



「ナルシストじゃん…」


静かになった部屋には、私の低くイケボな声だけが響く


きっと、あの侍女に私は相当なナルシストだと思われただろう

枕元にある手鏡をもう一度手に取り、その中に映る自分の姿を再度見つめると、やっぱり映るのは推しであるゼニス本人



「あーあーなんで私、ゼニスになっちゃったんだろ」



鏡に映る自分の姿は、前世から大好きだったあのゼニスで間違いない


この彫刻のような顔を眺め、せめて私がヒロインだったらと、思うばかり。



もう、叶う事はないけれど、もしも女の子に転生していたらと、もう一つの人生を思い浮かべてみれば、想像の中の自分はヒロインで、ゼニスと出会い、今頃は愛を深め合っている所だ。


しかし現実に戻れば、男、という事実は変わることはなく、前世では確かに、ココにあった自分の胸に、そっと骨ばった大きな手を当てて、更にため息を吐いた


逞しい胸板は素敵だけど、ゼニスの立派な筋肉の手触りを確かめながら、更に肩を落とした。



もう、どんなに願ってもこの先、私がゼニスと恋愛する事はないし、女性として生きることもできない


せっかく新しく転生したと言うのに、この新しい地で一生、死ぬまで男として生きていくしかないのだ


それだけでも十分、辛く悲しいと言うのに、その上、セレストはあんな気弱な少年


もしも王位を継いでくれないとなれば、結局は私がこの国を死ぬまで背負っていかなければならないと言う事だろう


そう思うと、元女子高生だった私の意識が強い分、どうしてもこれからの未来は、荷が重すぎて、正直怖い


もう、このまま、遠くに逃げてしまおうかなぁなんて思いが頭をよぎるが、その為にはお金が必要になるし、どこに行くかもある程度は決めないといけない。


下手に出歩けば、父である王に簡単に捕まってしまいそうだし、そうなってしまえば、結局連れ戻されるのは目に見えている。


だったらもう逃亡する意味がない、それにどうせなら、誰か協力者を見つけた方がいい

とりあえずは、もう今の私に考えるのはキャパオーバーなので、手触りのいいベットの中に頭まで潜り込み、疲れた頭を休ませるため、もう一度眠ることにした。



「寝心地は最高…」



もしかしたら、ここは夢の中で、目が覚めたら現実に戻っているかもしれない、そう少しの希望を抱きながら、段々と重くなっていく瞼をゆっくりと閉じた。


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