ゼニスの秘密
「舞踏会?!」
「えぇ、殿下もそろそろ婚約者を決めなければなりませんから、舞踏会で婚約者候補を探すのは当然のことでしょう」
昨日、魔塔から帰りウィスタリアと、どう親睦を深めようかと考えていた矢先、ニレから言われた言葉に耳を疑った。
「婚約者って、私まだ17歳だから!」
「もう、17歳です。基本18までには婚約者は決まっているものですよ」
前世の事を考えると、17で婚約者がいるなんてありえない。
勝手に結婚相手を決められて、時が来たらその人と結婚しなさいなんて、変な話だ。
そもそも、18で婚約者がいるのが当たり前とか言いながら、ニレにも婚約者はいないはずだ
「…そういうニレは婚約者はいるっけ?」
「王族と、私では身分が違いますから。他国の王族は大体婚約者は生まれる前から決まっているものですよ?…殿下が異例なだけです。」
「ふーん?…いやぁ、でも婚約者ってさぁ。そんな急に言われても困るし…たった一回の舞踏会で決めれるわけないじゃん」
そもそも、舞踏会以前に女の子には興味がないのだから、そんなものを開いても無意味なのだ
「一回だけとは言っていませんよ。もちろん殿下が見初める相手が見つかるまで、開くに決まっているじゃないですか」
当たり前でしょう、という表情でこちらを見据えるニレの目は決して冗談ではなさそうだ
「…は?マジで?」
「ええ、本当です」
なので、殿下が嫌がってもこれは王様の命令なので却下はなしです。なんて言われて終えば、もう返す言葉はなく、ただひたすら昨日のテンションとは逆にどんよりと曇っていくしかない
あからさまに、落ち込めばニレは素早い動きで私の好きな紅茶を入れてくれたけれど、そんな気遣いはいらないのだ
「殿下、落ち込んでいても舞踏会が無くなる事はありませんよ」
「…っくぅ、分かってるよ!ニレは冷たいなぁ」
とほほと、ニレが淹れてくれた紅茶を頂くと暖かくて甘い紅茶が喉を潤した。
そのまま体の中に浸透していくのが分かり、気分が少しだけ元に戻ったけれど、この現実を考えるとやはりいずれは、国のために誰かと結婚しなければならないのだろうか?
心は完全に女だというのに、この世界はなんて酷な事をさせるんだろう
大体、この世に神がいるのならば、私はそこに訴えにいきたいレベルだ
まずは、学園にあるオパールの女神に物申しに行かなくては。
「殿下は以前、女性を愛せないとおっしゃっていましたが、それは女性が嫌いだからですか?」
もやもやと、心の中で考えていれば黙っていたニレは、深刻そうに私へ問いかけた
「…もし、嫌いだと言ったらどうするの?」
「そうですね…、まずは女性嫌いを克服する様こちらでプランを考えます」
「だぁー!やめてやめて!めんどくさすぎる!そもそも、別に女性嫌いではないから、そんな事は考えなくていい」
「そうですか?では、安心いたしました」
変に女の子達と交流が増やされる様な事があったら それこそ困る。
ニレのことだから、私の身近で仲の良い子達を連れて来てお茶会でも、なんて企画をされたらたまったものじゃない。
別に、単にお茶会ならまだしもヒロインや悪役の友人を連れて来られて、もしも原作のストーリーが始まってしまったらそれこそ、めんどくさい話だ。
「とりあえず、前も言ったけど、私は単に女の子と恋愛をする気がないだけ!いくらニレが父上の命で舞踏会やらを開いても意味がないってことだけは、先に伝えておくね。」
「…そうですか」
「あー…でも、ウィスタリアだったらありだなぁ」
「…はい?」
「ほら、昨日のウィスタリアだよ!私が女だったらウィスタリアとはすぐに、結婚したいかも〜って話」
「いきなりなんですかそれ?殿下が女って…え、まさか殿下が女性を愛せない理由は、だ、男性が好きだからですか?!」
頭のいいニレは突然自分の身を守る様に体を抱きしめ、私を怪訝な目で見つめてくるのだけれど、何だかそれが面白く、ついつい吹き出してしまう
「本音を言ったら、女の子よりは断然男の子の方が好きだね」
「え、しょ、正気ですか?!」
「うん、だから性転換の指輪作ってって言ったんだけど、あれ?伝わらなかった?」
「ぼ、僕としたことが全く気がつきませんでした…」
「まぁでも安心してよ!ニレは友達だから大丈夫!」
「はぁ…」
「まぁ、私の秘密を知っちゃったって事は、ニレは共犯って事ね!てことで、残念だけど婚約はしないからよろしく頼むよ」
「…ちょ、と理解し難いですが、その、殿下は、男性が好きで間違いないのですね…」
「うん」
「そ、そうですか、分かりました…一旦、持ち帰らせて頂きます。それでは、失礼します、」
明らかに動揺した様子のニレは、私にもう一度男が好きなのかと、聞くと私の答えを聞くや否やすぐさま、私の部屋から出ていった。
そそくさと、部屋を後にしたニレに何だか重たかったかな?と一瞬困らせてしまった事が気になったけれど、事実を伝えて終えば、これからは王命だからと言って私に女性を勧めてくる事はないだろう。
「それにしても、一旦持ち帰るって言ってたな」
ニレなりに、結構気を遣っていたのかもしれないけれど、いつも冷静なニレがあそこまで動揺した姿は初めて見た気がする。
変に、思い悩まなければいいけど、とは思いつつ、すぐに呼び鈴を鳴らせば、相変わらず可愛らしい私のメイドがやって来た
「今から、魔塔に行こうと思うんだけど一緒に行かない?」




